2018年10月8日月曜日

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験 PM R 2018

脳卒中後の下肢遠位の痙縮の治療のためのonabotulinumtoxin A:ランダム化試験













抄録
背景:脳卒中後の下肢遠位の痙縮は移動能力を阻害し,日常生活動作を制限し,介護者の時間をより多く必要とするようになる.
目的:脳卒中後の下肢痙縮のある成人におけるonabotulinumtoxin Aの有効性,安全性,効果の持続を評価すること.
条件:北米,ヨーロッパ,ロシア,英国,韓国にまたがる60の研究センター.
患者:足関節底屈筋に脳卒中後の下肢痙縮(modified Ashworth Scale[mAS]≧3)があり,研究参加前の直近の脳卒中から3ヶ月以上の成人(18-65歳).
介入:オープンラベル相の間,患者は12週間隔で,onabotulinumtoxin A(≦400単位)またはプラセボを投与された.治療は足関節底屈筋に行われた(onabotulinumtoxin A 300単位を足関節底屈筋へ;≦100単位を任意の下肢筋).
主要評価項目:二重盲検化主要エンドポイントは,ベースラインからのmASの変化(4週と6週の平均スコア)である.二次評価項目は,医師の評価でのClinical Impression of Change(CGI),任意の筋のベースラインからのmASの変化.Goal Attainment Scale(GAS),疼痛のスケールである.
結果:参加した468人の患者のうち,450人(90%)が二重盲検相を完了し,413人(88%)が研究を完了した.二重盲検相の間,onabotulinumtoxin AでみとめられたmASの小さな改善(onabotuli- numtoxin A, -0.8;プラセボ, -0.6,P=0.01)が,3期目のオープンラベル期間の6週の間の追加治療で,さらに増強された(onabotulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, -1.2;プラセボ/onabotulinumtoxin A, -1.4).二重盲検相でみとめられたCGIの小さな改善(onabotulinumtoxin A, 0.9;プラセボ, 0.7, P=0.01)も,3期目のオープンラベル期間の6週の間に増強された.(ona- botulinumtoxin A/onabotulinumtoxin A, 1.6;プラセボ/onabotulinumtoxin A, 1.6).医師と患者が評価したGASはそれぞれ後続の治療で改善した.新たな安全性の信号は現れなかった.
結論:onabotulinumtoxin Aは足関節のmAS,CGI,GASスコアをプラセボと比べて有意に改善させた;改善は,脳卒中後の下肢痙縮の患者では1年に渡るonabotulinumtoxin Aの反復治療で維持され,増大した.

エビデンスレベル:Ⅰ
 ボツリヌス毒素製剤の比較的大規模な臨床研究である.
 ランダム化での二重盲検相とオープンラベルでのフォローアップ期間で構成されており,onabotulinumtoxinAがプラセボよりも筋緊張を緩和したという結果であるが,さらに,施注する筋について術者の裁量で選択できるようにしたオープンラベル相ではより大きな効果が示されたということである.

 これは興味深い結果である.ボツリヌス毒素療法は,総量に制限があるだけで,投与部位と投与量は完全に施注する医師に委ねられている.
 治験やよくデザインされたランダム化研究で決まった投与量でのデザインが多いが,実診療ではどこにどれだけ投与するかは,患者さんと医師との相談で決めた治療目標に応じて,最終的には医師のさじ加減で決まるわけである.言い換えれば,それこそがボツリヌス毒素療法に関わる医師の腕の見せ所でもある.
 この研究は,そのようなさじ加減が,一定の投与量よりも良好な結果が得られることを示唆している.この辺りをもう少し追求してほしいものだとは思うが,神経症候学だけでなく,運動学やICF的観点から治療目標と投与の戦略を決めていくという術者の判断能力を担保するのが難しいところかもしれない.

本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:A Wise Man Will Make More Opportunities Than He Finds. -> AWMWMMOTHF


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