脊髄損傷後の起立性低血圧の治療の系統的レビュー
抄録
目的–脊髄損傷者における起立性低血圧の治療についてのエビデンスを系統的にレビューすること
データソース–起立性低血圧に対して現在行われている治療の有効性を評価している文献を見つけるために,原著論文とレビュー記事,さらに診療ガイドラインのキーワード文献検索を,1950年から2008年7月までの間でMediline,CINAHL,EMBASE,PsycInfo,手作業の検索を用いて行った.
研究の選択–脊髄損傷者における起立性低血圧の治療のための薬理学的介入および非薬理的介入を評価した,ランダム化比較対照試験,前方視的コホート研究,症例対照研究,前後比較研究,症例報告を対象とした.
データ抽出–2人の独立したレビューワーが,それぞれの研究の質を評価し,ランダム化比較試験についてはPEDroスコア.その他の研究に対してはDowns and Blackスケールを用いた.研究の結果を一覧にして,エビデンスレベルを割り当てた.
データ統合–対象基準を満たした薬理学的研究8篇と非薬理的研究21篇が見つかった.26研究(薬理学的介入と非薬理学的介入の両方を含む研究もあった)のうち,ランダム化比較試験は1篇だけ見つかり(レベル2のエビデンスとなる質の低いランダム化比較試験),この研究では,ミドドリンが脊髄損傷後の起立性低血圧の治療に有効であるとされた.機能的電気刺激は,その有用性を支持する,ある程度のエビデンス(レベル2)のある非薬理学的介入のみの介入の1つだった.
結論–一般集団における起立性低血圧の治療については,幅広い物理的方法や薬理学的方法が推奨されているけれども,脊髄損傷における使用についてはほとんど評価されていない.とくに,非脊髄損傷の患者集団において有効であることが示されている他の多くの薬理学的介入が評価されていない.
起立性低血圧は,脊髄損傷急性期には有名だが,亜急性期〜慢性期にも珍しくない症状であり,リハやADLを阻害する要因となるが,質の高い研究は少なく,十分なエビデンスはあるとは言い難い.
これは,脊髄損傷(とくに外傷性)の数自体が少なく,大規模研究になりにくいことと,多くの脊髄損傷の研究が運動機能に着目しており,起立性低血圧や膀胱直腸障害といった自律神経機能に関心が向けられていないことが要因かもしれない.
このレビューでは,比較的強いエビデンスのある治療として,(国内ではあまり使われていないようにも思うが)ミドドリンと,非薬物療法として機能的電気刺激が挙げられている.
また,近年,再生医療が脊髄損傷の領域では徐々に臨床応用されているようだが,ぜひ自律神経機能にも効果を示していただきたい.
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例:Even If You Are a Minority of One, the Truth is the Truth. -> EIYAaMoOtT
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