2017年8月29日火曜日

ベッドサイド水飲みテストを用いた誤嚥についてのスクリーニングの正確性 系統的レビューとメタ解析 Chest 2016






ベッドサイド水飲みテストを用いた誤嚥についてのスクリーニングの正確性
系統的レビューとメタ解析























背景:誤嚥性肺炎での入院は高齢者では2倍である.嚥下に関連した誤嚥に対するスクリーニングのためのベッドサイド水飲みテスト(WST)を用いることは,さらなる合併症や死亡を予防するために,有効で,費用対効果が高い.我々は,嚥下障害に関連した誤嚥についてのリスクのある患者を判別するために用いられるベッドサイドWSTのスクリーニングの正確性を評価した.
方法:16のオンラインデータベースとGoogle Scholar,よく知られた専門家を2015年5月に検索した.18歳以上患者での前方視的研究で,経鼻内視鏡または嚥下造影に対するWSTスクリーニングの妥当性を検証した研究を対象とした.データの抽出には,Meta-analysis of Observational Studies in Epidemiologyのガイドラインにしたがって,二重盲検化抽出と質の評価を用いた.
結果:異なる3つのベッドサイドWSTで声の変化(例えば,湿性/嗄声の質)のあり/なしでの気道反射(例えば,咳/窒息)を誤嚥の判定に用いられていた.一口量(1〜5mL)についての統合推定値は感度71%(95%信頼区間63%-78%),特異度90%(95%信頼区間86%-93%)だった.90〜100mLの連続飲み試験は感度91%(95%信頼区間89%-93%),特異度53%(95%信頼区間51%-55%)だった.水の量を漸増する試験は感度86%(95%信頼区間76%-93%),特異度65%(95%信頼区間57%-73%)だった.気道反射と声の変化の併用は誤嚥の判定において全体的な正確性を改善した.
結論:現在用いられているベッドサイドWSTは,理想的ではないにしても,誤嚥のスクリーニングについて十分な有用性を有している.多い量での連続飲みで,明らかな気道反射や声の変化のない患者は,誤嚥のリスクを適切に除外できる.一口の少量は,臨床的な徴候があるときには誤嚥を判定できる.これらのベッドサイドのアプローチを併用することで,スクリーニングの正確性を改善できるかもしれないが,さらなる研究が必要である.

2017年8月24日木曜日

高齢者の誤嚥性肺炎の予防:我々に‘ノウハウ’はあるか? Hong Kong Med J 2014

 高齢者の誤嚥性肺炎の予防:我々に‘ノウハウ’はあるか?









抄録
 誤嚥性肺炎は高齢者ではよく見られる.誤嚥性肺炎のリスクを低下させるには,良好な口腔衛生の維持が重要であり,唾液の分泌に影響する薬剤や鎮静を生じさせる薬剤は,可能ならもっとも避けるべきである.H2遮断薬やプロトンポンプ阻害薬の使用は最小限にすべきである.経口摂取の際には,様々な代償法や促通手技が適用できる.介助での食事は,経管栄養を考慮する前に試してみるべきである.経管栄養は最終手段であり,主に栄養状態と水分補給を改善するためである.誤嚥性肺炎の予防と生存率改善は経管栄養の理論的根拠ではない.胃瘻や経鼻胃管チューブからの栄養投与は誤嚥性肺炎に対して同等のリスクがあり,持続的ポンプでの栄養投与は間歇的投与よりも良好だというわけではない.十二指腸栄養は,選択されたハイリスク患者では誤嚥性肺炎を減少させるかもしれない.もし高齢の患者が,耐えられないような咳を生じることなくACE阻害薬を服用できるなら,薬剤の継続は有効かもしれない.葉酸欠乏がもしあったら,速やかに補正すべきである.誤嚥性肺炎の予防のもっともよい方法を見つけるために,今後のよりよくデザインされた研究が必要である.

2017年8月17日木曜日

脳卒中関連肺炎のリスクと口腔衛生 Cerebrovasc Des 2015

 
脳卒中関連肺炎のリスクと口腔衛生










































抄録
背景:肺炎は脳卒中の主要合併症であるが,効果的な予防戦略がない.口腔咽頭分泌物の誤嚥が,脳卒中関連肺炎発生に関する主なメカニズムなので,病原細菌の口腔内のコロニー形成を減少させるような戦略が,肺炎リスクを提言するのに役立つかもしれない.したがって,我々は,系統的口腔ケアプロトコルが,入院中の脳卒中患者の肺炎リスクを低下させることができるという仮説を立てた.本研究では,我々は,急性期−亜急性期脳卒中患者における院内発症の肺炎減少に対する系統的口腔衛生ケアプログラムの影響を調べた.方法:本研究では,系統的口腔衛生ケア介入の実施前と後の脳卒中の入院患者の肺炎発生率を比較した.2008年5月31日から20106月1日,および,2012年1月1日から2013年12月31日までにボストンの都市部の大型学問的医療センターに入院した急性脳梗塞または脳内出血で入院したすべての患者で,18歳以上,2日以上の入院していた患者が対象の候補となった.この前半のコホートがコントロール群となり.一方,後半のコホートが介入群となった.多変量ロジスティック回帰を用いて,交絡因子をコントロールした.主要評価項目は院内発症肺炎で,国際疾病分類第9版の改変コード集の定義に従った.結果:コホートは,入院1656件があった(歴史的コントロール707人,介入群949人).院内肺炎の無調整発生率は,口腔衛生ケアに割り当てられた群では,コントロールに比べて低く(14対10.33%;p=0.022),非調整オッズ比は0.68(95%信頼区間0.48-0.95)だった.影響のある交絡因子を調整すると,介入群の院内肺炎のオッズ比は依然として有意に低く0.71だった(95%信頼区間0.51-0.98).結論:急性脳卒中で入院した患者での,この大規模な入院患者のコホートでは,系統的口腔衛生ケアの使用が,院内肺炎のオッズ比低下と関連した.

2017年8月11日金曜日

急性脳梗塞後の感染症 脳誘発性免疫抑制の表明 Stroke 2007


急性脳梗塞後の感染症
脳誘発性免疫抑制の表明












背景と目的−実験での局所虚血後の感染症は,脳誘発性免疫抑制の結果,生じるかもしれない.しかし,ヒトの脳卒中で同じ症候群が生じるかどうかははっきりしない.
レビューのまとめ−多くの患者が,最適な治療にもかかわらず,急性脳卒中後すぐに感染症を生じる.このような患者では死亡率が高く,脳卒中の重症度が感染リスクのもっとも強力な決定因子である.しかしながら,感染症が神経学的増悪を助長するのか,あるいは重症疾患であることのマーカーを代わりであることを意味しているのかは議論がある.脳と免疫系は,神経と体液の経路を介して機能的に連絡しており,感染症の発生率が上昇するような免疫能力の低下は,いくつかの急性の神経学的病態で示されてきた.実験的脳虚血では,感染症は自律神経系と神経内分泌経路の活性化と関連があり,これらは抗炎症信号の強度を高める.最近,感染は症状の進行との独立した関連性は示されなかったけれども,サイトカインによって調整される強力な抗炎症反応が感染のよりハイリスクの脳卒中患者でみとめられた.
結論−急性脳卒中の患者における感染症の発生は,部分的には,急性脳損傷によってトリガーされる免疫学的機序によるものである.過度の抗炎症反応が,感染症発生の重要な促進因子であり,この免疫反応は脳虚血に対する適応的メカニズムを表しているようである.対称的に,感染がヒトの脳卒中の予後不良に対して,独立して関与しているかどうかは不明である.全体として,脳と免疫系の間のやりとりについてより理解することが,急性脳卒中の患者における,より効率的な治療につながるだろう.

2017年8月8日火曜日

脳卒中誘発性免疫抑制 実験的証拠と臨床的関連性 Stroke 2007

脳卒中誘発性免疫抑制
実験的証拠と臨床的関連性












抄録−脳卒中は,正常ではよくバランスされている2つの上位体系の相互作用に影響する:神経系と免疫系である.最近の研究から,影響を受けた兆候と機序がいくつか明らかになり,重要なことは,脳−免疫相互作用が脳卒中後の機能転帰に大いに関連していることを示すことができるようになったということである.脳卒中後の免疫抑制が生じると感染しやすくなり,これは脳卒中患者においてもっとも関連の深い合併症である.しかしながら,脳卒中後の免疫抑制は有益な効果もあるのかもしれない.例えば,病変から産生された中枢神経系特有の抗原の免疫系への暴露の間の自己侵襲的な反応を抑制することによる効果である.それゆえ,免疫調整療法が脳卒中患者に適用できるようになる前に,我々は,局所の脳虚血後の脳と免疫系の相互作用をより理解しなければならない.それまでは,脳卒中誘発性免疫抑制の重要な結果,つまり細菌感染を予測して,抗菌的な予防戦略が提唱されてきた.マウスの実験では,予防的抗菌療法は死亡と帰結を劇的に改善した.このテーマにおける臨床研究の結果は,現時点では一致しておらず,脳卒中患者が予防的に治療されるべきかどうか,そしてどんな患者が予防的治療を受けるべきかという疑問に答えるための大規模研究が必要である.にもかかわらず,ヒトにおける脳卒中誘発性免疫抑が存在するだけでなく,齧歯類の実験で特徴付けられたものと極めて似た特性を有していることを示す臨床的なエビデンスが現れている.

2017年8月6日日曜日

経鼻胃管で栄養投与されている脳卒中患者における肺炎を予防するためのメトクロプラミドの安全性と有効性の試験 Stroke 2015

経鼻胃管で栄養投与されている脳卒中患者における肺炎を予防するためのメトクロプラミドの安全性と有効性の試験















背景と目的−肺炎は,経鼻胃管栄養を受けている脳卒中患者における死亡と合併症の主要原因であり,嘔吐と胃食道逆流の原因になることもある.研究の目的は,制吐作用と胃の運動促進作用のあるD2受容体拮抗薬であるメトクロプラミドが誤嚥と肺炎の発生率を低下させるかどうかを評価することである.
方法−脳卒中発症から7日以内かつ経鼻胃管チューブ挿入から48に時間以内で肺炎の兆候のない患者が,二重盲検化・ランダム化・プラセボ比較対照試験に募集された.参加者は,メトクロプラミド10mgまたはプラセボを,経鼻胃管チューブから1日3回,21日間もしくは経鼻胃管栄養を終了するまで投与された.肺炎の臨床兆候を毎日記録した.肺炎は,患者が関連する臨床症状や炎症反応高値,胸部X線写真の新規の浸潤影を呈した場合に診断とした.
結果−60人の患者(平均年齢78歳;女性378人;平均NIHSSスコア19.24)が1:1の比でランダムに割り当てられた.プラセボ群はメトクロプラミド群よりも肺炎のエピソードが有意に多かった(発生率比5.2;P<0.001).誤嚥の発生率,酸素飽和度,炎症反応の最高値,NIHSSスコアに有意差があり,メトクロプラミド群に良好だった.死亡率には群間に有意差はなかった.
結論−この研究から,経鼻胃管栄養を受けている亜急性期脳卒中患者においてメトクロプラミドが肺炎発生率を低下させ,その他の臨床的帰結を改善するかもしれないということが示唆された.このような知見は,もっと大規模のランダム化・盲検化試験で確かめなければならない.