急性脳梗塞での両側声帯麻痺
抄録
声帯は,迷走神経の分枝である反回喉頭神経から神経の供給を受けている.大脳運動皮質は,皮質延髄路から延髄の迷走神経核にある運動核(疑核)に発射する.迷走神経は,頸静脈孔から頭蓋の外に出て,頸動脈鞘を通って伸びる.左迷走神経は大動脈弓で左反回喉頭神経となって上がっていき,一方,右迷走神経は鎖骨下動脈で反回喉頭神経となって上がっていく.この経路が何らかの問題で破綻すると片側の声帯麻痺を引き起こす.運動皮質に影響を与える脳卒中では片側声帯麻痺を生じない.なぜなら,迷走神経核は両側の脳から皮質延髄路を受けているからである.我々は,この経路とは関連しない片側の右島皮質の脳卒中によって生じた両側声帯麻痺の稀な症例を提示する.
反回神経麻痺を生じるような延髄の病変ではなく,テント上病変というのはかなり稀な病態と思われる.島皮質と交感神経系との関連性が考察されており,このあたりは循環系への影響として考察されることはあるが,声帯麻痺を含む迷走神経への影響もあるのかもしれない.
いずれにしても,脳卒中後に生じ得る致死的な合併症であり,吸気性喘鳴には注意して対処すべきであろう.
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日本語訳はこちら(パスワードは論文タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字を区別して10文字目まで).
例: The Early Bird Catches a Worm. -> TEBCaW
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