運動によって生じる免疫系の反応:末梢臓器および中枢臓器における抗炎症状態 Biochim Biophys Acta Mol Basis 2020
抄録
身体的運動の実践が,神経保護を促進し,伝染性・非伝染性慢性疾患を生じるリスクを減少させる機序を理解するために,この10年間,幅広い分子経路が研究されてきた.1回のセッションの身体的運動は細胞のホメオスターシスに対して負荷になるかもしれないが,身体的運動セッションの反復は,免疫監視および免疫能を改善するだろう.さらに,中枢神経系からの免疫細胞は,抗炎症性の表現型を獲得し,中枢機能を年齢による認知機能低下から保護する.このレビューでは,一般的な慢性的臨床条件・実験条件の予防や治療に対する運動による抗炎症効果を強調する.身体運動の抗炎症効果をフォローできる高感度のバイオマーカーとして,生体体液におけるプテリンの使用も示唆されている.
一般論として適度な運動が健康に有益であるということは認識されていると思われるが,それを生化学的な分析でまとめている.
運動が有効とされる対象には,肥満,2型糖尿病,動脈硬化,心血管疾患といった一般に知られるような疾患から,癌,喘息,認知症,神経変性疾患も有効性が示されつつあるようだ.
中等度の強度の運動を定期的に行うことで,サイトカインのバランスが抗炎症状態に傾き,また,神経保護作用や疼痛緩和にも効果があるとされる.この機序には,IL-6などのサイトカインやネオプテリン,活性酸素の除去が関与していることが,生化学的な分析から解明されてきている.
運動が認知機能にまで効果があるというのは興味深いが,それが行動療法としてだけでなく.抗炎症作用によって神経変性を抑制できるというのは非常に示唆に富んでいる.
慢性炎症も同様で,単なる機能訓練としてだけでなく,疼痛自体の緩和も目的としても運動療法は推奨されるべきだろう.
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日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字は区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:Experience without learning is better than learning without experience. -> Ewlibtlwe
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