2019年8月15日木曜日

脳卒中後の四肢痙縮に対するA型ボツリヌス毒素の有効性と安全性:ランダム化比較対照試験のメタ解析 Biomed Res Int 2019

脳卒中後の四肢痙縮に対するA型ボツリヌス毒素の有効性と安全性:ランダム化比較対照試験のメタ解析
背景.脳卒中後の四肢痙縮のある患者におけるA型ボツリヌス毒素の筋内投与の有効性については,報告されたデータが一致していない.参照可能なランダム化比較対照試験でのこのメタ解析は,脳卒中後の上肢と下肢の痙縮のある成人患者におけるA型ボツリヌス毒素の有効性と安全性を決定することを目的としている.方法.候補となるランダム化比較対照試験を選択するために,PubMed,Embase,Cochrane libararyで,2018年12月に電子検索を行なった.標準化平均差と相対危険度に対応する95%信頼区間とともにまとめて,それぞれ有効性と安全性の帰結を評価するために採用した.結果.合計2,793人の患者を対象とする17編のランダム化比較対照試験が対象基準を満たし,それぞれ16編が上肢痙縮の症例で,9編が下肢痙縮の症例を対象としていた.上肢痙縮については,A型ボツリヌス毒素療法は,筋緊張のレベル(標準化平均差=-0.76; 95%信頼区間-0.97〜-0.55; P<0.001),医師の全体的評価(標準化平均差= 0.51; 95%信頼区間0.35〜0.67; P<0.001),障害評価スケール(標準化平均差=-0.30; 95%信頼区間-0.40〜-0.20; P<0.001)有意に改善し,能動的上肢機能(標準化平均差=0.49; 95%信頼区間-0.08〜1.07; P=0.093)と有害事象(相対危険度=1.18; 95%信頼区間0.72〜1.93; P=0.509)には有意差はなかった.下肢痙縮については,A型ボツリヌス毒素療法は,Fugl-Meyerスコアがより高値(標準化平均差=5.09; 95%信頼区間2.16〜8.01; P=0.001)だったが,筋緊張(標準化平均差=-0.12; 95%信頼区間-0.83〜0.59; P=0.736),歩行速度(標準化平均差=0.06; 95%信頼区間-0.02〜0.15; P=0.116),有害事象(相対危険度=1.01; 95%信頼区間0.71〜1.45; P=0.949)には有意差はなかった.結論.A型ボツリヌス毒素は,上肢痙縮においては筋緊張,医師の全体的評価,障害評価スケールを改善し,下肢痙縮においてはFugl- Meyerスコアを改善する.
 上肢・下肢痙縮に対するボツリヌス毒素療法のレビューである.
 上肢では筋緊張,医師による全体的評価,障害評価,下肢ではFugl-Meyerスコアがプラセボより有意に改善した.
 一方,上肢機能は施注から4週後および6週後には有意に良好だが,下肢の筋緊張,歩行速度は有意差がなかったという結論である.

 上肢機能はボツリヌス毒素療法の効果があるうちはある程度の効果があるという予測できる結果であるが,下肢では歩行速度はともかく,筋緊張に有意差がないという,やや意外な結論であった.サブグループ解析では,逆に筋緊張が亢進したという結果が出るなら,対象となった研究に少々問題があったかもしれない.

 このレビューでは,リハの有無は検証されておらず,その辺りも含めた解析を期待したい.

本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:Luck is a Matter of Preparation Meeting Opportunity. -> LiaMoPMO

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