2022年8月8日月曜日

不全脊髄損傷患者において,脳磁気刺激は臨床評価項目を改善させることができる Spinal Cord 2004

 

不全脊髄損傷患者において,脳磁気刺激は臨床評価項目を改善させることができる














研究デザイン:予備的な縦断的臨床試験.

目的:安定した不全脊髄損傷において,皮質脊髄抑制を調整し回復を改善させる上での反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性を検証すること.

条件:英国バックスのStroke Mandeville HospitalのNational Spinal Injuries Centreおよび英国ロンドンのCharing Cross HospitalのImperial College Faculty of Medicineの神経科学講座.

方法:安定した不全脊髄損傷4人が,後頭皮質上のrTMS(シャム治療)で治療され,それから運動皮質上のrTMS(真治療)で治療された.患者は,電気生理学的検査,臨床評価および機能的評価で,治療前,シャム治療中,治療的治療中,3週間の追跡期間中に測定された.

結果:治療の週の間,皮質抑制は減弱していた.皮膚の電気刺激に対する知覚閾値,運動・感覚機能のASIAの臨床評価,ペグボードの遂行時間が改善し,追跡調査期間に改善が維持された.

結論:この予備的研究で,rTMSは不全脊髄損傷における皮質抑制を変化させ,臨床的・機能的評価項目を改善させることが示された.

2022年8月4日木曜日

脊髄損傷にヒトにおいて,皮質脊髄−運動の神経可塑性は運動を介した回復を促進する Brain2020


脊髄損傷にヒトにおいて,皮質脊髄−運動の神経可塑性は運動を介した回復を促進する


 

















脊髄損傷の人におけるリハビリテーション訓練は,残存した神経ネットワークに働きかけ,機能回復を改善させることを目的としている.我々は,脊髄のシナプスを標的とした非侵襲的刺激と併用した運動が,機能回復をさらに促進するという仮設を立てた.慢性期不全頚髄損傷・胸髄損傷・腰髄損傷の患者25人をランダムに,皮質脊髄−運動神経対刺激(PCMS; paired corticospinal- motor neuronal stimulation)かシャムPCMSを併用した運動10セッションに割り付けた.追加の実験で,我々は,同様の特性の脊髄損傷患者13人で,運動なしでのPCMSの効果を調査した.PCMSの最中,180回の対刺激を,一次運動皮質上の経頭蓋磁気刺激によって誘発された皮質脊髄発射が,(損傷レベルに応じて)上肢または下肢の皮質脊髄−運動ニューロンシナプスに到着する時間に合わせて,末梢神経の電気刺激によって運動ニューロンにおいて逆行性電位が誘発される1-2m秒に設定した.参加者は,すべてのプロトコルのあとで45分の運動を行った.我々は,Graded and Redefined Assessment of Strength, Sensibility and Prehension(GRASSP)の下位項目を実行するのにかかる時間と10m歩行テストがすべてプロトコル後に平均で20%短縮した.しかしながら,経頭蓋磁気刺激によって誘発される皮質脊髄反応の振幅および標的となった筋の最大随意収縮の大きさはPCMS併用後では平均40−50%増大し,運動後やシャムPCMSを併用した運動後では増大しなかった.特筆すべきことに,行動上の効果や生理学的効果はPCMS併用での運動を受けた群では6ヶ月後に温存され,シャムPCMSを併用した運動を受けた群では温存されなかった.つまり,刺激は,運動による効果を維持するのに貢献したことが示唆された.我々の知見から,脊髄シナプスの標的を持った非侵襲的刺激は,異なる程度の麻痺とレベルのヒトにおいて,運動を介した回復を促進する有効な戦略を提示するかもしれない.