2016年12月26日月曜日

脳卒中または非進行性脳病変後の痙縮に対する早期介入としてのボツリヌス毒素:メタ解析 J Neurol Sci 2016


脳卒中または非進行性脳病変後の痙縮に対する早期介入としてのボツリヌス毒素:メタ解析













抄録
 痙縮は脳卒中や重度の脳損傷後によく生じる障害で機能制限を来たす.そして,能力低下や疼痛を引き起こすこともある.神経リハビリテーションと並んで,A型ボツリヌス毒素は痙縮の第一選択に推奨される治療であり,現在のところ,試験の大多数が発症から6ヶ月以上の患者にA型ボツリヌス毒素を用いた報告である.このメタ解析は,脳卒中後の痙縮に対する早期にA型ボツリヌス毒素注射の効果を評価することを目的としている.効果としては,緊張亢進,能力低下,機能,痙縮による疼痛である.文献検索により,脳卒中発症から3ヶ月以内のA型ボツリヌス毒素の効果を報告した研究が6編得られた.上肢が3編,下肢が3編である.6編の研究はすべてリハを同時に行うことを許可していた.緊張亢進は6研究全てで比較され,注射から4から12週の間,注射した関節のほとんどで有意な治療効果を示した(P=0.002).しかしながら,4週目での能力低下における改善や,4週および20−24週での機能改善においては有意な効果がみられなかった.A型ボツリヌス毒素注射から4週目に痙縮に関連した疼痛も軽減する傾向を示した.このような結果から,脳卒中発症から3ヶ月以内の緊張亢進軽減におけるA型ボツリヌス毒素の有効性が示され,神経リハ訓練を同時に行うことの重要性が強調された.


 脳卒中(または頭部外傷・低酸素脳症など)の発症から3ヶ月以内の早期にボツリヌス毒素治療を行った研究のメタ解析である.
 結論としては,筋緊張亢進には有効性を示せたが,能動的機能や疼痛については結果は一貫していなかった.

 何度か書いてきたが,能動的機能を目標とした痙縮治療に関しては,対象の選択が極めて重要だろう.つまり,筋緊張軽減をエンドポイントにするなら,かなり麻痺の重い症例を対象としたほうが結果が出やすいが,能動的機能に関しては,とくに上肢ではある程度動かせるレベルでないと,運動機能の改善が得られにくいと思われる.
 つまり,筋過活動症候群の中でも,痙縮ではなく,痙性共収縮や連合反応をターゲットとすべきなのだが,これを数値化して評価できないので対象基準の設定が難しいと考えられる.

 また,この論文でも,ボツリヌス毒素治療とリハ訓練の併用の重要性が強調されている.筋過活動をボツリヌス毒素治療で軽減して,リハ訓練の効果を最大化するというのは理論的にはまちがっていないと確信しているので,ブレイクスルーが待たれるところである.

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