2015年7月16日木曜日

基準フレームの異なる半側空間無視の発症と神経学的基板についての研究 Arch Phys Med Rehabil 2012

基準フレームの異なる半側空間無視の発症と神経学的基板についての研究


























目的:基準フレームの異なる左半側空間無視の割合と神経系の関連因子を検討すること.
デザイン:ケースシリーズでの右半球損傷患者からデータを抽出した.
環境:病院のリハビリテーション科と神経内科.
参加者:右半球損傷患者(110人).
介入:なし
主要評価項目:基準フレームの異なる左半側空間無視の頻度を調べ,脳の責任病変を示し,解析した.
結果:条件が悪くて当初予定していた無視のテストを完了できなかった患者もいた.55人中8人は分類のためのテストを完了できなかった.無視の患者47人中30人(63.83%)は対象中心無視と自分中心無視の両方を示したが,一方,17人は自分中心無視のみを示した.下前頭回,中心前回,中心後回,上側頭回,中側頭回,島,および周辺の白質における病変が,無視群ではコントロール群よりも多かった.自分中心無視群と比べて,対象中心無視と自分中心無視の両方を示す患者では,右上側頭回,中側頭回,レンズ核,および周辺の白質の損傷が多かった.
結論:右脳損傷後の左無視の患者の半数以上が自分中心無視と対象中心無視の両方を有していた.左半側空間無視と関連があったのは,右下前頭回,中心前回,中心後回,上側頭回,中側頭回,島,周辺の白質だった.対象中心性の左無視は,右上側頭回,中側頭回,レンズ核と関連があった.




 半側空間無視のうち,自分中心無視と対象中心無視の割合と責任病巣に関する研究.

 半側空間無視では,自分中心無視がまず必発で,対象中心無視はあったりなかったり,ということで,これは臨床的な実感に近い.空間無視だけでなく,消去現象や身体失認,病識の欠如といった身体的な無視症状も含めて分類してもよいような気がするのだが,それが一般的な見解なのかどうかは勉強不足でよくわからない.

 責任病変については,従来の見解とそれほど大きな違いはないが,注意しなければならないのは,このような研究は主に脳卒中の症例を対象にしているということである.つまり,Wernicke失語やBroca失語でも指摘されているように,無視も血管支配領域に応じて症状が出現する症候群である可能性がある.実際,個人的には,血管障害以外の病態,つまり腫瘍や外傷などでは典型的な無視の症例にはお目にかかった記憶がない.このような研究の知見の解釈に少し注意が必要かもしれない.

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例:A Goal Without a Plan is Just a Wish. -> AGWaPiJaW

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