2017年1月28日土曜日

気管切開のある脳卒中患者の嚥下機能と運動学 Dysphagia 2016


気管切開のある脳卒中患者の嚥下機能と運動学
抄録 この研究の目的は,気管切開のある脳卒中患者と気管切開のない脳卒中患者で嚥下機能とu運動学を比較することである.この後方視的対応症例対照研究で,我々は気管切開のある脳卒中患者(TRACH群24人)と気管切開のない脳卒中患者(NO-TRACH群24人)を比較した.我々は,年齢,性別,脳卒中の病型を対応させた.嚥下機能は,嚥下造影から得た嚥下造影嚥下障害スケール(VDS; videofluoroscopic dysphagia scale)と機能的経口摂取スケール(FOIS; functional oral intake scale)を用いて評価した.嚥下の運動学は,TRACH群の嚥下造影の二次元運動解析を用いて評価した.気管切開の期間は平均132.38±150.46日だった.VDSの合計点は,TRACH群(35.17±15.30),NO-TRACH群(29.25±16.66)で有意差はなかった(p=0.247).FOISは,TRACH群(2.33±1.40)で,NO-TRACH群(4.33±1.79)よりも有意に低かった(p=0.001).TRACH群では,NO-TRACH群に比べ,喉頭の最大垂直偏位(15.23±7.39mm vs 20.18±5.70mm, p=0.011),最大速度(54.99±29.59mm/s vs 82.23±37.30mm/s, p=0.011),最大二次元速度(61.07±24.89mm/s vs 84.40±36.05mm/s, p=0.013)が有意に低かった.TRACH群の舌骨の最大水平速度(37.66±16.97mm/s)もNO-TRACH群(47.49±15.73, p=0.032)よりも有意に低かった.この研究から,気管切開のある脳卒中患者は気管切開のない脳卒中患者よりも嚥下機能と嚥下の運動学が低下していることが示された.脳卒中患者における嚥下の回復への気管切開の影響を明らかにするには前方視的経時的研究が必要である.