2021年11月29日月曜日

一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞の患者における二次予防のためのサポートプログラム(INSPiRE-TMS):オープンラベル・ランダム化比較対照試験 Lancet Neurol 2020

 











一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞の患者における二次予防のためのサポートプログラム(INSPiRE-TMS):オープンラベル・ランダム化比較対照試験














サマリー

背景 直近の脳卒中や一過性脳虚血発作の患者は,さらなる血管イベントに関してハイリスクであり,永続的な障害や死亡をもたらすかもしれない.二次予防のためのエビデンスに基づいた治療は利用できるが,多くの患者が推奨された行動変容を達成できず,長期における薬剤の予防目標に達することがない.我々は,二次予防の強化のためのサポートプログラムが,再発性血管イベントの頻度を減少させることができるかどうかを調査すること目的とした.

方法 INSPiRE-TMSは,ドイツの急性脳卒中ユニットのある病院とデンマークの脳卒中センター7施設で行われたオープンラベル・多施設・国際ランダム化比較対照試験である.研究参加から2週間以内の障害のない脳卒中または一過性脳虚血発作で,1つ以上の修正可能なリスクファクター(つまり,高血圧症,糖尿病,心房細動,喫煙)の患者を対象とした.コンピュータでのランダム化を用いて,患者を従来の治療にサポートプログラムの追加と従来治療のみに割り付けた(1:1).サポートプログラムは二次予防の目標へのアドヒアランスを改善させることを目的とした2年間にわたるフィードバックとモチベーションを高めるインタビューの戦略と8回の外来受診を用いた.主要評価項目は脳卒中,急性冠症候群,血管死の合計であり,治療企図解析(ランダム化を受け,研究参加を中止せず,少なくとも1回の追跡評価を受けた患者全員)で評価した.評価項目は,time-to-first-event解析を用いて毎年の追跡で評価した.すべての原因での死亡を安全性の評価項目としてモニターした.この試験はClinicalTrials.govに登録された.

知見 2011年8月22日から2017年10月30日まで,我々は2098人の患者を参加させた.そのうち,1048人(50.0%)がランダムにサポートプログラム群に割り付けられ,1050人(50.0%)が従来治療群に割り付けられた.サポートプログラム群の1030人(98.3%),従来治療群の1042人(99.2%)が治療企図解析で対象となった.解析された参加者の平均年齢は67.4歳で700人(34%)が女性だった.平均追跡期間3.6年のあと,大血管イベントの主要評価項目はサポートプログラム群の1030人のうち163人(15.8%)に生じ,従来治療群の1042人のうち175人(16.8%)に生じた(オッズ比0.92;95%信頼区間0.75-1.14).大血管イベントの合計の数はサポートプログラム群では209人,従来治療群では 225人(発生率の比0.93,95%信頼区間0.77-1.12;p=0.46)で,すべての原因の死亡はサポートプログラム群では73人(7.1%),従来治療群では85人(8.2%)に生じた(ハザード比0.85;95%信頼区間0.62-1.17).サポートプログラム群では,二次予防の目標に達した患者が多かった(例えば,1年間の追跡で血圧52%対42%[p<0.001],LDLで62%対54%[p=0.0010],身体活動で33%対19%[p<0.0001],禁煙で51%対34%[p=0.0010]).

解釈 障害のない脳卒中または一過性脳虚血発作の患者における強化した二次予防プログラムの提供は,二次予防の目標達成を改善したが,大血管イベントの発生率の有意な低下には結びつかなかった.退院後にすぐに二次予防の目標を達成しない患者の選択で,サポートプログラムの効果を調査するような将来の研究が必要である.
 脳梗塞再発予防のための生活習慣や服薬アドヒアランスを改善するためのサポートプログラムの効果についての研究である.
 
 血圧やLDL,禁煙,運動習慣といった指標では一定の効果が確認されたが,大血管イベントの再発抑制においては有意差がなかった.また,2年以上経過すると効果が小さくなるといった結果も示されており,行動変容を維持することの難しさも示唆されている.

 この種の介入は,医療者側も患者側も大きな労力が必要であり,効果的な介入の開発が期待される.

日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して10文字目まで).
例:The meaning of Justice walks around. -> Tmojwa

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