最適な医学的治療をなされていないA型大動脈解離の患者における血しょう炎症バイオマーカーの時間依存性変化
抄録
目的:A型大動脈解離の患者で,解離の発症から最適でない医学的治療を受けていた患者におけるインターロイキンIL-6,CRP,腫瘍壊死因子TNF-αの時間依存性変化を調べること.
デザインと方法:入院中のA型大動脈解離の患者92人において,IL-6,CRP,TNF-αをELISAと免疫比濁法で検出した.コントロール不良な高血圧患者78人,健常ボランティア82人の血液標本もコントロールとして分析した.胸部大動脈解離に関連した合併症の発生と,これらの炎症バイオマーカーの血しょう濃度の関連性も調査した.
結果:胸部大動脈解離では,コントロール不良の高血圧症や健常者群よりも,炎症メディエータの濃度が有意に高かった.胸部大動脈解離群におけるIL-6,TNF-αの血しょう濃度のピークまでの時間は,CRPよりも有意に短かった.胸部大動脈解離群では,51人の患者が胸部大動脈解離群に関連した合併症を生じ,胸部大動脈解離に関連した合併症のない患者群よりも,血しょうCRP濃度が有意に高かった(94.5±58.8 mg/L vs 47.4±47.8 mg/L,p<0.001).また,CRP濃度(r=-0.69, p<0.001)とクレアチニン(r=0.60, p<0.001)がPaO2/FiO2比と強い相関があった.合併症群では,合併症のない群よりもCRP濃度のピークまでの時間は有意に短く,CRP高値の機関が有意に長かった.
結論:血しょうCRP,IL-6,TNF-αの濃度の上昇と,持続的な高値は,胸部大動脈解離の進行性の進展に関連した.CRPのパターンが変わることは,合併症の治療と予防のマーカーになるかもしれない.我々の知見は,解離の進行と胸部大動脈解離に関連した合併症における炎症の重要な役割を示唆した.急性動脈解離後の炎症反応の経過についての文献である.
合併症(肺損傷,腎不全)の症例でCRPがより高く,上昇の持続時間が長いというのは,全身炎症によって臓器障害が生じるということを示しているかもしれない.
ただ,CRPの上昇は発症から1ヶ月経過しても続いていることがあるようだが,そのあたりはあまり明確には記載されていない.リハの対象となるような状態がある程度安定してきた時期に炎症反応が高く,栄養状態が悪くなる症例をときに経験するが,対応に困ることが多いので,信頼に足るデータが欲しいところである.
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例:Whether you think you can or whether you think you can't - you're right. -> Wytycowytc
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