2017年9月26日火曜日

呼吸器感染における口腔細菌の役割 J Periodontal 1999

呼吸器感染における口腔細菌の役割

























歯周病のような口腔の疾患といくつかの呼吸器の疾患の間の関連性が指摘されてきた.例えば,最近のエビデンスでは,呼吸器感染のプロセスにおける口腔の中心的役割が示唆されている.口腔の歯周病原菌は肺に誤嚥されて誤嚥性肺炎の原因になり得る.歯も呼吸器病原体のコロニー形成と続発する院内肺炎の温床として働くかもしれない.典型的な呼吸器病原体は,病院のICU患者や介護施設入所者の歯のプラークでコロニー形成していることが示されてきた.一旦,口の中で発生すると,このような病原体は肺の中への誤嚥され,感染を生じるかもしれない.そのほかの疫学研究で,口腔衛生不良もしくは歯周骨の欠損と,慢性閉塞性肺疾患の間の関連性が記載された.呼吸器感染の発症機序における口腔細菌の潜在的な役割を説明するようないくつかのメカニズムが提唱されている:1.感染を引きこすような口腔病原体(つまり,Porphyromonas gingivalisジンジバリス菌,Actinobacillus actinomysetemcomitansアクチノミセス・アクチノミセテムコミタンス,など)の誤嚥;2.唾液中の歯周病関連酵素が粘膜表面を変化させ,呼吸器病原体の付着とコロニー形成を促進する;3.歯周病関連酵素が病原細菌上の唾液ペリクルを破壊し,粘膜表面からのクリアランスを遅らせる;4.歯周組織に由来するサイトカインが,気道上皮を変性させ,呼吸器病原体による感染を促進する.

2017年9月18日月曜日

虚弱高齢者における口腔衛生ケアと誤嚥性肺炎:系統的文献レビュー Gerodontology 2011

 
虚弱高齢者における口腔衛生ケアと誤嚥性肺炎:系統的文献レビュー













目的:虚弱高齢者における口腔衛生ケアの介入と誤嚥性肺炎の発生率への効果について,系統的に文献をレビューする.
背景:口腔衛生ケアは,虚弱高齢者における誤嚥性肺炎の予防において重要な役割を果たしていると思われる.
方法:候補となる介入研究についてPubmed,Web of Science,Cochrane Library,EMBASE,CINAHLを検索した.入院または施設入所の高齢者で,機械換気に依存していない者に関する公表文献だけが候補となった.方法論的質については,2人の筆者が独立して公表文献を評価した.
結果:5編の公表文献が対象となり,レビューされた.2研究で口腔衛生ケアの改善が誤嚥性肺炎発生のリスクと誤嚥性肺炎での直接の死亡のリスクを低下させることが示された.残りの3研究で,適切な口腔衛生ケアが潜在的な呼吸器病原体の量を減らすことを示し,嚥下反射と咳反射の感受性を改善させることによる誤嚥性肺炎のリスクの低下を示唆した.
結論:今回の系統的文献レビューの結果によれば,食後の歯磨きや1日1回の義歯の清掃からなる口腔衛生ケア,および週1回の専門家による口腔衛生ケアは,誤嚥性肺炎の発生リスクを低減できるような最良の介入だと思われる.