成人の脳卒中慢性期患者における痙縮に対するボツリヌス毒素注射後の理学療法
抄録
目的:この症例報告では,脳卒中患者における下肢の痙縮を対象とした理学療法の種類と期間およびA型ボツリヌス毒素治療を記載し,歩行とバランスの改善について報告する.A型ボツリヌス毒素の筋肉内注射と理学療法を併用とした局所の痙縮に対する治療はリハビリテーションの専門家によって推奨されている.しかしながら,A型ボツリヌス毒素によって生じた化学的脱神経後の機能的効果を最適化するような理学療法の介入の最適な種類と期間は確立されていない.方法:上下肢の痙縮の対してA型ボツリヌス毒素注射を受けた患者が対象となった.理学療法介入は,45分または60分のセッションを週2回,12週行い,ボバース神経発達療法アプローチに基いて行われた.さらに,活動主体の在宅プログラムを行った.結果:A型ボツリヌス毒素注射と理学療法の後,患者はバランスと歩行速度に臨床的に有意義な改善をみとめ,歩行がより自立できた.結論:この症例報告で,A型ボツリヌス毒素注射後の理学療法は,脳卒中慢性期の痙縮の患者で,A型ボツリヌス毒素注射単独では得られないような有意な機能的改善をもたらし得ることを示した.