2015年10月11日日曜日

急性期軽症脳卒中および一過性脳虚血発作におけるクロピドグレルとアスピリンの併用 N Engl J Med 2013

急性期軽症脳卒中および一過性脳虚血発作におけるクロピドグレルとアスピリンの併用





















背景
脳卒中は,一過性脳虚血発作(TIA)や軽症脳梗塞から最初の数週の間によく生じる.クロピドグレルとアスピリンの併用はアスピリン単独よりも続発する脳卒中に対する予防効果が大きいかもしれない.

方法
中国の114センターで行われたランダム化・二重盲検化・プラセボ比較対照試験を,中国の114センターで,我々は軽症脳梗塞またはTIAの発症から24時間以内の患者5170人を,クロピドグレルとアスピリンの併用(クロピドグレルは初回300mgでその後75mg/日で90日間,アスピリンは75mg/日で最初の21日),またはアスピリン単独(75mg/日で90日)にランダムに振り分けた.すべたの患者が初日に医師が決めた量のアスピリン(75mg〜300mg)をオープンラベルで服用した.主要評価項目は,治療企図解析での観察期間90日以内の脳卒中(梗塞か出血)である.治療ごとの差を研究センターで変量効果としてCox比例ハザードモデルを用いて評価した.

結果
脳卒中はクロピドグレル−アスピリン群では8.2%に生じ,アスピリン群では11.7%に生じた(ハザード比0.68;95%信頼区間0.57〜0.81;P<0.001).中等度〜重度の出血がクロピドグレル−アスピリン群では7人(0.3%),アスピリン群では8人(0.3%)に生じ(P=0.73),各群の出血性梗塞の割合は0.3%だった.

結論
TIAまたは軽症脳卒中で症状出現から24時間以内に治療された患者では,クロピドグレルとアスピリンの併用は,アスピリン単独よりも,最初の90日間の脳卒中のリスクを軽減し,出血のリスクを増大させなかった.

 脳卒中ガイドラインから孫引き.

 最近,抗血小板剤の併用で転院してくる患者さんがちらほらいるので,確認のために読んでみた.

 この論文の結論,すなわちアスピリン単独よりも,クロピドグレルを発症から3週間だけ併用すると脳梗塞の予防効果が高いという効果には異論はないが,日本の医療事情にそのまま適応してよいかどうかは少々疑問が残る.

 まず,この研究の対象者は,1.発症から24時間以内,2.軽症脳梗塞またはハイリスク者のTIAという条件である.このような軽症患者はすぐに受診することは少ないので,対象となる患者はあまり多くないかもしれない.

次に,TIAはともかく症状のある脳梗塞であれば,日本では経口抗血小板剤ではなく,まず入院して点滴を始めるだろう.1週間なり2週間なり点滴での治療をして,それから抗血小板剤の併用を開始することに対するエビデンスには,この論文はなっていない.
 また,アスピリンを第一選択で使うことも少ないだろうから,クロピドグレル単独よりも併用が優れているかどうかはわからない.

 年齢の中央値が62〜63歳と,日本の脳梗塞患者よりはかなり若く,また,著者らが考察でも述べている通り,リスクファクターの管理は先進国に比べると十分ではない可能性がある.

 これらの理由で日本の脳梗塞診療の実情では,このエビデンスを適用できるケースは少々限定的かもしれない.

 余談ではあるが,この研究は中国で行われているのだが,研究の実施の手順が通常の論文に比べてかなりくどくどと説明されており,逆にいうとこのようにしっかり書かないと何やら怪しげなところが発生しかねないということなのかと勘ぐってしまう.

本文はこちらから入手できます.
補足の図表はこちら
全文訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字は区別して10文字目まで).
例:Ask not the Sparrow How the Eagle Soars. -> AntSHtES

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