エビデンスの基づいた認知リハビリテーション:2009年から2014年の文献の系統的レビュー
抄録
目的:頭部外傷または脳卒中の患者の認知リハビリテーションについての臨床文献の最新版の系統的レビューを行い,研究デザインの強さに基づいて研究を分類し,コンセンサスの得られるようなエビデンスに基づいた臨床的推奨を導き出すこと.
データソース:オンラインのPubMed検索と紙面の雑誌の検索で,2009年から2014年に公表された250件の記事についての引用が見つかった.
研究の選択:最初のスクリーニング後,186件の記事が対象として選択された.50篇が最初に除外された(神経学的な診断のない患者,小児の患者,神経学的診断の他の患者を対象とした文献24篇,認知介入以外10篇,記述的プロトコルまたは研究13篇,治療研究以外1篇).完全なレビューのあとで15篇の記事が除外された(他の神経学的診断1篇,治療研究以外2篇,定性的研究1篇,記述的文献4篇,二次解析7篇).121研究が完全にレビューされた.
データ抽出:文献はthe Cognitive Rehabilitation Task Forceのメンバーによって,研究デザインと質についての特異的な対象基準に応じてレビューされ,クラスⅠ,クラスⅡ,クラスⅢのエビデンスを提供するものとして分類された.文献は,可能性のある6カテゴリー(注意,視覚と無視,言語とコミュニケーションスキル,記憶,遂行機能,包括的–統合的介入についての介入に基づく)の1つに割り当てられた.
データ統合:121研究のうち,クラスⅠと評価された研究が41篇,クラスⅠaが3篇,クラスⅡが14篇,クラスⅢが63篇だった.推奨は,過去のレビューで適用された決定規則に基づいて,エビデンスの相対的な強さからthe Cognitive Rehabilitation Task Forceのコンセンサスによって導かれた.
結論:the Cognitive Rehabilitation Task Forceは,今では,491篇の文献(クラスⅠまたはⅠaが109篇,クラスⅡが68篇,クラスⅢが314篇)を評価し,認知リハビリテーションのエビデンスに基づいた診療のための29の推奨を決定した(標準的治療9,診療ガイドライン9,診療の意見11).エビデンスは以下の標準的治療を支持している;(1)頭部外傷または脳卒中後の注意障害,(2)右大脳半球の脳卒中後の無視に対する視覚探索,(3)軽度の記名力障害に対する代償戦略,(4)左大脳半球の脳卒中後の言語障害,(5)頭部外傷後の社会的コミュニケーション障害,(6)遂行機能における障害に対するメタ認知戦略訓練,(7)頭部外傷または脳卒中後の認知障害と機能的障害を軽減するための包括的–全体的神経心理学的リハビリテーション.認知リハビリテーションに関するレビューの更新である.
認知機能に対するリハビリテーションを,注意,視空間,記憶,コミュニケーション,遂行機能,包括的リハビリテーションに分けて,それぞれに関する推奨を作成している.
全体として印象に残ったのは.注意・遂行機能におけるメタ認知戦略である.国内のリハ環境ではあまり試みられていない方法だと思われるが,一方で,これらの認知機能障害に対しては有効な代替手段が少ないのが実情である.うまく取り入れて行きたいものである.
もう一点は,コンピュータを使った訓練である.技術の進歩に比べて,医学的証明が追いついていないのが実情のように感じる.あるコンピュータ訓練が開発されても,開発費+臨床研究にお金がかかる上,効果を実証するのに2年程度はかかるだろう.コンピュータ技術の開発のスピード感からはかなり遅れていると言わざるを得ない.
これでは商業ベースに乗っていかないのではないかという懸念はなきにしもあらずで,メーカー側も悩みの種ではないだろうか.
日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの頭文字をつなげてください.大文字・小文字を区別して記号は除いて10文字目まで).
例:Better Late Than Never. -> BLTN
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