2018年10月27日土曜日

脊髄損傷後の心機能不全 J Med Life 2009

脊髄損傷後の心機能不全













抄録
 この記事の目的は,脊髄損傷後に発生する心機能不全を分析することである.心機能不全は脊髄損傷後のありふれた合併症である.心血管系の障害は,脊髄損傷の急性期と慢性期の両方における最多の合併症と死因である.
 我々は,脊髄損傷後の心障害の疫学と,自律神経系,すなわち交感神経と副交感神経の神経解剖と病態生理をレビューした.
 脊髄損傷は,重大な心機能不全と関連している.自律神経制御系の障害は,たいていは頚髄もしくは上位胸髄の脊髄損傷の患者でみられ,不整脈,とくに徐脈と,まれに心停止の原因となり,あるいは頻脈や血圧低下を生じさせる.脊髄ショックや自律神経異常反射のような外傷後の時間によって異なる特異的な合併症もレビューした.脊髄ショックは脊髄損傷後の急性期に生じ,損傷レベルより下位の一過性の機能と反射の停止状態である.神経原性ショックは,脊髄ショックの一部であり,重度の徐脈と血圧低下である.自律神経反射異常は,脊髄ショックが解消した後の慢性期に生じ,内臓交感神経出力(T5-T6)より上位の脊髄損傷の患者に生じる過大で不釣り合いな反射性交感神経放出という深刻な症候群である.何よりも,心臓脱調節や冠動脈心疾患といった,さらなる心合併症も生じることがある.
 非薬物戦略と薬物戦略,および心臓リハビリテーションを含む適切な予防によって,脊髄損傷後の心機能不全の発生が減少する.それぞれのタイプの心障害には特異的な治療が必要である.

2018年10月8日月曜日

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験 PM R 2018

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験













抄録
背景:脳卒中後の下肢遠位の痙縮は移動能力を阻害し,日常生活動作を制限し,介護者の時間をより多く必要とするようになる.
目的:脳卒中後の下肢痙縮のある成人におけるonabotulinumtoxin Aの有効性,安全性,効果の持続を評価すること.
条件:北米,ヨーロッパ,ロシア,英国,韓国にまたがる60の研究センター.
患者:足関節底屈筋に脳卒中後の下肢痙縮(modified Ashworth Scale[mAS]≧3)があり,研究参加前の直近の脳卒中から3ヶ月以上の成人(18-65歳).
介入:オープンラベル相の間,患者は12週間隔で,onabotulinumtoxin A(≦400単位)またはプラセボを投与された.治療は足関節底屈筋に行われた(onabotulinumtoxin A 300単位を足関節底屈筋へ;≦100単位を任意の下肢筋).
主要評価項目:二重盲検化主要エンドポイントは,ベースラインからのmASの変化(4週と6週の平均スコア)である.二次評価項目は,医師の評価でのClinical Impression of Change(CGI),任意の筋のベースラインからのmASの変化.Goal Attainment Scale(GAS),疼痛のスケールである.
結果:参加した468人の患者のうち,450人(90%)が二重盲検相を完了し,413人(88%)が研究を完了した.二重盲検相の間,onabotulinumtoxin AでみとめられたmASの小さな改善(onabotuli- numtoxin A, -0.8;プラセボ, -0.6,P=0.01)が,3期目のオープンラベル期間の6週の間の追加治療で,さらに増強された(onabotulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, -1.2;プラセボ/onabotulinumtoxin A, -1.4).二重盲検相でみとめられたCGIの小さな改善(onabotulinumtoxin A, 0.9;プラセボ, 0.7, P=0.01)も,3期目のオープンラベル期間の6週の間に増強された.(ona- botulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, 1.6;プラセボ/onabotulinumtoxin A, 1.6).医師と患者が評価したGASはそれぞれ後続の治療で改善した.新たな安全性の信号は現れなかった.
結論:onabotulinumtoxin Aは足関節のmAS,CGI,GASスコアをプラセボと比べて有意に改善させた;改善は,脳卒中後の下肢痙縮の患者では1年に渡るonabotulinumtoxin Aの反復治療で維持され,増大した.

エビデンスレベル:Ⅰ