2017年12月31日日曜日

体性感覚入力によるヒトの皮質興奮性の調節 J Physiol 2002


体性感覚入力によるヒトの皮質興奮性の調節


















ヒトでは,体性感覚刺激が刺激された身体部位への皮質運動ニューロンの興奮性の亢進を引き起こす.この研究の目的は,その基礎となるメカニズムを調べることである.我々は,経頭蓋磁気刺激に対する短母指外転筋・第一背側骨間筋・小指外転筋からの運動誘発電位(motor evoked potentials; MEPs)を記録した.MEPの振幅,動員曲線,皮質内抑制(intracortical inhibition; ICI),皮質内促通(intracortical facilitation; ICF),安静時運動閾値(resting motor threshold; rMT)および活動時運動閾値(active motor threshold)を,2時間の手首での尺骨神経刺激の前後に記録した.皮質と皮質下の部位に興奮性の変化を区別するために,我々は,最大上末梢M波と脳幹電気刺激へのMEPを記録した.GABA作動性の機序の関与を調べるために,我々は,ロラゼパム(GABAA受容体作動薬)の影響を,デキストロメトルファン(NMDA受容体拮抗薬)およびプラセボと二重盲検デザインで比較して調べた.体性感覚刺激が小指外転筋においてのみ経頭蓋磁気刺激に対するMEPを増大させることがわかり,過去の報告が確認された.この効果はロラゼパムで拮抗されたが,デキストロメトルファンとプラセボでは拮抗されず8〜20分持続した.以下をみとめなかった;(i)脳幹電気刺激によるMEPの変化,(ii)早期体性感覚誘発電位の振幅の変化,(iii)M波の変化.我々は,体性感覚刺激が皮質運動ニューロンの興奮性の局所的な亢進を生じさせると結論づけた.この亢進は刺激時間よりも長く持続し,おそらく皮質の部位で生じるだろう.ロラゼパムの拮抗作用は,調整機序としてのGABA系の関与の仮説を支持している.

2017年12月21日木曜日

脳卒中患者における手と腕の機能の回復のための感覚電気刺激:文献のレビュー J Nov Physiother 2012












脳卒中患者における手と腕の機能の回復のための感覚電気刺激:文献のレビュー













抄録


背景:感覚振幅電気刺激は,皮質の興奮性に変化を生じさせると報告されてきた.このレビューの目的は,脳卒中患者における手と腕の機能に対する感覚電気刺激の効果を評価することである.


結果:10編の研究がこのレビューの対象として適切とみなされた.10研究のうちの6編はPEDroスコアを提供し,平均(SDは5.7(1.0)だった.どの研究にも有害な影響はなかった.1研究だけ,急性期脳卒中の患者が対象となっていた.軽度の腕の麻痺の患者が研究が多かった.ほとんどの研究で,感覚電気刺激を麻痺側の手関節(正中神経と尺骨神経)にパルス幅1msecで10Hzを2時間与えた.5編の研究で,腕と手の機能を改善させるためには,感覚電気刺激は単独では用いるべきではなく,課題訓練を併用すべきと報告した.

結論:感覚電気刺激は,軽度の腕の麻痺の患者において,機能的課題訓練と併用すると,手と腕の機能を改善するかもしれないが,方法論的に質の高い研究はなかった.さらに,感覚電気刺激が重度の麻痺の患者に効果があるかどうか,急性期に効果があるかどうかは不明である.それゆえ,このレビューの結果は,適切なランダム化比較対照試験がないために依然として結論は出ていない.


2017年12月17日日曜日

脳卒中リハビリテーションのための神経筋電気刺激において用いられるデバイスのレビュー Med Devices 2017


脳卒中リハビリテーションのための神経筋電気刺激において用いられるデバイスのレビュー


抄録:神経筋電気刺激,とりわけ随意運動を代償する機能的電気刺激および筋力強化と麻痺からの回復を目的とした治療的電気刺激は,脳卒中リハビリテーションに広く用いられている.筋収縮の電気刺激は,麻痺を回復させるために意図的な運動と同期しているべきである.したがって,神経筋電気刺激装置は,運動強度に伴う筋電図や脳波をモニターして,これらをトリガーとして使用するものが開発された.筋電図や脳波に基づいて,同時に神経筋電気刺激の強度を調整するような装置も提案されている.神経筋電気刺激の装置や刺激法の多様性のために,今回のレビューの目的は,製品化された機能的電気刺激装置と治療的電気刺激と,その適用方法を紹介することである.適用方法は脳卒中患者の状態によって決定し,麻痺の程度が挙げられる.


2017年12月3日日曜日

無症候性甲状腺機能異常と骨折リスク:メタ解析 JAMA 2015


無症候性甲状腺機能異常と骨折リスク:メタ解析









抄録
重要性−無症候性甲状腺機能異常と骨折の間の関連性は不明であり,臨床試験はない.

目的−無症候性甲状腺機能異常と股関節・脊椎以外・脊椎または何らかの骨折の間の関連性を評価すること.

データ元と研究の選択−MEDLINE,EMBASEのデータベース(開始から2015年3月26日)で,甲状腺機能のデータと続発する骨折での前方視的コホート研究について,言語の制限なく検索した.

主要評価項目と評価法−主要評価項目は股関節骨折とした.何らかの骨折,脊椎以外の骨折,臨床的な脊椎骨折を二次評価項目とした.

結果−70,298人の参加者のうち,4,092人(5.8%)に無症候性甲状腺機能低下症があり,2,219人(3.2%)が無症候性甲状腺機能亢進症があった.追跡期間762,401人−年の間,股関節骨折は2,975人(4.6%;12研究),何らかの骨折は2,528人(9.0%;8研究),脊椎以外の骨折は2018人(8.4%;8研究),脊椎骨折は296人(1.3%;6研究)に生じた.年齢調整解析と性別調整解析では,無症候性甲状腺機能亢進症 対 甲状腺機能正常のハザード比は,股関節骨折については1.36(95%信頼区間1.13〜1.64;2,082人の参加者に146イベント 対 56,471人で2534イベント);何らかの骨折ではハザード比1.28(95%信頼区間1.06〜1.53;888人の参加者で121イベント 対 25,901人で2203イベント);脊椎以外の骨折はハザード比1.16(95%信頼区間0.95〜1.41;946人の参加者で107イベント 対 21,722人で255イベント);脊椎骨折ではハザード比1.51(95%信頼区間0.93〜2.45;732人の参加者で17イベント 対 20,328人で255イベント).TSHが低いほど骨折の頻度が高かった:TSH0.10mIU/L未満では股関節骨折に対してハザード比1.61(95%信頼区間1.21〜2.15;510人の参加者で47イベント);何らかの骨折に対してハザード比1.98(95%信頼区間1.41〜2.78;212人の参加者で44イベント);脊椎以外の骨折に対してハザード比1.61(95%信頼区間0.96〜2.71;185人の参加者で32イベント);脊椎骨折に対してハザード比3.57(95%信頼区間1.88〜6.78;162人の参加者で8イベント).他の骨折の危険因子について調整した後もリスクは同様だった.内因性無症候性甲状腺機能亢進症(甲状腺剤使用者を除く)は,股関節骨折に対してハザード比1.52(95%信頼区間1.19〜1.93),何らかの骨折に対してハザード比1.42(95%信頼区間1.16〜1.74),脊髄骨折に対してハザード比1.74(95%信頼区間1.01〜2.99)だった.無症候性甲状腺機能低下症と骨折リスクの間には関連性はみとめなかった.

結論と関連性−無症候性甲状腺機能亢進症は股関節骨折や他の骨折のリスク増大と関連し,特にTSH濃度が0.10mIU/L未満の患者や内因性無症候性甲状腺機能亢進症で顕著だった.無症候性甲状腺機能亢進症を治療すると骨折を予防できるかどうかを判定するためにさらなる研究が必要である.