2017年10月29日日曜日

誤嚥性肺炎の予測因子:嚥下障害はどれだけ重要なのか? Dysphagia 1998

誤嚥性肺炎の予測因子:嚥下障害はどれだけ重要なのか?










抄録.誤嚥性肺炎は,入院中の高齢者や介護施設入所中の高齢者における疾病や死亡の主要な原因である.肺炎に対する複数の危険因子が判明しているが,嚥下障害を含む異なるいくつかのカテゴリーにおいて因子の相対危険度を有効に比較した研究はない.この前方視的帰結研究では,ミシガン州アン・アーバーの退役軍人局医療センターの外来患者のクリニック,入院患者の急性期治療病棟,介護施設ケアセンターから189人の高齢者の被験者が対象となった.彼らは口腔咽頭期および食道期の嚥下と栄養摂取状態,機能的状態,医学的状態,口腔/歯牙の状態を判定するような種々の評価を受けた.被験者は,証明された誤嚥性肺炎の評価項目について,4年まで追跡された.二変量解析から,肺炎と有意に関連しているとされるいくつかの因子が見つかった.それから,ロジスティック回帰分析で誤嚥性肺炎の有意な予測因子を突き止めた.1つ以上の被験者グループにおいて,もっともよい予測因子は,食事に要介助,口腔ケアが要介助,う歯の数,経管栄養,複数の医学的診断,薬剤の数,喫煙だった.それぞれの有意な予測因子が果たすであろう役割は誤嚥性肺炎の発症機序との関連において説明される.嚥下障害は誤嚥性肺炎の重要なリスクであると結論づけられたが,一般に,他の危険因子も並存していなければ,肺炎を生じさせるには十分ではなかった.食事以外における要介護状態は,支配的な危険因子であることがわかり,経管栄養患者を除いたロジスティック回帰モデルではオッズ比19.98だった.

 誤嚥性肺炎の予測因子の研究である.少し古い研究であるが,なかなか示唆に富んでいる.誤嚥性肺炎の予測だけでなく,予防戦略についてはかなり深い考察が書かれていて,今風の論文スタイルではないが,読み応えがある.

 この論文の結論は,食事に要介助であることがもっとも強力な肺炎の予測因子だと言うことである.さらに言うと,嚥下障害だけで誤嚥性肺炎は生じるわけではなく,もっと全身的な病態や機能レベルを評価すべきだとしている.
 嚥下障害だけに介入して,嚥下造影などの検査上,誤嚥がなくても肺炎を繰り返すことは臨床ではよくあるし,実際のところ,経管栄養にしても肺炎は予防できないことが多い.

 単に,誤嚥を減らせばよいという短絡的な戦略ではなく,口腔ケアや薬剤といった介入可能な要因に目を向ける必要があるだろう.

論文本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字は区別して10文字目まで).
例:Be the Change You Wish to See in Other People. -> BtCYWtSiOP

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