まとめ
背景 脳卒中後の肺炎は死亡や機能予後不良と関連する.この研究では,急性脳卒中後の嚥下障害の患者における肺炎を減少させるための抗菌薬予防投与の有効性を評価した.
方法 我々は,イギリスの脳卒中ユニット48施設から募集した新規の脳卒中後の嚥下障害のある18歳以上の患者で,マスクしたエンドポイントを評価した前向き・多施設・クラスターランダム化・オープンラベル比較対照試験を行った.これらの施設はイギリスのNatioval Stroke Audit(国立脳卒中監査?)で認可され,対象となった施設とした.抗菌薬の禁忌のある患者,元々嚥下障害のあった患者,既知の感染症,14日以上の生存が予測されない患者は除外した.我々は,脳卒中ユニットを1:1に分け,脳卒中発症から48時間以内にユニットに入院した患者に関して,標準的脳卒中ユニットの治療に加え7日間の予防的抗菌薬を処方するユニットと標準的脳卒中ユニットの治療のみユニットに分けた.入院施設と専門家の治療へのアクセスによる最小限の階層化を行ったランダム化した.評価と解析を行う患者とスタッフは脳卒中ユニットの割当は盲検化された.主要評価項目は,脳卒中発症から14日以内の脳卒中後の肺炎で,治療企図解析において,診断基準に基いた階層的アルゴリズムと臨床医の診断で評価した.安全性も治療企図解析で評価した.この試験は新奇の参加者には公開しておらず,isrctn.comに登録した.
知見 2008年8月21日から2014年5月17日の間に,脳卒中ユニット48施設(ユニットに1224人の患者が入院)を2つの治療群に割り当てた.24施設が抗菌薬,24施設が標準的治療単独(コントロール)である.11ユニットで7人の患者がランダム化から14日目までに脱落し,治療解析には37施設1217人が残った(抗菌薬群615人,コントロール602人).予防的抗菌薬は,アルゴリズムで判定した脳卒中後の肺炎発生率には影響しなかった(抗菌薬群564人中71人(13%) 対 コントロール群524人中52人(10%),限界調整オッズ比1.12[95%信頼区間0.71〜2.08],p=0.489,級内相関係数0.06[95%信頼区間0.02〜0.17]).アルゴリズムで判定した脳卒中後の肺炎は129人(10%)の患者でデータがないために確認できなかった.さらに,我々は,臨床医の診断による脳卒中後の肺炎の群間の差をみとめなかった(615人中101人(16%) 対 602人中91人(15%),調整オッズ比1.01[95%信頼区間0.61-1.68],p=0.957,級内相関系数0.08[95%信頼区間0.03-0.21]).もっとも多かった有害事象は脳卒中後の肺炎とは無関係の感染症(主に尿路感染)で,抗菌薬群の方が少なかった(615人中22人(4%) 対 602人中45人(7%),オッズ比0.55[95%信頼区間0.32-0.92],p=0.02).Clostridium difficile陽性の下痢は抗菌薬群に2%(<1%),コントロール群に4人(<1%)みられ,MRSAのコロニー形成は抗菌薬群11人(2%),コントロール群14人(2%)にみられた.
解釈 脳卒中ユニットで治療中の脳卒中の嚥下障害の患者において脳卒中後肺炎の予防をための抗菌薬投与は推奨されない.