2017年2月19日日曜日

脳卒中後の機能回復の促進する筋力増強訓練:エビデンスに基づいたレビュー  Top Stroke Rehabil 2008


脳卒中後の機能回復の促進する筋力増強訓練:エビデンスに基づいたレビュー










背景:脳卒中後には患者は重大な障害を受ける.しかしながら,筋力低下は主たる共通の病態である.歴史的に,筋力増強訓練を含む高度に努力性の活動は痙縮を増悪させるとの懸念から,筋力増強訓練や高強度の抵抗訓練は神経リハビリテーションから排除されてきた.現在の研究はこの前提を克服する.方法エビデンスに基づいたレビューを行って,高強度抵抗訓練が脳卒中患者において痙縮を増悪させることなく筋力低下を改善させるかどうか,抵抗訓練が従来のリハ介入プラグラムと比べて機能予後改善に有効かどうかを判定した.十分なデータがある場合は,コントロールのイベント発生率(CER; control event rate),治療群のイベント発生率(EER; experimental event rate),絶対リスク軽減率(ARR: absolute risk reduction),治療必要症例数(NNT; number needed to treat),相対利益増加率(RBI; relative benefit increase),絶対利益増加率(ABI; absolute benefit increase),相対危険度(RR; relative risk)といった治療効果を計算した.結果11研究が基準を満たした.エビデンスレベルは可(fair)から強(strong)(3B〜1B)だった.結論長期的な追跡調査のデータには限界があるものの,抵抗訓練が,痙縮を増悪させることなく,筋力増強,歩行速度向上,機能予後向上をもたらし,QOLを改善するというエビデンスがあった.キーワード:cerebrovascular accident(脳血管疾患),rehabilitation(リハビリテーション),resistance training(抵抗訓練),strength(筋力), stroke(脳卒中)




 脳卒中後の訓練としての筋力訓練をまとめたレビューである.

 抄録でも述べられているように,筋力訓練は痙縮/筋緊張を増悪させるという考えは,リハの現場では広く信じられているが,個人的には長らく懐疑的に思っていた.
 痙縮の病態生理から考えて,中枢からの神経支配が強化されれば,緊張はむしろ低下するはずだからである.実際,過去に勤務した病院でCI療法に取り組んだときは,むしろ緊張は低下した印象を受けた,というセラピストもいた.ちなみに,CI療法で筋緊張を評価した研究では,私の知る限り,筋緊張が悪化したという報告はない.

 このレビューでは,脳卒中後の筋力訓練は,痙縮を悪化させることなく,筋力を向上させ,主に歩行速度などの機能/能力を改善させるとしている.このように常識と信じられている見解の根拠を探っていくと,意外とあいまいだったり,ずいぶんと古い(現在のリハ環境下にそぐわないような)論文が元になっていることも往々にして見られる.

 筋力訓練は,その気になれば,簡単な器具でも可能だし,自主訓練として行うこともできる.筋力のような基礎的な訓練を自主訓練として行い,歩行や上肢機能,ADL動作のような課題志向型の訓練を設備のある病院や通所リハ施設で行う,といった使い分けで,リハ効果をより高めることもできるのではないか.

原文はここから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して,記号は除いて,10文字目まで)
例:It Always seems Impossible until it’s Done. -> IAsIuiD

1 件のコメント:

  1. ご紹介ありがとうございます。
    自分自身のリハビリに照らして学ぶことが出来ます。

    通院リハがなくなり、通所リハも変化しています。
    自分の抱える症状を理解し、現在行っているリハが私にあっているのかどうか、関係者と相談するときの参考にさせて頂きます。  感謝を込めて。

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