無症候性甲状腺機能異常と骨折リスク:メタ解析
抄録
重要性−無症候性甲状腺機能異常と骨折の間の関連性は不明であり,臨床試験はない.
目的−無症候性甲状腺機能異常と股関節・脊椎以外・脊椎または何らかの骨折の間の関連性を評価すること.
データ元と研究の選択−MEDLINE,EMBASEのデータベース(開始から2015年3月26日)で,甲状腺機能のデータと続発する骨折での前方視的コホート研究について,言語の制限なく検索した.
主要評価項目と評価法−主要評価項目は股関節骨折とした.何らかの骨折,脊椎以外の骨折,臨床的な脊椎骨折を二次評価項目とした.
結果−70,298人の参加者のうち,4,092人(5.8%)に無症候性甲状腺機能低下症があり,2,219人(3.2%)が無症候性甲状腺機能亢進症があった.追跡期間762,401人−年の間,股関節骨折は2,975人(4.6%;12研究),何らかの骨折は2,528人(9.0%;8研究),脊椎以外の骨折は2018人(8.4%;8研究),脊椎骨折は296人(1.3%;6研究)に生じた.年齢調整解析と性別調整解析では,無症候性甲状腺機能亢進症 対 甲状腺機能正常のハザード比は,股関節骨折については1.36(95%信頼区間1.13〜1.64;2,082人の参加者に146イベント 対 56,471人で2534イベント);何らかの骨折ではハザード比1.28(95%信頼区間1.06〜1.53;888人の参加者で121イベント 対 25,901人で2203イベント);脊椎以外の骨折はハザード比1.16(95%信頼区間0.95〜1.41;946人の参加者で107イベント 対 21,722人で255イベント);脊椎骨折ではハザード比1.51(95%信頼区間0.93〜2.45;732人の参加者で17イベント 対 20,328人で255イベント).TSHが低いほど骨折の頻度が高かった:TSH0.10mIU/L未満では股関節骨折に対してハザード比1.61(95%信頼区間1.21〜2.15;510人の参加者で47イベント);何らかの骨折に対してハザード比1.98(95%信頼区間1.41〜2.78;212人の参加者で44イベント);脊椎以外の骨折に対してハザード比1.61(95%信頼区間0.96〜2.71;185人の参加者で32イベント);脊椎骨折に対してハザード比3.57(95%信頼区間1.88〜6.78;162人の参加者で8イベント).他の骨折の危険因子について調整した後もリスクは同様だった.内因性無症候性甲状腺機能亢進症(甲状腺剤使用者を除く)は,股関節骨折に対してハザード比1.52(95%信頼区間1.19〜1.93),何らかの骨折に対してハザード比1.42(95%信頼区間1.16〜1.74),脊髄骨折に対してハザード比1.74(95%信頼区間1.01〜2.99)だった.無症候性甲状腺機能低下症と骨折リスクの間には関連性はみとめなかった.
結論と関連性−無症候性甲状腺機能亢進症は股関節骨折や他の骨折のリスク増大と関連し,特にTSH濃度が0.10mIU/L未満の患者や内因性無症候性甲状腺機能亢進症で顕著だった.無症候性甲状腺機能亢進症を治療すると骨折を予防できるかどうかを判定するためにさらなる研究が必要である.
結論は,無症候性甲状腺機能亢進症が骨折と関連するというもので,個人的には低下症の方が影響するのではないかと考えていたので,予測が外れた.甲状腺機能低下症は潜在的に数が多いことはよく知られているが,亢進症も3.2%いたというのも少し驚きである.
骨折で救急搬入された患者さんが,内科に紹介されて,かつ甲状腺機能を測定されることはあまりないと思われるので,見過ごされやすい合併症と思われる.骨折に至らないまでも転倒や骨粗鬆症をみたら,甲状腺機能を測定しておくことが必要かもしれない.
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日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの頭文字をつなげてください.大文字・小文字は区別して記号は除いて10文字目まで).
例:Information is not Knowledge. -> IinK
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