2017年3月16日木曜日

くも膜下出血患者の低ナトリウム血症に対するハイドロコルチゾンのランダム化比較試験 Stroke 2007

くも膜下出血患者の低ナトリウム血症に対するハイドロコルチゾンのランダム化比較試験












背景と目的−低ナトリウム血症は,くも膜下出血(SAH)後に頻出する.これはナトリウム利尿に原因があり,それによって浸透圧利尿を生じ,血液量が減少し,症候性脳血管攣縮を生じる.脳血管攣縮を予防するための容量負荷療法は,この状態では効率がよくない.我々は,ハイドロコルチゾンの有効性を評価するためのランダム化比較試験を行った.ハイドロコルチゾンは腎臓でのナトリウム保持を促進する.
方法−SAH患者71人を,手術後にランダムにプラセボ(36人)またはハイドロコルチゾン1200mg/日(35人)10日間とその後の漸減での治療に割り当てた.両群とも容量負荷療法を行った.主要エンドポイントは低ナトリウム血症の予防とした.
結果−ハイドロコルチゾンは過度のナトリウム排泄を予防し(P=0.04),多尿を予防した(P=0.04).ハイドロコルチゾンは14日間の間,目標の血清ナトリウム値を維持し(P<0.001),より少量のナトリウムと液体で維持プロトコルを達成できた(P=0.007).脳血管攣縮は,プラセボ群では9人(25%).ハイドロコルチゾン群では5人(14%)に生じた.2群間で全体的な予後には有意差はなかった.

結論−ハイドロコルチゾンは,過度のナトリウム利尿を克服し,低ナトリウム血症を予防した.予後には差はなかったが,ハイドロコルチゾンは効率的な容量負荷療法を補助する.

 くも膜下出血後の低ナトリウム血症についてのRCTである.
 発症後2週間の脳血管攣縮との関係で,ハイドロコルチゾンでナトリウムの尿中排泄を抑制することの臨床的効果を検証している.
 ナトリウム排泄自体は抑制され,治療中の血清ナトリウム濃度の管理も容易だったという効果はあったものの,神経学的な予後は改善せず,むしろ悪かったという結果であった.くも膜下出血の予後は,脳血管攣縮だけで決まるわけではないので,これをもってこの治療に意味がないとするのは早計だろう.

 個人的には,このような減少が急性期だけでなく,慢性期にも発生するのかどうかに興味がある.とくに高齢者ではナトリウム濃度を維持するために,NaClの補充が必要になる場合が少なくないが,勉強不足で,このような病態については最近まで知らなかった.もう少し調べて,また紹介してみたい.

本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字は区別して10文字目まで).
例:The Man Who has No Imagination has No Wings. -> TMWhNIhNW

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