甲状腺機能低下症における主要骨粗鬆症性骨折の過度のリスクは,甲状腺機能低下の期間に対立した累積の甲状腺機能亢進によって促進する:観察的登録システムベースの時間分解コホート解析 J Bone Miner Res 2105
抄録
甲状腺機能低下症と骨折リスクの間の長期的な関係性は,それに伴う過剰な用量となっている可能性のあるサイロキシンの補充で修飾される影響のために詳細に調べるのは困難である.我々は,血清のサイロトロピン(甲状腺刺激ホルモンTSH)濃度の変化を継時的に検討し,TSH上昇を呈する患者の実世界での骨折リスクとの関連性を調べた.TSHの測定はすべて同じ研究室で行い,すべての病院と前科診療に提供していた.研究の患者群は,初回のTSH>4.0mIU/L (8414人)またはTSH正常(222,138人;比較対照)で構成されていた.我々は,Cox比例ハザード解析を用いて,サイロキシン補充療法開始と,平均追跡期間7.2年での基準日後のTSH高値または低値の累積期間を示す追加の時間依存性共変数を組み込んだ.ベースラインのTSH上昇は,股関節骨折のリスク(ハザード比0.90;95%信頼区間0.80〜1.02)や主要な骨粗鬆症性骨折のリスク(ハザード比0.97;95%信頼区間0.90〜1.05)の増大と関連しなかった.また,それに引き続くサイロキシン処方は骨折のリスク増大を予測しなかった.その後の6ヶ月間のTSH低値−サイロキシンの過量投与を示唆する−の数は,股関節骨折のリスク増大(ハザード比1.09;95%信頼区間1.04〜1.15)および主要骨粗鬆症性骨折のリスク増大(ハザード比1.10;95%信頼区間1.06〜1.14)と有意に関連した.主要な骨粗鬆症性骨折に対する性別および年齢で層別化した解析を行うと,甲状腺機能亢進の期間が閉経後女性における骨折リスクの予測因子と判明した.一方,甲状腺機能低下の期間は,75歳未満の男性における骨折リスク増大の予測因子だった.結論として,TSH上昇を呈する患者では,股関節骨折および骨粗鬆症性骨折の長期リスクは,TSH低値−恐らくは過度の補充による−の累積期間と強く相関する.TSH上昇の独立した影響は,若年〜中年男性にのみ見られ,リスクに対して性別で別々の因果関係が示唆された.