急性脳梗塞における声帯麻痺
抄録
我々は,初回急性脳梗塞における声帯麻痺の発生率を前方視的に判定した.脳卒中発症から48時間以内,1週目,1ヶ月目に内視鏡で声帯を観察した.研究の症例54例のうち,ラクナ梗塞64.8%(グループ1),皮質/広範皮質下22.2%(グループ2),延髄外側9.3%(グループ3),その他の脳幹3.7%(グループ4)の梗塞だった.声帯麻痺は11例(20.4%)にみとめた.グループ1では11.4%,グループ2では16.4%,グループ3では100%,グループ4では0%である.声帯麻痺は,グループ1とグループ2では脳病変と対側,グループ3では同側だった.声帯麻痺は,発声障害と強く関連し(p<0.0001),1週後に消失したのは11人中2人,1ヶ月後に消失したのは11人中5人だった.急性脳梗塞の患者における声帯麻痺の我々の知見は,疑核が常に核上の中枢から両側性に神経支配されているという見解に疑問を投げかけるものである.
急性発症の脳梗塞における声帯麻痺の発生率を調べた研究である.
発生率が全体で20%というのも驚きではあるが,大脳半球病変でも10%以上に見られたというのはかなり効率に生じる合併症と言える.
テント上病変では通常は声帯麻痺は生じないというのが一般に信じられている解剖学的・神経症候学的な見解であり,その理由は延髄の疑核がテント上からの両側支配を受けているから,というものである.
本研究の結果は,この見解に疑問を投げかけるものである.脳卒中後の注意すべき合併症としての声帯麻痺を取り上げただけでなく,神経解剖の見地からも興味深い論文である.
日本語訳はこちらから入手できます.
例:When You Come to a Roadblock, Take a Detour. -> WYCtaRTaD
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