2017年11月21日火曜日

癌のない成人についての経静脈栄養と経腸栄養の短期的な死亡と合併症の比較:全国入院患者データベースを用いたプロペンシティマッチ(傾向一致)解析 Am J Clin Nutr 2015


癌のない成人についての経静脈栄養と経腸栄養の短期的な死亡と合併症の比較:全国入院患者データベースを用いたプロペンシティマッチ(傾向一致)解析
























抄録
背景:正常に食べられない患者にとって,適切な人工栄養は,高齢者医療や在宅医療においては,現在進行形の解消されない問題である.経静脈栄養と経腸栄養という人工栄養の2つの方法の間の予後の違いには論争が巻き起こっている.
目的:正常に食べられない患者にとっての経静脈栄養と経腸栄養の短期帰結を比較し解析した.
デザイン:日本の1057病院をカバーする全国入院患者データベースから選択された患者から,データを入手した.参加者は,2012年4月から2013年3ヶ月の間に人工栄養を受けた患者で,20歳以上で癌のない患者である.彼らは2群に分けられた:経静脈栄養を受けた患者と経腸栄養を受けた患者である.我々は,グループ間で1対1傾向スコアマッチングを行なった.主要評価項目は人工栄養を開始してから30日後と90日後の死亡率である.二次評価項目は,人工栄養後の合併症,肺炎,敗血症である.我々は,人工栄養後の生存在院日数をCox比例ハザードモデルを用いて解析した.
結果:経静脈栄養群には3750人,経腸栄養群には22,166人の患者がいた.傾向スコアマッチングで2群で2912組のペアが生成された.ベースラインの病状から計算された傾向スコア(経腸栄養に割り当てられる可能性)が同等の患者をマッチさせた.人工栄養開始から30日後の死亡率は,経静脈栄養群と経腸栄養群でそれぞれ7.6%,5,7%(P=0.003)m,90日後はそれぞれ12.3%,9.9%(P=0.002)だった.Cox回帰分析では,経静脈栄養に対する経腸栄養のハザード比は0.62(95%信頼区間:0.54〜0.71;P<0.001)だった.人工栄養後の肺炎の発生率は,経静脈栄養群と経腸栄養群でそれぞれ11.9%,15.5%(P<0.001)で,敗血症は4.4%,3.7%(P=0.164)だった.
結論:この解析で,癌のない成人では経静脈栄養と比べて経腸栄養で生存率が良好であることが示された.この試験はclinicaltrails.govにNCT02512224で登録されている.

2017年11月17日金曜日

急性脳梗塞での両側声帯麻痺 Cerebrovasc Dis 1999

 
急性脳梗塞での両側声帯麻痺























抄録
声帯は,迷走神経の分枝である反回喉頭神経から神経の供給を受けている.大脳運動皮質は,皮質延髄路から延髄の迷走神経核にある運動核(疑核)に発射する.迷走神経は,頸静脈孔から頭蓋の外に出て,頸動脈鞘を通って伸びる.左迷走神経は大動脈弓で左反回喉頭神経となって上がっていき,一方,右迷走神経は鎖骨下動脈で反回喉頭神経となって上がっていく.この経路が何らかの問題で破綻すると片側の声帯麻痺を引き起こす.運動皮質に影響を与える脳卒中では片側声帯麻痺を生じない.なぜなら,迷走神経核は両側の脳から皮質延髄路を受けているからである.我々は,この経路とは関連しない片側の右島皮質の脳卒中によって生じた両側声帯麻痺の稀な症例を提示する.

2017年11月10日金曜日

延髄外側梗塞における両側声帯機能不全:症例報告と神経−解剖の相互関係のレビュー J Neurol Neurophysiol 2015

延髄外側梗塞における両側声帯機能不全:症例報告と神経−解剖の相互関係のレビュー









抄録

 背景:延髄外側(Wallenberg)症候群は,椎骨動脈疾患に関連した,もっともよくある脳卒中の症候群である.この症候群の特徴は,体側の体幹と四肢,および顔面の同側に影響する交差性の感覚の所見である.この症状が,構音障害に,めまい,Horner症候群に加わる.片側の声帯機能不全は頻繁にみとめるが,両側の声帯麻痺は極めて稀で,生命の危機になり得る合併症である.
 症例提示:我々は75歳男性で,急性延髄外側(Wallenberg)症候群を呈し,両側声帯麻痺のために急性気道閉塞となった症例を提示する.
 結論:我々は急性脳梗塞の稀な症状を報告する:すなわち両側声帯麻痺である.我々は,両側声帯に波及したことについての背景となる神経解剖学的機序を提唱する.

2017年11月4日土曜日

嚥下の制御における皮質入力 Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg 2009





嚥下の制御における皮質入力





















レビューの目的
このレビューでは,嚥下の皮質制御における最近の研究の現在の大要と,ヒトの嚥下の神経生理学の領域の先端知識へのその関連性を示すことである.目的は,最近の知見に光を当て,まだ調査されていない研究の潜在的な疑問点を刺激することである.

最近の知見
ヒトの脳画像化の進歩は,ヒトの嚥下の皮質・皮質下の制御へのより新しい識見を大量にもたらした.これには嚥下の制御への半球の関与や神経損傷後の回復や代償の背景のメカニズムのよりよく理解することが含まれる.


まとめ
画像化技術と神経画像技術の進歩によって,嚥下の神経解剖と生理学についての我々の知識は,この20年に劇的に拡大した.多様な嚥下の皮質ネットワークと感覚入力が嚥下の皮質活動にどのように影響するかの統合と相互連結は,この精巧で,それでいて基本的な感覚運動機能を支える生理学的機序のよりよい理解を提供し始めたところである.嚥下の神経再構築のための実験的なパラダイムは,嚥下障害のリハビリテーションのための臨床診療への転換のためのエビデンスが提供され始めた.