2017年6月10日土曜日

気管内挿管後の嚥下障害の発生率 系統的レビュー CHEST2010


気管内挿管後の嚥下障害の発生率
系統的レビュー
















入院患者は,長期に及んだ気管内挿管後にしばしば口腔咽頭の嚥下障害のリスクが増大する.報告されている発生率は高いかもしれないが,幅が大きい.我々は,以下を判定するための系統的レビューを行った:(1)気管内挿管後の嚥下障害の発生率,(2)嚥下障害と挿管期間の関連性,(3)嚥下障害と関連する患者の特徴.14の電子データベースを検索し,キーワードには,dysphagia(嚥下障害)deglutition disorders(嚥下の障害)intubation(挿管)を用いて,雑誌と灰色文献(註:一般に出版されない政府・企業・学術期間の文書)にそって検索した.2人の研究者が,互いに盲検化されて,我々の対象基準にしたがって,すべての段階で,文献を選択し,レビューした.対象基準は以下の通り:挿管された成人患者で嚥下障害の臨床評価をされた患者.除外基準はケースシリーズ(10人未満),嚥下障害の検出が患者の報告,気管切開の患者,食道の嚥下障害,嚥下障害の原因となりうる疾患.批判的評価にはCochraneのバイアスのリスク評価と推奨・判定・開発・測定ツールのグレーディングを用いた.全部で1489編の引用が見つかり,そのうち288編の記事をレビューして,14編が対象基準に合致した.研究は,デザイン,嚥下評価,研究の評価法において不均一だった;それゆえ,我々は,知見を記述的に記載した.嚥下障害の頻度は3%から62%で,挿管期間の平均は124.8時間から346.6時間だった.嚥下障害がもっとも高頻度(62%,56%,51%)だったのは,長い挿管後に生じており,すべての診断サブタイプの患者を含んでいた.すべての研究がデザインとバイアスのリスクの限界があった.エビデンスの全体的な質はとても低かった.このレビューでは,挿管後の嚥下障害について参照可能なエビデンスは乏しく,したがって,質の高い前向き研究が必要なことが確認された.




 気管内挿管と嚥下障害の関連についてのレビュー.
 挿管自体が嚥下機能に悪影響を及ぼすのか,あるいは挿管に至るような原疾患や全身状態の影響なのかは現在のところ明らかではない.嚥下障害の発生率は文献によって,幅があり,それが対象の患者群や評価の時期,評価法の感度といった要因によるものであることがうかがえる.
 現時点では,長期の挿管はリスクが高いという,ある意味,想像通りのことが確かめられた,という以上のことは言えないようだ.

 原疾患が嚥下障害を生じうるものであれば,当然,経口摂取に当たってスクリーニングをするだろうから,問題はそうでない症例で,何を基準にスクリーニングにかけるべきなのか,あるいは嚥下機能のどの部分に注意すべきか,ということだろう.
 因子分析に耐えるような質の高いデータの集積が望まれるところではあるが,実際のところ,なかなか難しいかもしれない.現実的には,一定以上の挿管期間があった場合は全例スクリーニングを行うべきと言える.

日本語訳はこちらから入手できます(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字は区別して10文字目まで).
例:Prevention is Better Than Cure. -> PiBTC

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