2015年8月23日日曜日

脳卒中急性期の嚥下障害に対する行動介入:ランダム化比較対照試験 Lancet Neurol 2006


脳卒中急性期の嚥下障害に対する行動介入:ランダム化比較対照試験
まとめ
背景 脳卒中後の嚥下障害はありふれているが,この障害をどのような管理すべきかについて信頼できるエビデンスがほとんどない.この研究では,低強度と高強度の標準的な行動介入および通常治療を比較した.

方法 脳卒中急性期の入院患者で臨床的に嚥下障害を呈する患者306人をランダムに通常治療(102人)(主治医が処方);低強度標準的行動介入(102人)(嚥下代償戦略と食形態処方で週3回,1ヶ月);高強度標準的行動介入(102人)(少なくとも1日1回,1ヶ月)に振り分けた.主要評価項目は6ヶ月時点での通常食以外の食事が不要での生存である.解析は治療企図解析で行った.

知見 6ヶ月間の解析までに死亡60人,脱落3人.6ヶ月後の通常食以外の食事が不要の生存は,通常治療にランダムに割り当てられた患者では56%(57/102),標準的な嚥下治療に割り当てた患者では67%(136/204)だった(相対リスク1.19,95%信頼区間0.98〜1.45).標準的嚥下治療は死亡率減少(相対リスク0.80,95%信頼区間0.5〜1.3),施設入所(0.69,0.4〜1.1),胸部感染(0.56,0.4=0.8),死亡および施設入所の合計(0.73,0.55〜0.97)と有意ではないが傾向があった.6ヶ月後に嚥下機能が回復した患者の割合は有意に高かった(1.41,1.03〜1.94).通常治療および低強度治療群と比較すると,高強度治療群は6ヶ月後に通常食に戻った患者の割合が有意に高く(p=0.04),嚥下機能が回復した割合が高かった(p=0.02).
解釈 これらのデータから,脳卒中の嚥下障害患者で早期の嚥下の行動介入の標準的プログラムに割り当てた患者はより良好な結果となる傾向が一貫して示された.このような介入には,能動的な治療的アプローチと食形態の調整がある. 






 脳卒中急性期の嚥下障害に対する行動介入のRCT.この種の研究としては対象数が多く,研究デザインが緻密で質の高い研究である.
 行動介入(behavioral intervention)とは耳慣れない用語であるが,ここでは努力嚥下や喉頭上嚥下などの嚥下法のことである.リハ領域では患者さんの意図的な動作・行動の指導や習慣付けといった介入はよく行われるが,総称して行動介入と呼ばれる(ようだ).

 このような介入は,とくに嚥下機能や普通食への回復には効果がありそうであるが,統計学的有意には至った項目は一部に留まった.これは脳卒中急性期の嚥下障害が自然回復もかなりみられることにも影響しているだろう.また,中には自分で飲みやすい食べ方を自己流で身につけている方もときにみられる.嚥下には運動学習の側面が確かにあると感じる場面である.

 この研究は規模や質のわりに統計学的な説得力には少し欠けており,少し残念ではあるが,それでも脳卒中後早期の嚥下リハ介入の有用性を強く支持する結果といえる.この知見が再確認され,願わくばもう少し具体的な介入内容や介入フローが解明されると嚥下リハのクオリティは格段に向上するだろう.


原文はこちらか入手できます.
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例:He who moves not forward, goes backward. -> Hwmnfgb

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