2018年11月29日木曜日

高齢者において持続的な発熱を呈した緩徐進行性・無痛性胸部大動脈解離:生化学的パラメータの併用測定の有用性 Case Rep Med 2013

高齢者において持続的な発熱を呈した緩徐進行性・無痛性胸部大動脈解離:生化学的パラメータの併用測定の有用性

大動脈解離は緊急の診断と適切な介入を必要とするような致死的な病態である.急性大動脈解離はしばしば突然発症の強い胸痛として表れるので,医師は容易に適切な診断にたどり着くことができる.しかしながら,大動脈解離の患者の中には,典型的な強い胸痛はなく,様々な臨床的表現形を呈する患者もいる.そのために診断が遅れたり,死亡する可能性もある.我々は,原因不明の発熱の高齢患者で最終的に大動脈解離と診断された症例を提示する.本例では,プロカルシトニン検査陰性,D-Dダイマーおよび血清CPK-BB濃度上昇,CRP濃度の再上昇から我々は正しい診断に導かれた.

2018年11月26日月曜日

急性大動脈解離に伴う発熱 Circ J 2007

急性大動脈解離に伴う発熱
背景 発熱は急性大動脈解離のありふれた症状であるが,この発熱の期間と特性について公表された報告はほとんどない.
方法と結果 発熱の平均期間を,急性大動脈解離の患者の合計57人について計算した.患者は,それから2群に分けた:発熱期間が平均より短い群(グループA)と平均より長い群(グループB)である.偽腔サイズの縮小と血液学的パラメータをグループ間で比較した.発熱の平均期間は15.9± 11日だった.偽腔サイズの縮小比はグループA群(18.3±5.0%)ではグループB(2.0±5.3%)より有意に高かった.偽腔サイズ縮小比と発熱期間の間には有意な負の相関があった.血液学的パラメータは,フィブリン分解産物(FDP)を除いて2群間で有意な違いはなかったが,白血球数,血小板数,CRPはグループBでより高い傾向があった.
結論 発熱を調べることは,急性大動脈解離の個々の症例の状態を評価する上で重要である.

2018年10月27日土曜日

脊髄損傷後の心機能不全 J Med Life 2009

脊髄損傷後の心機能不全













抄録
 この記事の目的は,脊髄損傷後に発生する心機能不全を分析することである.心機能不全は脊髄損傷後のありふれた合併症である.心血管系の障害は,脊髄損傷の急性期と慢性期の両方における最多の合併症と死因である.
 我々は,脊髄損傷後の心障害の疫学と,自律神経系,すなわち交感神経と副交感神経の神経解剖と病態生理をレビューした.
 脊髄損傷は,重大な心機能不全と関連している.自律神経制御系の障害は,たいていは頚髄もしくは上位胸髄の脊髄損傷の患者でみられ,不整脈,とくに徐脈と,まれに心停止の原因となり,あるいは頻脈や血圧低下を生じさせる.脊髄ショックや自律神経異常反射のような外傷後の時間によって異なる特異的な合併症もレビューした.脊髄ショックは脊髄損傷後の急性期に生じ,損傷レベルより下位の一過性の機能と反射の停止状態である.神経原性ショックは,脊髄ショックの一部であり,重度の徐脈と血圧低下である.自律神経反射異常は,脊髄ショックが解消した後の慢性期に生じ,内臓交感神経出力(T5-T6)より上位の脊髄損傷の患者に生じる過大で不釣り合いな反射性交感神経放出という深刻な症候群である.何よりも,心臓脱調節や冠動脈心疾患といった,さらなる心合併症も生じることがある.
 非薬物戦略と薬物戦略,および心臓リハビリテーションを含む適切な予防によって,脊髄損傷後の心機能不全の発生が減少する.それぞれのタイプの心障害には特異的な治療が必要である.

2018年10月8日月曜日

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験 PM R 2018

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験













抄録
背景:脳卒中後の下肢遠位の痙縮は移動能力を阻害し,日常生活動作を制限し,介護者の時間をより多く必要とするようになる.
目的:脳卒中後の下肢痙縮のある成人におけるonabotulinumtoxin Aの有効性,安全性,効果の持続を評価すること.
条件:北米,ヨーロッパ,ロシア,英国,韓国にまたがる60の研究センター.
患者:足関節底屈筋に脳卒中後の下肢痙縮(modified Ashworth Scale[mAS]≧3)があり,研究参加前の直近の脳卒中から3ヶ月以上の成人(18-65歳).
介入:オープンラベル相の間,患者は12週間隔で,onabotulinumtoxin A(≦400単位)またはプラセボを投与された.治療は足関節底屈筋に行われた(onabotulinumtoxin A 300単位を足関節底屈筋へ;≦100単位を任意の下肢筋).
主要評価項目:二重盲検化主要エンドポイントは,ベースラインからのmASの変化(4週と6週の平均スコア)である.二次評価項目は,医師の評価でのClinical Impression of Change(CGI),任意の筋のベースラインからのmASの変化.Goal Attainment Scale(GAS),疼痛のスケールである.
結果:参加した468人の患者のうち,450人(90%)が二重盲検相を完了し,413人(88%)が研究を完了した.二重盲検相の間,onabotulinumtoxin AでみとめられたmASの小さな改善(onabotuli- numtoxin A, -0.8;プラセボ, -0.6,P=0.01)が,3期目のオープンラベル期間の6週の間の追加治療で,さらに増強された(onabotulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, -1.2;プラセボ/onabotulinumtoxin A, -1.4).二重盲検相でみとめられたCGIの小さな改善(onabotulinumtoxin A, 0.9;プラセボ, 0.7, P=0.01)も,3期目のオープンラベル期間の6週の間に増強された.(ona- botulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, 1.6;プラセボ/onabotulinumtoxin A, 1.6).医師と患者が評価したGASはそれぞれ後続の治療で改善した.新たな安全性の信号は現れなかった.
結論:onabotulinumtoxin Aは足関節のmAS,CGI,GASスコアをプラセボと比べて有意に改善させた;改善は,脳卒中後の下肢痙縮の患者では1年に渡るonabotulinumtoxin Aの反復治療で維持され,増大した.

エビデンスレベル:Ⅰ

2018年9月29日土曜日

急性大動脈解離における炎症による発熱:診断と治療のための説明と提案 Rev Esp Cardiol 2010



急性大動脈解離における炎症による発熱:診断と治療のための説明と提案


 急性大動脈解離を背景とした二次的な発熱を調査した研究はほとんどない.59人の患者の後方視的分析を行った.背景となる大動脈解離に続発した発熱基準を定義した.5人が,急性大動脈解離による炎症性の発熱に一致した臨床的表現形を有していた.主な特性は以下の通りである:発熱は最初の48時間以内に生じた,体温の変動が感染性の発熱よりも有意に小さい(P=0.015),発熱のエピソードは患者の全身的臨床状態に影響しなかった,経験的抗菌療法に反応しない,インドメタシンで治療した患者では発熱が24時間以内に消失した.結論として,急性大動脈解離による発熱は,感染性の発熱とは区別できるような明確な違いのある特徴があった.この病態のよい治療には不要な診断的検査や不適切な抗菌薬の使用を含むべきではなく,背景にある大動脈解離を治療するために必要な治療法を適用するのを遅延すべきではない.

2018年9月16日日曜日

大域的脳波位相同期は脳卒中後の臨床的状態を反映する:脳波研究 Neurorehabil Neural Repair 2017










大域的脳波位相同期は脳卒中後の臨床的状態を反映する:脳波研究













抄録
背景と目的.脳卒中によって生じた局所の脳病変はしばしば残存する神経ネットワークの活動に遠隔効果を与える.脳波技術は,脳損傷後の神経ネットワークの変調を評価することができる.近年,脳波の位相同期分析から,脳活動の大域的位相同期の程度と臨床症状の間の関連性が示された;しかしながら,脳卒中患者においてこのような関連性を評価した研究はほとんどない.対象.この研究の目的は,脳卒中患者における大脳半球位相同期の臨床的重要性を,その臨床状態との相関を計算することによって調査することである.方法.この横断的研究では,入院リハビリテーションのために入院した急性脳梗塞後の患者19人を対象とした.半球間位相同期指数(IH-PSIs; Interhemispheric phase synchrony indices)を,2つの周波数帯(アルファ[α])とベータ[β]で計算し,指数と機能的自立度(FIM),NIHSS,Fugl-Meyer Motor Assessment(FMA)のスコアの間の関連性と分析した.IH-PSIsのさらなる評価のために,病変と同側の半球内位相同期指数(IntraH-PSIs)を,IH-PSIsおよび半球内位相遅延指数(PLIs; IntraH-phase lad indices)とともに評価した.結果.IH-PSIsは外れ値を除いた後でFIMスコアと相関した.PLIsでの解析の結果はIH-PSIsと一致した.結論.PSIsは日常生活スケールの実行状態と相関したが,純粋な運動障害のスケールのスコアとは相関しなかった.このような結果から,IH-PSIsによって表現される大域的位相同期は脳卒中後の臨床状態についての新しい代替マーカーとなることが示唆される.

2018年9月5日水曜日

純粋延髄外側梗塞:連続130人の急性期患者の臨床像−放射線学所見の相関 Brain2003

純粋延髄外側梗塞:連続130人の急性期患者の臨床像−放射線学所見の相関

まとめ
延髄外側梗塞の患者における臨床像−MRI相関を作ろうという試みはなされてきたけれども,多数の患者の研究で参照可能なものはない.この研究では,連続した130人の純粋な延髄外側梗塞の急性期患者の臨床的特性とMRI所見および血管造影の結果を検討し,相関を比較した.MRIで判明した病変を口側尾側について,口側部,中部,尾側部に分類し,水平方向には,典型型,腹側型,広範型,外側型,背側型に分類した.水平方向のサブタイプの分布は,3つの口側尾側病変の間で,有意差があり(P<0.001),口側病変は腹側型になる傾向があり,尾側病変は外側型になる傾向があった.口側に局在する病変の患者は尾側病変の患者よりも,嚥下障害,顔面麻痺(各P<0.01),異常感覚(P<0.01)が有意に多く,重度の歩行失調,頭痛が有意に少なかった(P<0.05).嚥下障害(P<0.01),構音障害(P<0.01),両側三叉神経感覚パターン(P<0.05)の頻度は,‘広範型’の患者では外側型病変の患者と比べて頻度が高いという点において,水平方向のサブタイプの間で有意に差があった.123人の患者に行われた血管造影から,椎骨動脈疾患が67%,後下小脳動脈の疾患が10%にみとめられた.推定される病態の機序は,50%が大血管梗塞,15%が動脈解離,13%が小血管梗塞,5%が心原性塞栓だった.解離は尾側病変(口側病変に対して)の患者により多く生じ(P<0.01),一方,背側型梗塞(他のタイプに対して)は心原性塞栓や正常血管所見とより多く関連していた(それぞれP<0.05).孤発性の後下小脳動脈疾患は(椎骨動脈疾患を伴う患者に対して,心原性塞栓がより多く(P<0.05).解離はより少なかった(P<0.05).MRIの口側−尾側および水平面の分類は,不均一は延髄外側梗塞の臨床像と,部分的には病態の側面を理解する手助けとなる.

2018年8月30日木曜日

延髄外側症候群のスペクトラム 33例における臨床所見とMRIの間の相関 Stoke1994

延髄外側症候群のスペクトラム
33例における臨床所見とMRIの間の相関









 背景と目的.CTは延髄病変の評価には不十分であった.延髄外側梗塞は比較的多いタイプの脳血管疾患であるが,臨床所見とMRIの間の詳細な相関は今だに報告されていない.
方法.我々は妥当なMRI病変を示し延髄外側梗塞33人の連続した患者を検討し,臨床所見をMRIの結果との関係を比較した.
 結果.失調歩行(88%),めまい/めまい感(91%),嘔気/嘔吐(73%),嚥下障害(61%),嗄声(55%,Horner徴候(73%),顔面の感覚変化(85%),半身の感覚変化(94%)が頻度の高い臨床所見だった.MRIの結果から,延髄の口側部位に局在する病変はたいていは斜めの帯状の形状となり,嚥下障害や嗄声がより重度であること,および顔面麻痺の存在と関連し,一方,尾側病変はたいていは延髄の外側表層部に位置し,より顕著なめまい,眼振,失調歩行と相関するようだった.嘔気/嘔吐とHorner徴候は病変の局在とは関係なく共通であり,腹内側に存在する病変は病変と対側の顔面の感覚変化に関連した.
 結論.口側尾側面および背側腹側面でのMRI所見の分析から,疑う余地もなくとは言えないまでも,我々は延髄外側脳卒中症候群の患者の評価の上での解剖学的相関を得ることができた.

2018年8月25日土曜日

嚥下障害の重症度の予測:延髄外側梗塞の患者にのける嚥下障害のパターンの調査 Intern Med 2013

嚥下障害の重症度の予測:延髄外側梗塞の患者にのける嚥下障害のパターンの調査


抄録

目的 延髄外側梗塞後のWallenberg症候群を生じた患者における嚥下機能に影響する因子を判定するために,我々は患者の様々な特性を調べた.項目には,上部食道括約筋を通過する食塊の通過パターンの異常(PPA; passege pattern abnormality)を含めた.
方法 嚥下障害のある延髄外側梗塞のみの患者54人がこの研究に参加した.PPAは,延髄の梗塞側に対応した上部食道括約筋を通る食塊の通過不全と定義し,患者ごとの嚥下造影検査で判定した.脳MRIでは,被験者の病変を,疑核/孤束核への関与に関連して,垂直方向に3つのレベルに,水平方向に7つのレベルに分類した.年齢,性別,PPA,病変の垂直/水平部位についてロジスティック回帰分析を行なった.
結果 重症度の点では,軽度の嚥下障害を有していると分類された被験者は15人,中等度の嚥下障害が26人,重度の嚥下障害が13人だった.頭側の病変のある被験者は,病変が垂直方向に広がっているほどPPAは重度の嚥下障害が多いようだった.PPAと病変の垂直方向への大きく広がっていることは機能予後の重症度と関連していた(p<0.01).水平方向の大きさは予後とは強く関連しなかった.
結論 延髄外側梗塞におけるPPAの存在は,嚥下パターンの異常,つまり,延髄中枢パターン発生器の損傷を示唆するものである.PPAの存在と病変の垂直方向の大きさは重度の嚥下障害の有用な予測因子になり得る.

2018年8月23日木曜日

脳梗塞後の運動回復についての個人内の変動性 Neuralrehabil Neural Repair 2008

脳梗塞後の運動回復についての個人内の変動性
























背景.脳卒中後の運動回復は,臨床的な変数によってそこそこに予測されるだけであり,回復には未だに説明されていないような生物学的に意味のある変動性がかなり大きいことを示している.回帰診断から,このことが単にガウス差に関連したものであるか,そうでなければ,臨床的な変数への関連性において変動の大きい複数の小集団に関連しているかのどちらかであることが示すことができる.目的.回復対臨床的予測因子についての線形モデルに関する回帰診断を行うこと.方法.脳梗塞患者41人が研究された.障害は上肢Fugl-Meyer Scoreを用いて評価された.運動回復は,脳卒中後24〜72時間から3ヶ月後または6ヶ月後の間のFugl-Meyer Scoreの変化と定義した.モデルの臨床的予測因子は,年齢,性別,梗塞部位(皮質下対皮質),拡散強調像での梗塞巣の容積,再評価での時間,急性期の上肢Fugl-Meyer Scoreである.回帰診断には,ガウス差についてはKolmogorov-Smirnov検定と,外れ値については検出されたスチューデント化された残差を用いた検定を行われた.結果.ランダム標本では,臨床的変数は回復の変動のわずか47%しか説明しなかった.初期の障害がもっとも重度だった患者の間では,回復が極めて不良だった回帰の外れ値のセットがあった.外れ値を除くと,説明される回復の変動は89%まで上昇し,回復は,初期の障害との比例関係でよく近似された(回復≌0.70×初期の障害).結論.臨床的変数は,運動回復をそこそこにしか予測しない.回帰診断は,ほとんど回復を示さない重度の初期障害という外れ値の小集団の存在を示した.これらの外れ値を除くと,臨床変数は残りの患者の回復の良い予測因子であり,回復は初期の障害に対して強固な比例関係を示した.

2018年8月17日金曜日

脳障害の神経学的バイオマーカーは脳卒中後の運動回復を予測するために使用できるか?系統的レビュー Neurorehabil Neural Repair 2017











脳障害の神経学的バイオマーカーは脳卒中後の運動回復を予測するために使用できるか?系統的レビュー















抄録
背景.脳卒中リハビリテーションや回復の促進のために,新しい治療や予測モデルを作成するために,回復のバイオマーカー,特に神経学的バイオマーカーを立証することへの関心が高まっている.しかしながら,どのバイオマーカーが運動回復のためにもっとも高い的中率があるのかについて,神経リハビリテーション団体の間でコンセンサスはない.目的.エビデンスをレビューし,運動の回復を予測する上での使用のために,高いエビデンスの質の基準を満たすのはどの神経学的バイオマーカーかを判定すること.方法.我々は,予測的神経画像/神経生理学的研究についてデータベースを検索した.各研究の方法論的質を,過去に利用された包括的な15項目の評価システムを用いて評価した.さらに,我々は,GRADEアプローチを用いて,神経学的バイオマーカーの各カテゴリーについて全体的なエビデンスの質をランク付けした.結果.71編の論文が我々の対象基準を満たした;5つのカテゴリーの神経学的バイオマーカーが見つかった:拡散テンソル画像(DTI),経頭蓋磁気刺激(TMS),機能的MRI(fMRI),従来の構造的MRI(sMRI),これらのバイオマーカーの併用である.ほとんど研究が,急性期・亜急性期の脳梗塞の患者で実施された(〜70%).方法論的質が満足できる評価(質のスコアの総合点の80%以上)だった研究は1/3未満だった(21/71).従来の構造的MRIとバイオマーカーの併用のカテゴリーは,全体的なエビデンスの質において“高”にランクされた.結論.方法論的限界として多いものは3つあった:(a)交差検証がない,(b)運動回復に関する臨床的に重要な最小変化(minimal clinically important difference, MCID)がない,(c)対象数が小さい.どの神経学的バイオマーカーが脳卒中後の運動回復の最良の予測因子であるかを確立するために,もっと質の高い研究が必要である.最後に,ここで用いた四半世紀の古い方法論的質のツールは,もっと現代的で統計学的なアプローチの採用でアップデートすべきである.

2018年8月3日金曜日

外因系凝固経路に影響し,プロカルシトニンを上昇させないような内因性メディエータによって生じる急性大動脈解離における発熱 Intern Med 2016

外因系凝固経路に影響し,プロカルシトニンを上昇させないような内因性メディエータによって生じる急性大動脈解離における発熱















抄録
目的 急性大動脈解離の約1/3に発熱をみとめる:しかしながら,原因は依然として不明である.我々は,急性大動脈解離における発熱の機序を,炎症マーカーや凝固・線溶メディエータおよび,細菌感染症のマーカーであるプロカルシトニンの血清濃度を測定することで調査した.
方法 我々は,明らかな感染がなく,内科的に治療された急性大動脈解離患者43人を後方視的に調べた.患者を,最高体温>38℃がある患者(A群;19人)とない患者(B群;24人)に分けた.我々は,どの患者が全身性炎症反応症候群(SIRS)についての診断基準をすべて満たすかを証明し,その発熱との関連性を調べた.炎症,および凝固・線溶のメディエータを単変量解析で比較した.発熱と独立して関連した因子を多変量解析で立証した.
結果 SIRSの診断基準はA群(79%)ではB群(42%, p=0.001)よりも割合が多かった.プロカルシトニンの濃度はA群とB群の間に有意差はなかった(それぞれ0.15±0.17ng/mL vs. 0.11±0.12ng/mL,p=0.572).血清プロカルシトニン濃度は測定した患者ではすべて正常範囲であり,このことから,発熱は内因性メディエータによることが示された.多変量解析では,発熱とPT-INRの間に境界域の有意な関係があり(p=0.065),同じように組織因子によって始まった外因系経路の活性を反映していた.
結論 我々の知見は,急性大動脈解離における発熱がSIRSによって生じ,これが血清プロカルシトニン濃度を上昇させずに外因性凝固経路に影響するような内因性メディエータによって誘発されることを示唆している.

2018年7月27日金曜日

最適な医学的治療をなされていないA型大動脈解離の患者における血しょう炎症バイオマーカーの時間依存性変化 J CArdiothorac Surg 2015


最適な医学的治療をなされていないA型大動脈解離の患者における血しょう炎症バイオマーカーの時間依存性変化
















抄録
目的:A型大動脈解離の患者で,解離の発症から最適でない医学的治療を受けていた患者におけるインターロイキンIL-6,CRP,腫瘍壊死因子TNF-αの時間依存性変化を調べること.
デザインと方法:入院中のA型大動脈解離の患者92人において,IL-6,CRP,TNF-αをELISAと免疫比濁法で検出した.コントロール不良な高血圧患者78人,健常ボランティア82人の血液標本もコントロールとして分析した.胸部大動脈解離に関連した合併症の発生と,これらの炎症バイオマーカーの血しょう濃度の関連性も調査した.
結果:胸部大動脈解離では,コントロール不良の高血圧症や健常者群よりも,炎症メディエータの濃度が有意に高かった.胸部大動脈解離群におけるIL-6,TNF-αの血しょう濃度のピークまでの時間は,CRPよりも有意に短かった.胸部大動脈解離群では,51人の患者が胸部大動脈解離群に関連した合併症を生じ,胸部大動脈解離に関連した合併症のない患者群よりも,血しょうCRP濃度が有意に高かった(94.5±58.8 mg/L vs 47.4±47.8 mg/L,p<0.001).また,CRP濃度(r=-0.69, p<0.001)とクレアチニン(r=0.60, p<0.001)がPaO2/FiO2比と強い相関があった.合併症群では,合併症のない群よりもCRP濃度のピークまでの時間は有意に短く,CRP高値の機関が有意に長かった.
結論:血しょうCRP,IL-6,TNF-αの濃度の上昇と,持続的な高値は,胸部大動脈解離の進行性の進展に関連した.CRPのパターンが変わることは,合併症の治療と予防のマーカーになるかもしれない.我々の知見は,解離の進行と胸部大動脈解離に関連した合併症における炎症の重要な役割を示唆した.

2018年7月20日金曜日

通常診療における国際生活機能分類のシステム全体にわたる実践に向けて:中国における予備的研究からの教訓 J Rehabil Med 2016

通常診療における国際生活機能分類のシステム全体にわたる実践に向けて:中国における予備的研究からの教訓

























2011年,リハビリテーションにおける中国の指導者は,国際生活機能分類(ICF)の研究部門の協力で,中国の医療システムにおいてシステム全体にわたるICFの実戦に向けた取り組みに着手した.ここで我々は,中国における通常の実地診療で使用するために,ICF一般セットをテストする試験段階で得られた教訓を報告する.このセットはICFの7つのカテゴリーの簡潔なセットで,一般人口や種々の健康状態の人にわたって機能状態をよく説明できることが示されている.この記事では,分類と評価が比較可能かどうか,通常診療でのデータ収集においてどのくらいの数のICFカテゴリーを含めるべきか,実地診療と医学研究のプランニングにおいて機能状態のプロフィールと機能状態のスコアの有用性を議論する.さらに,この記事では,評価スケールにおけるICF評価点の使用や,中国のリハビリテーションや医療の中で項目として使用されるときにICF一般セットに含まれる,ある種のICFカテゴリーの特殊性をよく検討している.最後に,リハビリテーションと医療サービスにおけるICFのシステム全体にわたる有用性を強化するために必要な手順を立案する.

2018年7月13日金曜日

国際生活機能分類(ICF)リハビリテーションセットに向けて:医療戦略としてのリハビリテーションのための最小限の領域の一般セット Arch Phys Med Rehabil 2016

国際生活機能分類(ICF)リハビリテーションセットに向けて:医療戦略としてのリハビリテーションのための最小限の領域の一般セット














抄録
目的:一連の治療に沿った臨床的な集団において機能状態と障害を報告し評価するための最小限の標準として,国際生活機能分類の包括的セットを作成すること.具体的な目的は,ICFリハビリテーションセットについて推奨される機能状態の領域を特定し,様々な健康状態の個人や集団をまたいで障害を説明するときに,ICFリハビリテーションセットを並行して使用できる環境因子の最小セットを突き止めることである.
デザイン:回帰法(Random ForestとGroup Lasso回帰)を用いた既存のデータの二次的解析と専門家の協議.
条件:急性期,急性期後早期,長期の連続的な治療に沿ったリハビリテーションと地域リハビリテーション.
参加者:種々の健康状態の人(9863人)が主要研究に参加した.従属変数データが利用可能で,この解析に使用した回答者の数は9264人だった.
介入なし
主要評価項目回帰モデルのために,自己報告での全般的な健康を従属変数として用いた.機能状態の要素と環境因子の要素のICFカテゴリーを,それぞれICFリハビリテーションセットと環境因子の最小セットの作成のための独立変数として用いた.
結果12の環境因子で補完された30のICFカテゴリーが,確認されたICFセットと関連していることがわかった.ICFリハビリテーションセットは,身体機能の要素から9個のICFカテゴリーと活動と参加の要素からの21のICFカテゴリーで構成された.環境因子の最小セットは,ICFの環境因子全体に及ぶ12カテゴリーで構成されていた.

結論判定されたセットの試案は,健康状態,時期,リハビリテーションを含む医療条件,国の中で,あるいはまたいで,データを報告するための臨床的な集団における機能状態の側面の最小限の一般セットとして機能する.このようなセットは,一般集団と臨床的集団にわたって,障害に関する既存の情報を調和させるための参照フレームワークを示す.

2018年6月24日日曜日

両側声帯麻痺:皮質脳梗塞のまれな遅発合併症 Neth J Crit Care 2017











両側声帯麻痺:皮質脳梗塞のまれな遅発合併症














抄録

脳卒中患者における声帯麻痺はまれな症状であり,大脳皮質や迷走神経の反回喉頭神経分枝を供給する脳幹の領域が損傷されたときに生じる.運動皮質を障害する脳卒中では,通常は声帯麻痺は生じない.というのも,迷走神経核は,脳の両側から皮質延髄路に神経支配を受けているからである.我々は,発症から8日目に生じた左前頭−頭頂–島皮質の梗塞による突然発症の両側声帯麻痺という独特な症例を提示する.

2018年6月11日月曜日

急性脳梗塞における声帯麻痺 Cerebrovasc Dis 1999

急性脳梗塞における声帯麻痺






















抄録

我々は,初回急性脳梗塞における声帯麻痺の発生率を前方視的に判定した.脳卒中発症から48時間以内,1週目,1ヶ月目に内視鏡で声帯を観察した.研究の症例54例のうち,ラクナ梗塞64.8%(グループ1),皮質/広範皮質下22.2%(グループ2),延髄外側9.3%(グループ3),その他の脳幹3.7%(グループ4)の梗塞だった.声帯麻痺は11例(20.4%)にみとめた.グループ1では11.4%,グループ2では16.4%,グループ3では100%,グループ4では0%である.声帯麻痺は,グループ1とグループ2では脳病変と対側,グループ3では同側だった.声帯麻痺は,発声障害と強く関連し(p<0.0001),1週後に消失したのは11人中2人,1ヶ月後に消失したのは11人中5人だった.急性脳梗塞の患者における声帯麻痺の我々の知見は,疑核が常に核上の中枢から両側性に神経支配されているという見解に疑問を投げかけるものである.