2017年7月15日土曜日

神経疾患による嚥下障害に対する上部食道括約筋の弛緩と咽頭運動へのリハビリ的バルーン嚥下訓練の有効性 Ann Rehabil Med 2015

 
神経疾患による嚥下障害に対する上部食道括約筋の弛緩と咽頭運動へのリハビリ的バルーン嚥下訓練の有効性















目的 輪状咽頭筋機能不全のある重症嚥下障害の患者における嚥下障害の重症度と上部食道括約筋の開大の関連性を調査し,リハビリ的バルーン嚥下療法後の機能的改善に対するバルーンサイズの効果を評価すること.
方法 我々は,2012年1月から12月に,Myongji病院リハビリテーション科で実施した嚥下造影検査を再評価した.嚥下造影で輪状咽頭筋機能不全と診断された全被験者が,さらに,硫酸バリウム懸濁液で満たした16Fr Foleyカテーテルを3〜5分嚥下した.我々は,患者が食道に嚥下できる最大径を測定し,その後に,2回目の嚥下造影を行なった.それから,我々は,バルーン径とバルーン治療後の機能的改善の相互関係を示すために統計学的手法を適用した.
結果 嚥下造影を受けた283人の入院患者のうち,21人の被験者が輪状咽頭筋機能不全と診断された.カテーテルバルーンを嚥下することによって評価された上部食道括約筋の開大の程度は,咽頭通過時間と嚥下後の咽頭残留と負の線形相関があった.3〜5分のビデオ透視でガイドした反復バルーン嚥下療法は,咽頭通過時間と咽頭残留に関して有意に改善させた(それぞれp<0.005とp<0.001).バルーン療法後のバルーンサイズと咽頭残留の減少の間には相関がみとめられた(Pearson相関係数R=-0.729, p<0.001)が,一方,バルーンサイズと咽頭通過時間の改善の間には明らかな関連性はなかった(R=-0.078, p=0.738).
結論 輪状咽頭筋機能不全の患者が嚥下できるバルーンの最大径は,上部食道括約筋の最大の開大を示しているのかもしれない.反復バルーン嚥下療法は,誤嚥のリスクのない安全な方法であり,咽頭運動と上部食道括約筋の弛緩の両方を改善できる有効な手法かもしれない.

 咽頭輪状筋に対するバルーン嚥下+拡張の効果が,バルーンの大きさと相関するかどうかを調べた研究である.

 バルーンの大きさと咽頭残留は相関し,咽頭通過時間は相関しないというのは,なるほどという思わせる結果と言える.つまり出口(上部食道括約筋)が広がれば残留は減るが,通過速度には推進力(咽頭収縮)が必要であり,バルーン嚥下は輪状咽頭筋の拡張には効果があるが,咽頭収縮を改善させる効果まではなかったということかもしれない.
 ただし,この研究は3〜5分の1日の訓練の即時効果を評価しただけであり,咽頭収縮が改善するとすれば筋力の向上が必要であろうから,筆者らも考察しているように,長期的な介入を行えば効果が得られた可能性がある.

 本文はこちらから入手できます.
 日本語訳はこちら(パスワードは論文のタイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して10文字目まで).
 例:A Friend to Everybody is a Friend to Nobody. -> AFtEisFtN

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