2022年10月19日水曜日

脳卒中誘発免疫抑制と嚥下障害は独立して脳卒中関連肺炎を予測する−PREDICT研究 J Cereb Blood Flow Metab 2017

 

脳卒中誘発免疫抑制と嚥下障害は独立して脳卒中関連肺炎を予測する−PREDICT研究












抄録

脳卒中関連肺炎は脳卒中後の頻発する合併症で予後不良と関連する.嚥下障害は,脳卒中関連肺炎に関する既知のリスクファクターであるが,脳卒中が脳卒中関連肺炎に罹患しやすくなるような免疫抑制状態を生じさせることを示唆するエビデンスが積み重なってきている.我々は,炎症のバイオマーカー(インターロイキン-6)や感染のバイオマーカー(リポ多糖結合蛋白)とともに,単球HLA-DRの発現を免疫抑制のマーカーとして調査することによって,脳卒中誘発免疫抑制症候群が嚥下障害とは独立して脳卒中関連肺炎と関連することを確かめることを目的とした.これはドイツとスペインの11の研究施設での前方視的・多施設研究であり,脳卒中急性期患者486人が対象となった.脳卒中関連肺炎,嚥下障害,バイオマーカーの毎日のスクリーニングを行った.脳卒中関連肺炎の頻度は5.2%だった.多変量回帰分析で嚥下障害と単球HLA-DRの低下は脳卒中関連肺炎の独立した予測因子だった.肺炎の割合は単球HLA-DRが高い四分位(≧21,876mAb/cell)では0.9%,低い四分位(≦12,369mAb/cell)では8.5%の範囲だった.嚥下障害があると,肺炎の割合はそれぞれ5.9%,18.8%に上昇した.嚥下障害がなく単球HLA-DR発現が正常な患者は,脳卒中関連肺炎のリスクがなかった.我々は,嚥下障害と脳卒中誘発免疫抑制症候群が,脳卒中関連肺炎の独立した危険因子であることを示した.免疫抑制と嚥下障害のスクリーニングは,脳卒中関連肺炎のハイリスク患者を判定するのに有用かもしれない.

 脳卒中誘発免疫抑制と肺炎の関係を調査した研究である.

 脳卒中免疫抑制は,脳卒中急性期に脳の炎症を抑えるための全身反応としての免疫抑制であるが,そのために易感染性を生じるのではないかという概念である.


 本研究では,免疫機能(mHLA-DR),炎症(IL-6),細菌感染(LBP)のバイオマーカーおよび嚥下障害と肺炎の関連性を検証し,さらに各種バイオマーカーの経時変化を調査している.


 嚥下障害の有無でmHLA-DRレベルには有意差があり,mHLA-DRが正常な患者では肺炎の発生がなく,多変量解析では嚥下障害とmHLA-DRが独立した危険因子だったという結果である.

 嚥下障害を生じる患者は脳卒中自体が重症であり,脳卒中誘発免疫抑制が生じやすいということはあるが,多変量解析でもmHLA-DRが肺炎の独立した危険因子であるということは興味深い結果である.


 リハビリの立場から考えると,亜急性期にはこの免疫抑制状態は解消されていると推定されるが,ポイントは急性期に肺炎を生じたからといって亜急性期以降にも肺炎のハイリスクとは限らないということになるだろうか.実際,臨床場面では,どうして急性期に肺炎を生じたのわからないような軽度の嚥下障害の患者さんも少なからず出くわすのは,このような病態が背景にある可能性がある.


本文はこちらから参照できます.

日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字は区別して記号は除いて10文字目まで).

例:It is a long lane that has no turning. -> Tiallthnt

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