2015年2月27日金曜日

10. 急性期病院の脳卒中ユニットでコミュニケーション障害の患者にとってコミュニケーションに影響する環境因子:質的メタ統合

急性期病院の脳卒中ユニットでコミュニケーション障害の患者にとってコミュニケーションに影響する環境因子:質的メタ統合


























目的:病院の脳卒中ユニットでコミュニケーションに障害のある患者と医療従事者との間のコミュニケーションに影響するような環境因子を分類すること.
データソース:我々の研究チームが行った,病院の脳卒中ユニットにおける患者と医療従事者の間のコミュニケーションに影響する環境因子についての3つの質的研究のメタ統合を行った.
研究の選別:これらの研究では,コミュニケーションに影響する因子と,コミュニケーションに障害のある患者10人と医療従事者10人からの情報,および医療従事者とコミュニケーションをとる65人の患者の直接観察から調べた.
データの抽出:それぞれの研究の知見はメタ統合のためのデータとなった.
データの統合:質的研究の知見を分析し,それからreciprocal translation(相互転換?)を用いて統合した.環境因子を11の上位カテゴリーと2つの全体的テーマに分類した.テーマは(1)医療従事者(知識,スキル,態度,経験,特性)と(2)脳卒中ユニットの構造と(治療の)プロセス(患者がコミュニケーションをとる機会,家族,コミュニケーション機器の仕様,学習する機会,ポリシーと手順,身体的条件).
結論:コミュニケーションに障害のある脳卒中急性期患者には,できるだけ効率的にコミュニケーションをとることのできるような知識とスキルをもった医療従事者が必要である.しかしながら,医療従事者が患者をコミュニケーションをとる能力に影響するような環境上の問題と促進因子が,脳卒中ユニットの構造とプロセスのレベルで多く存在する.脳卒中ユニットでコミュニケーションの機会をとりやすくするための介入は,医療従事者とユニットを統制するプロセスを重視すべきである.


2015年2月25日水曜日

9. 日常のコミュニケーションをターゲットとしたリハビリテーション:失語症者とその重要な他者との対話における会話を変化させることができるのか?

日常のコミュニケーションをターゲットとしたリハビリテーション:失語症者とその重要な他者との対話における会話を変化させることができるのか?

 

目的:失語症の治療が,失語症のある患者を重要な他者との間の会話を変化させるかどうかを調べること.
研究デザイン:失語症患者を含む会話を目的とした少数の介入研究をレビューした.すべて一例報告.
研究の環境:研究に必要不可欠な評価は,通常は家での環境でなされるような,2人での会話を1回以上,録音か録画で記録していること.これらの研究の介入は,参加者の家や,その他の治療室のような環境で行われた.
参加者:レビューした研究のすべてで,参加者は失語のある患者と重要な他者でたいていは配偶者.
介入:すべての研究で治療では行動介入の形式で行い,相手と失語症患者の会話で,会話の解析評価によって明らかになった会話行動のフィードバックを与えることである.資料や記録,議論,または録画のフィードバックが用いられた.参加者が会話における失語症の影響とうまくつきあえるための示唆を与え,会話でこのような戦略を練習する機会を提供した.
主要評価項目:介入後,失語症患者と他者の会話を,介入前と同じやり方で1回以上記録した.介入でターゲットとした行動における変化に関連した会話の解析を行った.介入には,話題の開始や言語の誤りの修正がある.
結果:それぞれのレビューした研究は,失語症患者と重要な他者との間の会話が会話において変化し得るというエビデンスを提示した.いくつかの研究では,エビデンスはそもそも定性的で,介入後の会話行動で観察された変化の型である.研究によっては,変化の定性的な解析と定量的な解析を組み合わせて,より強いエビデンスを提供した.
結論:失語症の患者を含む会話をターゲットとした介入が変化を生じさせることができるというエビデンスがある.将来の研究では,一例報告以上の研究で,変化のより強固で定量的なエビデンスを出し,変化が維持されるというエビデンスを提供すべきである.

2015年2月24日火曜日

8. 右半球の脳損傷における認知ーコミュニケーション障害のリハビリテーション

右半球の脳損傷における認知ーコミュニケーション障害のリハビリテーション
























抄録.大脳左半球が言語に関連しているとされてきたが,右大脳半球もまた言語の処理やコミュニケーション能力の背景となる認知的演算処理に重大に寄与している.右半球損傷のある成人は典型的には失語にはならないが,しばしば社会機能にかなり影響を与えるようなコミュニケーション障害を生じる.成人における右半球損傷のコミュニケーションおよび認知機能の特徴と,よく見られるコミュニケーション障害の現時点での理論的説明を簡単に説明したあとで,この記事では,リハビリテーションの話題,アプローチ,エビデンス,必要性を議論する.

2015年2月23日月曜日

7. 失語症における健忘失語について,治療に対する項目の反応性を予測するような自発的な呼称における音韻でのキューの使用

失語症における健忘失語について,治療に対する項目の反応性を予測するような自発的な呼称における音韻でのキューの使用







































抄録
背景:健忘失語は単語の探索困難であり,失語症のもっとも多い症状の1つである.そのため,しばしば治療の対象となる.この研究の根本的な目的は,単語の心理言語的学的特性やその物品の呼称に必要な音韻のキューの長さから,個々の単語の呼称療法(naming therapy)への反応性を予測することが可能かどうかを初めて調べることである.キューの形式と呼称療法の関係は,失語症学においてキューが確立した研究・臨床の手法であり,呼称のパフォーマンスを調べるのみ一般的に用いられているため,とくに関心が持たれている.
方法:先行する3研究のデータを融合し,22人の慢性期失語症患者で,1080語に対するキューと治療のデータを得ることができた.目標単語298語における,セッション間のキューと呼称の正確さの変化を照合した.
結果:結果は,治療後(1週後と5週後)に正確に呼称した項目では,治療前の評価よりも必要な音韻のキューは有意に短いことを示した.imageability(イメージを喚起する能力)は,必要なキューのレベルの有意な予測因子であるが,一方で,収集した単語の時代(?word age)や単語の頻度は有意ではなかった.イメージしやすい単語は必要なキューが少なく,治療後に正確に呼称される確率が高かった.セッションごとの正確さの新しい分析では,最初の6〜10セッションの間に必要なキューが短くなったにしても,必要なキューの長さと最終的な治療後の正確さの関係は,治療期間を通じて存在した.
考察:この知見は,介入の臨床的な適応,とくに特定の目標語の正確な生成に重点的に取り組んでいるセラピストにとっての文脈において議論される.将来の関連した研究へのテーマも検討される.

2015年2月19日木曜日

6. メロディ・イントネーション療法:現在の論点と将来の可能性


メロディ・イントネーション療法:現在の論点と将来の可能性






















抄録
 この記事では,Melodic Intonation Therapy(MIT),つまり言語生成の改善のために,言語のメロディの側面(イントネーション,リズム,強勢)を用いた,構造化された失語症治療プログラムの最先端を記載する.MITは1970年代に開発され,現在でも世界中で用いられている.にもかかわらず,我々は,MITが臨床応用するのに必要不可欠な多くの疑問に未だに回答を得ていないと主張する.まず,MITの効果の研究のレビューでは,よくデザインされたグループ研究による証拠が未だにないことを示している.また,MITのどの側面が治療効果にもっとも寄与しているか,背景にある神経機序のうちのどれがが関与しているかが不明である.(適応となる症例の)候補と,この治療の最適な時期といった,臨床でのMITに関連した未解決の問題を示す2症例を紹介する.

2015年2月18日水曜日

1. はじめに 失語症のリハビリテーション:言語障害の治療の先へ

失語症のリハビリテーション:言語障害の治療の先へ
抄録
この付録では,言語障害の神経リハビリテーションに焦点を当てる.この領域には多くの研究があり,さまざまな分野から最新の貢献が成されている.それゆえ,神経学的な言語障害という破滅的な後遺症の治療が長期的な学際的な努力を必要とすることを示すのを目的としている.


3. 脳卒中後の言語回復における神経生物学:神経画像研究から知見






脳卒中後の言語回復における神経生物学:神経画像研究から知見




















抄録
 言語は,ヒトの脳において,大規模に,左半球優位で,側頭ー頭頂ー前頭葉のネットワークに組織化されている.脳の局所病変(例えば,脳梗塞)の後にはこのネットワークの組織化により,脳が病変部位を代償して,言語機能の適応した再組織化ができるようにする.ここで我々は,構造的・機能的神経画像の手法が,脳卒中後の言語機能の喪失と回復についての現在の理解に対して,どのように貢献したかをまとめる.これには,画像に基づいた予後予測とともに,脳卒中急性期から慢性期での,ボクセル単位の病変ー行動マッピング(voxelwise lesion-behavior mapping),再組織化の機序をマッピングするための機能画像がある.このレビューは,健常な脳における言語の組織化を述べた導入部分で補完される.

4.経頭蓋磁気刺激と失語症リハビリテーション

経頭蓋磁気刺激と失語症リハビリテーション
























抄録
 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,脳卒中慢性期の非流暢性失語で呼称を改善させることが2005年以来報告されてきた.1章で,我々は,左大脳半球の脳卒中慢性期の非流暢性失語の患者に対して,損傷のない右半球への低頻度の1HzのrTMSを適応することの理論的根拠をレビューし,このような患者に用いたTMSプロトコールが,介入後長期にわたって呼称を改善させたことを述べた.2章では,我々は慢性期の非流暢性失語で,TMSの治療の直後に言語療法(CI言語療法)を行った症例研究の結果を述べる.3章で,失語のある脳卒中患者で一連のTMS治療後の改善に関連した機序として可能性のあるものをいくつか考察する.

5.失語症リハビリテーションのためのCI療法アプローチにおける研究の最初の10年

失語症リハビリテーションのためのCI療法アプローチにおける研究の最初の10年

























抄録
 拘束による強制使用(constraint-induced; CI)の理論に基づいた脳卒中後の言語障害(失語症)を治療するアプローチは2001年に初めて紹介された.脳卒中患者における過去に上肢や歩行の再教育に適用されたCI原理は,基礎的な神経科学に由来している.このような方法には,障害されたモダリティを強制的に使用することや,高強度の治療プロトコルを用いてターゲットとなった機能を徐々に再構築する方法があり,行動に関連した(訓練法の?)文脈で適応される.CIに基づいたアプローチは,この10年間にかなり多くの神経リハの研究を生み出した.オリジナルのCI失語療法プロトコルは,慢性期の失語症(つまり,発症から6〜12ヶ月)において機能的なコミュニケーションを改善させるために調整され,さらに最近は急性期の脳卒中患者の言語障害の治療にも応用されるようになった.さらに,治療に反応した言語ネットワークの可塑性を失語症に適用したCI療法は,機能画像を用いて評価するモデルとしても用いられている.以下の記事では,我々は,失語症リハビリテーションのためのCIに基づいたアプローチにおける行動での(評価による)研究と機能画像の研究をレビューする.

2015年2月13日金曜日

神経症状としての言語障害におけるリハビリテーション

Rehabilitation of Neurological Language Disorder; Archives of Physical Medicine and rehabilitation
2012年のArchives of Physical Medicine and Rehabilitationの付録の神経疾患による言語障害の特集です.