失語症:理論と診療における現時点でのコンセプト
抄録
神経画像技術における最近の進歩により,脳−行動の関係に関する新たな見解が発展し,言語の機能的神経解剖の理解が深まった.言語の機能的神経解剖の最新のコンセプトから,言語理解と表出における豊富で複雑なモデルが考案された.このようなモデルにdual stream networks(二重経路ネットワーク)がある.失語は言語の基礎となる認知処理の破綻とみなされるようになってきた.失語症のリハビリテーションではエビデンスに基づいた部分と個人中心のアプローチを組み合わせる.皮質の興奮性を変化させる皮質脳刺激を与える手法のような新しい技術に,経頭蓋反復磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激があるが,研究が始まったばかりである.このレビューでは言語への神経科学的なアプローチの基礎における歴史的な経緯を考察する.我々は言語と認知処理の神経基板の新しく作られた理論的モデルを試す.この神経基板は失語症の背景となっており,より洗練された微妙な言語の概念に関与している.失語症リハの現時点でのコンセプトをレビューし,このレビューには,行動療法の補助となるような皮質刺激の有望な役割や神経可塑性の原理や機能予後を最適化するようなエビデンスベース/個人中心の診療に基づいた治療アプローチの変化を含んでいる.脳の機能解剖に基づいた失語症の最近のモデルと,訓練手法についてのレビュー.
以前から指摘されていることではあるが,古典的な失語症分類,つまりBroca失語やWernicke失語などは言語機能に由来した分類ではなく,脳の血管支配とその病変(梗塞や出血)によって生じる言語障害のパターンに基づいた症候群であると考えられるようになっている.
それに変わって現在提唱されているのがdual stream model(二重経路モデルと訳しましたが,正式な日本語訳をご存知の方がいらっしゃいましたら,ご教授ください)であり,今後はこのモデルをベースとした分類が一般になってくるかもしれない.
治療では,障害に対応した課題よりも,患者さんや家族を巻き込んだリハ訓練の重要性が指摘されている.つまり.ネーミングの障害のある患者さんにネーミングの課題を繰り返してもコミュニケーションになかなか般化しない,という問題があり,それを解消するコンセプトとして,参加を重視した介入が重要だということである.
言語の最終目標はコミュニケーションであり,その目標を治療者と患者さん・家族が共有した上で,必要に応じて課題特異的な訓練を組み合わせるのがよいのだと思うが,これには治療者側にも発想の転換が必要だし,センスも要求される.
いずれにしても,失語症のリハにもパラダイムシフトが訪れようとしていることは間違いない.新しい標準的な介入を積極的に現場に導入していくために働きかけるのもリハ医の役割である.
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例:Everybody has Talent, But Ability Takes Hard Work. -> EhTBATHW
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