2016年6月21日火曜日

脳卒中後の下肢痙縮の治療についてのA型incobotulinum toxin(NT 201-Xeomin)の安全性と有効性:前向きオープンラベル研究 Eur J Rehab Med 2013


脳卒中後の下肢痙縮の治療についてのA型incobotulinum toxin(NT 201-Xeomin)の安全性と有効性:前向きオープンラベル研究
























背景.近年,NT201,すなわち錯化タンパクを除去した新しいA型ボツリヌス毒素(BTX-A)がいくつかの運動障害の治療のために用いられるようになり,上肢の痙縮における安全性と有効性が示されている.
目的.錯化タンパクを除去したBTX-A NT 201の脳卒中後の下肢痙縮の治療について安全性を評価し,有効性を検証することである.評価には痙縮のグレード,足関節の他動的背屈運動,筋スパズム,さらに有効性と患者および医療者のの満足度である.
デザイン.前向きオープンラベル研究.
対象.発症から5ヶ月以上の脳卒中後下肢痙縮のある患者(71).
方法.BTX-A NT 201をヒラメ筋,内側・外側腓腹筋に最大180単位を筋注.各患者の評価は,ベースライン,治療後30日,90日にmoified ashworth Scale,Spasm Frequecy Scale,足関節他動背屈運動,患者と研究者の満足度を用いて評価した.
結果.BTX-A NT 201で治療された患者は,30日後の筋緊張と一日のスパズムが統計学的に有意に軽減し,足関節他動背屈が向上し,経過観察の90日後にも維持されていた.
結論.脳卒中後の下肢痙縮の治療のためのBTX-A NT 201は安全で有効であり,筋緊張とスパズムを軽減し,足関節他動背屈運動を改善した.

臨床リハビリテーションへの影響.これらの結果は,新しいタイプのBTX-Aの安全性と有効性を確認するものであり,免疫源性が低く,脳卒中後の下肢痙縮のリハ治療の改善に有用である.



 新しいボツリヌス毒素製剤を下肢痙縮に用いた研究である.
 
 ボツリヌス毒素製剤の弱点として,抗毒素抗体の発生により効果が減弱してしまうという現象が起きることがあるが,この問題点を低減できるかもしれない製剤ということになるだろう.

 結果は,筋緊張が軽減し,治療者も患者さんも満足した,というものであるが,考察では下肢の痙縮ではボツリヌス毒素製剤の有効性を示しにくいということが議論されている.
 これは確かにその通りで,歩行の自立度とか歩行速度では,改善する人もいないわけではないにしても,群間比較で有意差が出にくいという問題がある.症例を選べば,疼痛や歩容は改善するだろうという手応えはあるのだが,とくに歩容の変化は評価が難しい.
 これはボツリヌス毒素製剤に限らず,脳卒中後の歩行に対する介入試験に共通する難しさであって,数字になりにくい評価項目はエビデンスになりにくいというEBMも限界でもあると思う.

 いずれにしても,この製剤が従来の製剤よりも抗体の問題を解消しているかどうかは,さらに研究が必要だろう.脳卒中の痙縮治療では使用量が多くなるので,より安全に使える製剤の登場は好ましいことである.

文献はこちらで入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字は区別して8語目まで).
例:Happiness is nothing more than good health and a bad memory. -> Hisnmtgh

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