2019年2月8日金曜日

高齢患者における重症脳動脈瘤性くも膜下出血後の生存率と帰結 Stroke2018

高齢患者における重症脳動脈瘤性くも膜下出血後の生存率と帰結
背景と目的−重症脳動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)を生じた高齢患者に最大限の治療を提供すべきかどうかは議論の余地がある.aSAH後の6〜12ヶ月後におけるこのサブグループの通常の評価項目はおろか生存率も不明である.この研究の目的は,患者のこのサブグループに対して,治療についての臨床家の意思決定に役立つような生存率と帰結のデータを提供することである.
方法−我々は,2005年から2017年に当院に入院したaSAHを生じた重症(WFNS分類ⅣとⅤ)高齢患者(年齢60歳以上)についてのBernese SAHデータベースの後方視的分析を行った.患者を3つの年齢グループ(60-69歳,70-79歳,80-90歳)に分けた.生存率分析は平均生存率と死亡に対するハザード比を推定するために行った.二元対数回帰を用いて,予後良好(modified Rankin Scaleスコア0-3)と予後不良(modified Rankin Scaleスコア4-6)についてのオッズ比を推定した.
結果−年齢が高齢であることは,aSAH後の死亡のリスク増大と関連した.年齢が1年上がるごとにハザード比は6%増大し(P<0.001;ハザード比1.06;95%信頼区間1.03-1.09),10年ごとに76%増大した(P<0.001;ハザード比1.76;95%信頼区間1.35-2.29).平均生存期間は56.3±8ヶ月(60-69歳の患者),31.6±7.6ヶ月(70-79歳の患者),7.6±5.8ヶ月(80-90歳の患者)だった.aSAH後の6-12ヶ月後の予後不良は高齢と強く相関した.オッズ比は年齢1歳ごとに11%(P<0.001;オッズ比1.11;95%信頼区間1.05-1.18),10歳ごとに192%(P<0.001;オッズ比2.92;95%信頼区間1.63-5.26)増大した.

結論−重症aSAHの高齢患者では,死亡と予後不良のリスクは年齢が高齢であると顕著に増大した.初期の死亡率が高いにも関わらず,治療hは79歳までは予後良好と理にかなった割合となった.aSAH後6-12ヶ月後に中等度から重度の障害の患者は少数だった.平均生存期間と予後良好の割合は.80歳以上の患者では顕著に減少した.
 重症くも膜下出血の予後は超高齢者では不良であるとする報告である.
 ある程度,想像がつく結論ではあるが,80-90歳では平均生存期間でも8ヶ月に満たず,歩行自立となった症例は1人もいなかったという結果である.

 ただし,この研究では,80-90歳で脳動脈瘤に対する治療を行われた症例が20%しかいなかったことには注意する必要がある.脳動脈瘤の再破裂で亡くなったような症例の中には,根治術をすることで機能回復が得られた症例が含まれていた可能性は否定はできない.
 とはいえ,再破裂までの間に回復の兆候があれば,亜急性期にでもそのような治療方針になっていたであろうから,やはり超高齢者の重症くも膜下出血は生命予後・機能予後ともに不良であると言わざるを得ない.

 最近では,血管内治療が普及してきたこともあり,超高齢者の重症くも膜下出血に対して,コイル塞栓術を行った症例の回復期リハ病棟への申し込みも珍しくなくなっているが,率直な印象はこの報告と同じである.
 急性期に治療方針を決定する時点で,このようなデータも知っておくと,参考になるのではないだろうか.

日本語訳はこちらから入手できます(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字を繋げてください.大文字と小文字を区別して記号は除いて10文字目まで).
例:Just Trust Yourself, Then You Will Know How to Live. ->JTYTYWKHtL

0 件のコメント:

コメントを投稿