虚弱高齢者における口腔衛生ケアと誤嚥性肺炎:系統的文献レビュー
目的:虚弱高齢者における口腔衛生ケアの介入と誤嚥性肺炎の発生率への効果について,系統的に文献をレビューする.
背景:口腔衛生ケアは,虚弱高齢者における誤嚥性肺炎の予防において重要な役割を果たしていると思われる.
方法:候補となる介入研究についてPubmed,Web of Science,Cochrane Library,EMBASE,CINAHLを検索した.入院または施設入所の高齢者で,機械換気に依存していない者に関する公表文献だけが候補となった.方法論的質については,2人の筆者が独立して公表文献を評価した.
結果:5編の公表文献が対象となり,レビューされた.2研究で口腔衛生ケアの改善が誤嚥性肺炎発生のリスクと誤嚥性肺炎での直接の死亡のリスクを低下させることが示された.残りの3研究で,適切な口腔衛生ケアが潜在的な呼吸器病原体の量を減らすことを示し,嚥下反射と咳反射の感受性を改善させることによる誤嚥性肺炎のリスクの低下を示唆した.
結論:今回の系統的文献レビューの結果によれば,食後の歯磨きや1日1回の義歯の清掃からなる口腔衛生ケア,および週1回の専門家による口腔衛生ケアは,誤嚥性肺炎の発生リスクを低減できるような最良の介入だと思われる.
ある程度,予想できることだが,質の高い研究はあまりないようだ.質の高い研究とは,ある介入をした群としない群の比較で,それ以外の要素が同等であるというのが条件になるが,「口腔ケアをしない」というコントロールには倫理上の問題もあるし,参加者の同意を取るのも難しいのではないか.対象となった5編のうち,日本の施設から4研究が選ばれているのは,なかなか健闘していると言える.
このレビューでは,評価項目のばらつきなどから,effect sizeやメタ解析のオッズ比の計算まではできていないが,誤嚥性肺炎の予防における口腔ケアの有用性自体は,もはや疑いないだろう.次の課題,実際の効果がどの程度あるのか,どのような口腔ケアが必要なのかという点だろう.
口腔ケアは基本的にマンパワーが必要であり,有用であることはわかっていても,実施して徹底するのは労力も費用も必要である.必要最小限の介入で最大限の効果を得るために何をすべきなのかが解明されるような研究が期待される.
日本語訳はこちらからダウンロードできます(パスワードは文献のタイトルの頭文字を繋げてください.大文字と小文字を区別して10文字目まで).
例:Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever. -> LaiywtdtLa
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