嚥下障害患者における輪状咽頭筋機能不全に対する異なるバルーンカテーテル拡張法の効果
抄録 本研究の主要目的は,輪状咽頭筋機能不全に対する,2つの異なる方法(能動的・受動的)でのバルーン拡張療法の効果を調べることである.2006〜2010年に神経疾患による嚥下障害患者38人が募集された.そのうち,21人が能動的バルーン拡張療法を受け,17人が受動的バルーン拡張療法を受け,平均4週間だった.介入前後の患者の嚥下機能を,Functional Oral Intake Scale(FOIS)を用いて評価し,上部食道括約筋の開大を嚥下造影検査で調べた.両方の方法のバルーン拡張療法でFOIS(能動群:z=-3.767, p<0.001:受動群:z=-3.472, p<0.001)と上部食道括約筋の開大(両群:p<0.01)において改善が得られた.輪状咽頭筋機能不全に対して,能動的拡張は,受動的拡張に比べて,FOISの結果が良好だった(p=0.028).能動的・受動的バルーン拡張法は共に神経疾患の患者に対して有効であるが,能動的バルーン拡張法がより良好だった.
上部食道括約筋の開大不全に対するバルーン拡張法の論文.
一般に行われている方法に近い介入法で,バルーン引き抜きのときに,単に引くだけの方法と,引き抜きと同時に嚥下してもらう方法とを比較している.
結果は,拡張効果は同等だが,経口摂取のスコアは,嚥下を同時に行った方が良好という,リハの立場からすると,予想通り,というか好ましい結果となった.物理的な拡張だけでなく,随意的な嚥下を併用することが,機能的な嚥下の獲得に繋がるというリハ全体に通じる概念を支持ものである.
結果は望ましいものであるが,合併症予防のために,ステロイドや局所麻酔薬を噴霧するという念の入れようで,この辺りは国内では一般的ではないだろう.この予防法が必要かどうかも今後の検討課題と言える.
日本語訳はこちらから入手できます(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して10文字目まで).
例:He Who Moves not Forward, Goes Backward. -> HWnFGB
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