2020年4月27日月曜日

まだ動く:脊髄損傷後の随意的コントロールの回復 Prog Neurobiol 2018





まだ動く:脊髄損傷後の随意的コントロールの回復


















抄録
臨床前/臨床での神経生理学的研究や神経リハビリテーションの研究から,脊髄損傷後の慢性的運動麻痺の患者における随意的な感覚–運動機能の予想以上の驚くべきレベルの回復が生まれてきた.この回復の重要な要因は,脊髄と脊髄より上位のネットワークの大部分が活動依存性の可塑性である.この鍵となる因子は,電気や薬物の介入でのこれらのネットワークのニューロモデュレーションによって誘発される.このレビューは,電気での調節を説明となるかもしれないシステムレベルに関するいくつかの生理学的機序と,反復訓練がどうやって随意的運動コントロールの回復を促通するかを扱う.とくに以下の仮説を立証する:(1)脊髄病変の大部分では,病変部位に大きな意味を持つような量と種類のニューロンが生存しているが,活動電位を発生できない.そのため,電気的に反応しない;(2)病変領域のこのような神経ネットワークは,ニューロモデュレーションを受けて,電気的な能力の変換状態になり得る;(3)このような2つの因子によって,脊髄と脳の神経ネットワークの活動依存性の広範囲の再組織化のための可能性が生じる;(4)脊髄固有のネットワークは,損傷後のこのような活動依存性の再組織化を誘発する上で極めて重要な役割を演じている.脊髄ネットワークへのリアルタイムの固有覚入力は,与えられた機能的課題を遂行するために必要な運動プールの協調性のレベルにおいて,主要な役割を果たす脊髄ネットワークのテンプレートを提供する.複数の体節の感覚運動ネットワークを,反復訓練で生じるように課題特異的な感覚入力の動態に繰り返し暴露することは,脊髄と脊髄より上位の連結を機能的に再形成し,それゆえ,損傷から数年後であっても,複雑な課題を再び遂行できるようにする.

 脊髄損傷後の運動機能の回復に関する機序と臨床についての記事である.
 なかなか難解な部分が多いのだが,印象的なのは,脊髄レベルの運動制御が単純なシナプス連結で神経信号が伝導するのではなく,ネットワークで制御されており,それによってパターンされた運動が可能になったり,いわゆる“全か無か”の法則に従った伝達ではなく,リニアな出力の制御が可能であるという点である.

 もう1つは,損傷レベル以下の脊髄には電気的に活動しにくいニューロンがあり,このようなニューロンを電気的に活性化しやすい状態を作ることで,再び活動を始めるということである.このような変化は電気刺激でも生じることができるが,刺激直後から生じることから,再組織化とは異なる機序と推測されている.

 最近の再生医療でも,投与翌日から機能改善が生じることがあるようだが,そのような短期間にシナプスの連結の強化が生じるとは考えにくく,上記のような機序が背景にあると考えると辻褄が合う.

本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字・小文字は区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:If you wa t the rainbow, You gotta put up with the rain. -> IywtrYgpuw

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