2018年8月30日木曜日

延髄外側症候群のスペクトラム 33例における臨床所見とMRIの間の相関 Stoke1994

延髄外側症候群のスペクトラム
33例における臨床所見とMRIの間の相関









 背景と目的.CTは延髄病変の評価には不十分であった.延髄外側梗塞は比較的多いタイプの脳血管疾患であるが,臨床所見とMRIの間の詳細な相関は今だに報告されていない.
方法.我々は妥当なMRI病変を示し延髄外側梗塞33人の連続した患者を検討し,臨床所見をMRIの結果との関係を比較した.
 結果.失調歩行(88%),めまい/めまい感(91%),嘔気/嘔吐(73%),嚥下障害(61%),嗄声(55%,Horner徴候(73%),顔面の感覚変化(85%),半身の感覚変化(94%)が頻度の高い臨床所見だった.MRIの結果から,延髄の口側部位に局在する病変はたいていは斜めの帯状の形状となり,嚥下障害や嗄声がより重度であること,および顔面麻痺の存在と関連し,一方,尾側病変はたいていは延髄の外側表層部に位置し,より顕著なめまい,眼振,失調歩行と相関するようだった.嘔気/嘔吐とHorner徴候は病変の局在とは関係なく共通であり,腹内側に存在する病変は病変と対側の顔面の感覚変化に関連した.
 結論.口側尾側面および背側腹側面でのMRI所見の分析から,疑う余地もなくとは言えないまでも,我々は延髄外側脳卒中症候群の患者の評価の上での解剖学的相関を得ることができた.

2018年8月25日土曜日

嚥下障害の重症度の予測:延髄外側梗塞の患者にのける嚥下障害のパターンの調査 Intern Med 2013

嚥下障害の重症度の予測:延髄外側梗塞の患者にのける嚥下障害のパターンの調査


抄録

目的 延髄外側梗塞後のWallenberg症候群を生じた患者における嚥下機能に影響する因子を判定するために,我々は患者の様々な特性を調べた.項目には,上部食道括約筋を通過する食塊の通過パターンの異常(PPA; passege pattern abnormality)を含めた.
方法 嚥下障害のある延髄外側梗塞のみの患者54人がこの研究に参加した.PPAは,延髄の梗塞側に対応した上部食道括約筋を通る食塊の通過不全と定義し,患者ごとの嚥下造影検査で判定した.脳MRIでは,被験者の病変を,疑核/孤束核への関与に関連して,垂直方向に3つのレベルに,水平方向に7つのレベルに分類した.年齢,性別,PPA,病変の垂直/水平部位についてロジスティック回帰分析を行なった.
結果 重症度の点では,軽度の嚥下障害を有していると分類された被験者は15人,中等度の嚥下障害が26人,重度の嚥下障害が13人だった.頭側の病変のある被験者は,病変が垂直方向に広がっているほどPPAは重度の嚥下障害が多いようだった.PPAと病変の垂直方向への大きく広がっていることは機能予後の重症度と関連していた(p<0.01).水平方向の大きさは予後とは強く関連しなかった.
結論 延髄外側梗塞におけるPPAの存在は,嚥下パターンの異常,つまり,延髄中枢パターン発生器の損傷を示唆するものである.PPAの存在と病変の垂直方向の大きさは重度の嚥下障害の有用な予測因子になり得る.

2018年8月23日木曜日

脳梗塞後の運動回復についての個人内の変動性 Neuralrehabil Neural Repair 2008

脳梗塞後の運動回復についての個人内の変動性
























背景.脳卒中後の運動回復は,臨床的な変数によってそこそこに予測されるだけであり,回復には未だに説明されていないような生物学的に意味のある変動性がかなり大きいことを示している.回帰診断から,このことが単にガウス差に関連したものであるか,そうでなければ,臨床的な変数への関連性において変動の大きい複数の小集団に関連しているかのどちらかであることが示すことができる.目的.回復対臨床的予測因子についての線形モデルに関する回帰診断を行うこと.方法.脳梗塞患者41人が研究された.障害は上肢Fugl-Meyer Scoreを用いて評価された.運動回復は,脳卒中後24〜72時間から3ヶ月後または6ヶ月後の間のFugl-Meyer Scoreの変化と定義した.モデルの臨床的予測因子は,年齢,性別,梗塞部位(皮質下対皮質),拡散強調像での梗塞巣の容積,再評価での時間,急性期の上肢Fugl-Meyer Scoreである.回帰診断には,ガウス差についてはKolmogorov-Smirnov検定と,外れ値については検出されたスチューデント化された残差を用いた検定を行われた.結果.ランダム標本では,臨床的変数は回復の変動のわずか47%しか説明しなかった.初期の障害がもっとも重度だった患者の間では,回復が極めて不良だった回帰の外れ値のセットがあった.外れ値を除くと,説明される回復の変動は89%まで上昇し,回復は,初期の障害との比例関係でよく近似された(回復≌0.70×初期の障害).結論.臨床的変数は,運動回復をそこそこにしか予測しない.回帰診断は,ほとんど回復を示さない重度の初期障害という外れ値の小集団の存在を示した.これらの外れ値を除くと,臨床変数は残りの患者の回復の良い予測因子であり,回復は初期の障害に対して強固な比例関係を示した.

2018年8月17日金曜日

脳障害の神経学的バイオマーカーは脳卒中後の運動回復を予測するために使用できるか?系統的レビュー Neurorehabil Neural Repair 2017











脳障害の神経学的バイオマーカーは脳卒中後の運動回復を予測するために使用できるか?系統的レビュー















抄録
背景.脳卒中リハビリテーションや回復の促進のために,新しい治療や予測モデルを作成するために,回復のバイオマーカー,特に神経学的バイオマーカーを立証することへの関心が高まっている.しかしながら,どのバイオマーカーが運動回復のためにもっとも高い的中率があるのかについて,神経リハビリテーション団体の間でコンセンサスはない.目的.エビデンスをレビューし,運動の回復を予測する上での使用のために,高いエビデンスの質の基準を満たすのはどの神経学的バイオマーカーかを判定すること.方法.我々は,予測的神経画像/神経生理学的研究についてデータベースを検索した.各研究の方法論的質を,過去に利用された包括的な15項目の評価システムを用いて評価した.さらに,我々は,GRADEアプローチを用いて,神経学的バイオマーカーの各カテゴリーについて全体的なエビデンスの質をランク付けした.結果.71編の論文が我々の対象基準を満たした;5つのカテゴリーの神経学的バイオマーカーが見つかった:拡散テンソル画像(DTI),経頭蓋磁気刺激(TMS),機能的MRI(fMRI),従来の構造的MRI(sMRI),これらのバイオマーカーの併用である.ほとんど研究が,急性期・亜急性期の脳梗塞の患者で実施された(〜70%).方法論的質が満足できる評価(質のスコアの総合点の80%以上)だった研究は1/3未満だった(21/71).従来の構造的MRIとバイオマーカーの併用のカテゴリーは,全体的なエビデンスの質において“高”にランクされた.結論.方法論的限界として多いものは3つあった:(a)交差検証がない,(b)運動回復に関する臨床的に重要な最小変化(minimal clinically important difference, MCID)がない,(c)対象数が小さい.どの神経学的バイオマーカーが脳卒中後の運動回復の最良の予測因子であるかを確立するために,もっと質の高い研究が必要である.最後に,ここで用いた四半世紀の古い方法論的質のツールは,もっと現代的で統計学的なアプローチの採用でアップデートすべきである.

2018年8月3日金曜日

外因系凝固経路に影響し,プロカルシトニンを上昇させないような内因性メディエータによって生じる急性大動脈解離における発熱 Intern Med 2016

外因系凝固経路に影響し,プロカルシトニンを上昇させないような内因性メディエータによって生じる急性大動脈解離における発熱















抄録
目的 急性大動脈解離の約1/3に発熱をみとめる:しかしながら,原因は依然として不明である.我々は,急性大動脈解離における発熱の機序を,炎症マーカーや凝固・線溶メディエータおよび,細菌感染症のマーカーであるプロカルシトニンの血清濃度を測定することで調査した.
方法 我々は,明らかな感染がなく,内科的に治療された急性大動脈解離患者43人を後方視的に調べた.患者を,最高体温>38℃がある患者(A群;19人)とない患者(B群;24人)に分けた.我々は,どの患者が全身性炎症反応症候群(SIRS)についての診断基準をすべて満たすかを証明し,その発熱との関連性を調べた.炎症,および凝固・線溶のメディエータを単変量解析で比較した.発熱と独立して関連した因子を多変量解析で立証した.
結果 SIRSの診断基準はA群(79%)ではB群(42%, p=0.001)よりも割合が多かった.プロカルシトニンの濃度はA群とB群の間に有意差はなかった(それぞれ0.15±0.17ng/mL vs. 0.11±0.12ng/mL,p=0.572).血清プロカルシトニン濃度は測定した患者ではすべて正常範囲であり,このことから,発熱は内因性メディエータによることが示された.多変量解析では,発熱とPT-INRの間に境界域の有意な関係があり(p=0.065),同じように組織因子によって始まった外因系経路の活性を反映していた.
結論 我々の知見は,急性大動脈解離における発熱がSIRSによって生じ,これが血清プロカルシトニン濃度を上昇させずに外因性凝固経路に影響するような内因性メディエータによって誘発されることを示唆している.