2016年12月27日火曜日

痙縮を軽減すると機能的効果に変換するか?探索的メタ解析 J Neurol Neurosurg Psychiatry 2004


痙縮を軽減すると機能的効果に変換するか?探索的メタ解析













抄録
背景:脳卒中後には障害された上肢の痙縮と機能喪失がよくみられる.ボツリヌス毒素は痙縮を軽減するために用いられるけれども,その機能的効果を示すのは容易ではない.この文献では,上肢の痙縮軽減と上肢の機能改善の間の関係を調べるための探索的メタ解析を報告する.
方法:ボツリヌス毒素筋注のランダム化比較対照試験2編の脳卒中患者の個々のデータを集めた.modified Ashworth Scale(肘,手関節,手指)を用いて,"合成痙縮指数(Composite Spasticity Index)”を計算した.Barthel ADL Indexの上肢の領域(更衣,整容,食事)のデータと,3つの主観的評価(腕を袖に通す,手のひらを洗う,爪を切る)を合計して,"合成機能指数(Composite Functional Index)”とした.スコアの変化と最大変化の時間も計算した.
結果:47人の患者において合成指数は最大変化はともに同時期に生じた.26人の患者では,痙縮の改善は機能改善に先行し,18人では逆だった.痙縮の最大変化と上肢機能の最大変化の間には明らかな相関があった(ρ=-0.2822,p=0.0008,n=137).ボツリヌス毒素(Dysport)500単位と1000単位で治療された患者における痙縮の変化と上肢の変化の間には明確な相関があった(ρ=-0.5679,p=0.0090,n=22;ρ=-0.4430,p=0.0018,n=47)が,しかし,プラセボと1500単位で治療された群にはなかった.
結論:目的とされたメタ解析のアプローチを用いて,上肢の痙縮を軽減させることが,上肢機能の有意な改善を関連することを示すことが可能になった.

2016年12月26日月曜日

脳卒中または非進行性脳病変後の痙縮に対する早期介入としてのボツリヌス毒素:メタ解析 J Neurol Sci 2016


脳卒中または非進行性脳病変後の痙縮に対する早期介入としてのボツリヌス毒素:メタ解析













抄録
 痙縮は脳卒中や重度の脳損傷後によく生じる障害で機能制限を来たす.そして,能力低下や疼痛を引き起こすこともある.神経リハビリテーションと並んで,A型ボツリヌス毒素は痙縮の第一選択に推奨される治療であり,現在のところ,試験の大多数が発症から6ヶ月以上の患者にA型ボツリヌス毒素を用いた報告である.このメタ解析は,脳卒中後の痙縮に対する早期にA型ボツリヌス毒素注射の効果を評価することを目的としている.効果としては,緊張亢進,能力低下,機能,痙縮による疼痛である.文献検索により,脳卒中発症から3ヶ月以内のA型ボツリヌス毒素の効果を報告した研究が6編得られた.上肢が3編,下肢が3編である.6編の研究はすべてリハを同時に行うことを許可していた.緊張亢進は6研究全てで比較され,注射から4から12週の間,注射した関節のほとんどで有意な治療効果を示した(P=0.002).しかしながら,4週目での能力低下における改善や,4週および20−24週での機能改善においては有意な効果がみられなかった.A型ボツリヌス毒素注射から4週目に痙縮に関連した疼痛も軽減する傾向を示した.このような結果から,脳卒中発症から3ヶ月以内の緊張亢進軽減におけるA型ボツリヌス毒素の有効性が示され,神経リハ訓練を同時に行うことの重要性が強調された.


2016年12月2日金曜日

脳卒中早期の痙縮におけるA型ボツリヌス毒素療法:より幅広い治療手段の提供 Int J Neurorehablitation 2016






脳卒中早期の痙縮におけるA型ボツリヌス毒素療法:より幅広い治療手段の提供






抄録
 痙縮の治療のためにA型ボツリヌス毒素を使用することは何年にもわたって確立されており,最近では脳卒中慢性期の患者における第一選択の治療と考えられている.その有望な効果をもって,ボツリヌス毒素は今や種々の神経筋の障害や生化学的な障害,拘縮予防,ジストニア,連合反応,疼痛を治療する目的で,脳卒中後の痙縮を治療できるような早期の神経リハビリテーションと併用される.個別的な理学療法単独と対比した,脳卒中の早期リハビリテーションの補助療法としてのボツリヌス毒素の効果は,リハビリテーション治療におけるもう1つの包括的治療手段を示唆するための,このレビューにおける良い例である.