成人の上肢痙縮に対するabobotulinumtoxin Aの臨床試験の系統的文献レビュー抄録
目的:この研究の目的は,上肢痙縮の成人患者におけるabobotulinumtoxinAの臨床試験での有効性,安全性,実地臨床での用量を解明することである.
方法:1991年1月から2013年1月まの英語で発表された成人の上肢痙縮の治療におけるabobotulinumtoxinAのランダム化比較対照試験と比較臨床研究を割り出すための系統的文献レビューを行った.医学文献データベース(PubMed,Cochrane Library,EMBASE)を検索し,合計295編の記録を確認した.これらのうち,上肢痙縮の治療のためのabobotulinumtoxinAを評価した主要な公表論文12編を最終的なデータ報告に含めた.
統合:上肢痙縮に対するabobotulinumtoxinAの用量の範囲では全体で500〜1500単位だった.上肢痙縮の研究の大半で,abobotulinumtoxinA対プラセボで統計学的に有意な効果(Ashoworth scoreに基づいた筋緊張軽減)を示した.modified Ashworth Scaleを用いた痙縮評価のほとんどで統計学的有意に達した.能動的運動や疼痛では,一貫性は低いが,統計学的に有意な効果が示された.abobotulinumtoxinAは個々の研究では全体として忍容性がよく,報告された有害事象のほとんどは治療とは無関係だった.abobotulinumtoxinAに関連するとみなされた有害事象は,倦怠感,疲労感,上肢の疼痛,皮膚の紅斑,インフルエンザ様症状,スパズムの増悪,筋力低下である.
結論:12のランダム化臨床研究から抽出したデータに基づいて,脳卒中による上肢痙縮を軽減するためのabobotulinumtoxinAの使用については,強いエビデンス(12研究中9編)があった.
上肢の痙縮治療のエビデンスは,これまでのところ,筋緊張が軽減することは一致しており,他動的可動域や他動的な動作は概ね改善するという報告が多いが,能動的な機能への効果については一貫していない.
上肢の能動的機能への効果は,症例を選んで,訓練を行えば,有望な治療法だと考えている.他のモダリティ,すなわち電気刺激や磁気刺激を併用するとさらに期待できる.しかしながら,その選択基準や訓練内容が課題といったところかもしれない.
もう一つの問題として,“実生活上,意味のある上肢機能”という問題もあるだろう.つまり,上肢機能は少しだけ動くようになってもあまり生活上は有効ではなく,まあまあ動く腕がさらに改善した時に大きな意味を持つと予測される.これはCI療法での知見から裏付けられる.
このように考えると,上肢の機能的改善を目的としたボツリヌス毒素療法のもっともよい適応は,ギリギリでCI療法の適応にならない,というレベルの症例ではないだろうか.
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日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字を区別して10文字目まで).
例:A Little Learning is a Dangerous Thing. -> ALLisDT
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