神経疾患による嚥下障害における上部食道括約筋機能不全に対するボツリヌス毒素(レビュー)
抄録
背景
上部食道括約筋は気道の入り口に非常に近いために,上部食道括約筋の適切な開大が安全で効率的な嚥下には必要不可欠である.神経疾患の患者の多くが,進行性であれ非進行性であれ,上部食道括約筋機能不全を呈している.これによる患者にとっての症状は食べ物の飲み込みにくさで,それに伴う窒息や誤嚥を生じる(真声帯の高さを超えて,気管に物体が侵入すること).臨床的合併症には,誤嚥性肺炎,体重減少,脱水,栄養障害がある.経管栄養がしばしば適応となるが,死亡率上昇に関連する.QOLに影響を与えることもよくある.上部食道括約筋機能不全と嚥下を改善させることを目的とした幅広い介入がある.このような介入には,代償戦略,リハビリテーションテクニック,薬物介入,手術がある.この20年にわたり,上部食道括約筋機能不全に対する介入として,ボツリヌス毒素が普及してきており,それによって嚥下機能が改善させる上で有効であることを示唆するエビデンスがある程度出てきている.その有効性を調べた研究が数多くあるにも関わらず,この介入が,神経疾患に関連した上部食道括約筋機能不全のある患者の嚥下の改善において有効であるかどうかについて,コンセンサスはない.
目的
非進行性および進行性神経疾患に関連した嚥下困難(嚥下障害)の患者における上部食道括約筋機能不全を改善させることを目的としたボツリヌス毒素の仕様の有効性と安全性を確立すること.
検索方法
我々は,公表された試験についての以下の電子データベースで検索した:Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL);Ovid MEDLINE(1950-2013);EMBASE(1980-2103);AMED(Allied and Complementary Medicine)(1941-2013);CINAHL(Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature)(1937-2013).我々は,主要な臨床試験登録システムも検索した:CCT(http://www.comtrolled-trials.com);Clinical Trials(http://www.clinicaltrials.gov):Chinese Clinical Trial Register(www.chictr.org);ACTR(http://www.actr.org.au/).我々は,関連した試験をさらに見つけ出すために,全ての関連のありそうな研究の引用リストを調査した.我々は,Dysphagia Research SocietyとEuropean Society of Swallowinf Disordersの両者から,会議録の公表された抄録を手作業で検索した.Digestive Disease Week(Gastroenterologyで発表)も手作業で検索した.さらに,我々は,論文の抄録について,ProQuest Dissertations & Thesesを検索した.
選択基準
ランダム化比較対照試験のみを検索した.
データ収集と解析
JR,AM,MC,MWによって独立した検索が行われた.レビューの著者2人(JRとMW)は,文献検索から見つかったタイトル,抄録,キーワードを独立して調査した.
主な結果
ランダム化比較試験は抽出されなかった.29研究が除外され.主に試験デザインに基づいたものだった.
著者らの結論
上部食道括約筋機能不全と神経疾患のある患者に対する介入としてのボツリヌス毒素の有効性と安全性について結論に達することはできなかった.実地診療への情報となるような十分なエビデンスはない.今後の研究への方向性を提供する.