2023年11月29日水曜日

脳卒中急性期患者における間欠的経口食道経腸栄養法–予備的研究 Arch Neurol Scand 2006

脳卒中急性期患者における間欠的経口食道経腸栄養法–予備的研究


















目的–嚥下障害のある脳卒中急性期の患者は,通常は経鼻胃管で栄養投与される.しかしながら,この方法はときに肺炎や下痢の原因となる.我々は,重症嚥下障害のある脳卒中急性期患者において,間欠的経口食道経腸栄養と呼ばれる新しい経管栄養の手技の使用を調査した.対象と方法–間欠的経口食道経腸栄養を,13人の脳卒中急性期患者(68±14歳;12人が脳幹梗塞)に使用した.患者は,覚醒良好だが重度嚥下障害があり,咽頭反射が減弱している患者であった.間欠的経口食道経腸栄養は以下のように行った.チューブは食道下部まで経口的に通過させ,栄養補助食を約50mL/分の割合でチューブから投与した.栄養剤の滴下が終わった後にチューブを抜去した.結果–間欠的経口食道経腸栄養法には以下の利点があることがわかった:(i)間欠的経口食道経腸栄養法は15分で済む;(ii)肺炎や下痢といった合併症のリスクを低下させる可能性がある;(iii)経口チューブの挿入が口腔や咽頭を刺激し,嚥下機能を改善するかもしれない.しかしながら,間欠的経口食道経腸栄養法は以下のような患者には用いるべきではない;(i)間欠的経口食道経腸栄養法の手技を理解できない;(ii)食道裂孔ヘルニアや食道蠕動運動不全のある患者,というのもこのような患者は栄養剤の逆流が口腔に入るリスクがあるからである.結論–間欠的経口食道経腸栄養法は重症嚥下障害がある脳卒中急性期患者で覚醒していたら,持続的経鼻胃管栄養法の代替手段になるかもしれない.

2023年10月24日火曜日

脳卒中片麻痺の患者における歩行パターンに対するWelwalkを用いた歩行訓練の効果:横断的研究 Front Neurorobot 2023

 

脳卒中片麻痺の患者における歩行パターンに対するWelwalkを用いた歩行訓練の効果:横断的研究















緒言:我々は,脳卒中片麻痺の患者におけるWelwalkを用いたロボット支援歩行訓練と装具を用いた歩行訓練の間の違いを比較することによって,Welwalkを用いた歩行訓練効果を調べることを目的とした.

方法:この研究は装具を用いた地上での歩行訓練にWelwalkでの歩行訓練を行った脳卒中片麻痺患者23人を対象とした.それぞれの参加者について2つの条件下でトレッドミル上で三次元動作解析を行った:Welwalkでの歩行訓練中と装具での歩行訓練中である.時間・空間パラメータと歩行パターンを2つの条件の間で比較した.

結果:Welwalkm条件では装具条件と比べて,障害側のステップ長が有意に長く,ステップ幅が有意に広く,障害側の片脚支持期の比が有意に高かった.異常歩行パターンの指標の値はWelwalkを使用している最中は装具条件よりも有意に低かった.Welwalk条件では以下の4つの指標が低かった:体側の伸び上がり歩行,不十分な膝屈曲,麻痺側の遊脚相での股関節の過度の外旋,麻痺側の前足部接地.

考察:Welwalkを用いた歩行訓練は,短下肢装具を用いた歩行訓練と比べて異常な歩行パターンを抑制して,障害側のステップ長,ステップ幅,片脚支持期を増大させる.この研究から,Welwalkを用いた歩行訓練が異常な歩行パターンを抑制したより効率的な歩行パターンの再獲得を促進するかもしれないことが示唆される.

2023年10月20日金曜日

回復期脳卒中患者における機能的電気刺激の効果:多施設ランダム化比較対照試験 J Clin Med 2023


回復期脳卒中患者における機能的電気刺激の効果:多施設ランダム化比較対照試験














抄録:背景:我々はWalkAide®︎が,下垂足のある脳卒中後の患者の歩行能力と下肢機能を有効に改善することができるかどうかを評価した.患者は20〜80歳で,初回脳卒中から6ヶ月以内で,機能的歩行分類3または4を候補とした.対象と方法:患者は,1:1の比でランダムに機能的電気刺激(FES; Functional Electrical Stimulation)と対照群に割り付けられた.FES群では,WalkAideを用いた40分の訓練プログラムを,週5回,8週間追加した.対照群はFESのない40分の訓練プログラムを行なった.結果:合計203人の患者がFES群(102人)と対照群(101人)に割り付けられた.介入を受けられなかったり,データが利用できなかったりした患者は除外した.最終的に,184人の患者(各群92人)を解析した.6分間歩行の最大距離(主要評価項目)は,FES群では68.37±62.42m,対称群では57.50±68.17mだった(差:10.86m;95%信頼区間-8.26〜29.98, p=0.26).結論:日本人の下垂足のある脳卒中後の患者では,回復期において,FESは6分間歩行距離を有意に改善しなかった.

2023年8月27日日曜日

脳卒中患者における機能的移動能力と日常生活動作に対する長下肢装具:症例報告のシステマティックレビュー J Rehabil Med 2022

 

脳卒中患者における機能的移動能力と日常生活動作に対する長下肢装具:症例報告のシステマティックレビュー















目的:機能的歩行能力と日常生活動作(ADL)に対する長下肢装具の有効性に関する症例報告から参照可能なエビデンスを統合すること.

方法:Population母集団 Intervention介入 Comparison比較 Outcome結果(PICO)モデルに基づいて,以下のデータベースを検索した.PubMed,CINAHL,Scopus,Coch- rane Central Register of Controlled Trials,PEDro,Web of Science,医学中央雑誌.方法論的質はCAREチェックリストを用いて評価した.

結果:15症例を含む合計14編の記事が選択された.機能的歩行能力に臨床的に意味のある改善が報告されたのは15症例中10症例で,使用された評価法は,Functional Ambulatory Category機能的歩行分類,Trunk Control Test,歩行速度,Berg Balance Scaleだった.ADLに臨床的に意味のある改善が報告されたのは15症例中9症例で,使用された評価法はBarthel Index,Functional Independence Measureだった.しかしながら,レビューされた記事の方法論的質は低く,治療の限界,有害事象,患者の報告による評価の情報がなかった.

結論:この症例報告のシステマティックレビューから,機能的歩行能力とADLにおける改善に関して,長下肢装具の有効性の低いレベルのエビデンスがみとめられた.この研究から,長下肢装具の有効性を測定するための最適な結果が示されたことは有意義なことである.

2023年7月20日木曜日

重度片麻痺の脳卒中患者における長下肢装具を用いた交互歩行訓練のナラティブレビュー Phys Ther Res 2021

 


重度片麻痺の脳卒中患者における長下肢装具を用いた交互歩行訓練のナラティブレビュー











抄録.脳卒中に由来する障害は永続的な歩行の困難を引き起こす.そのために,歩行能力の改善は,脳卒中後に生存した患者にとって最優先課題の一つである.脳卒中後の歩行が改善する程度は,初期の歩行能力の障害と,患者の下肢の重症度の両方に関連する.しかしながら,重度運動麻痺があり,顕著な皮質脊髄路の破綻のある患者の中でも歩行能力を回復する者もいる.近年,交互歩行の訓練を提供することによる重度片麻痺の脳卒中患者における歩行能力の改善を記載した症例報告がいくつかある.複数の研究で,歩行訓練が,脊髄損傷の患者において麻痺した下肢に“歩行運動様”の協調的筋活動を生じさせることができることが示された.このレビューでは,我々は,歩行の神経機序を議論し,それから重度片麻痺の脳卒中患者における歩行能力の修復に関する症例報告をレビューする.

2023年2月8日水曜日

脳卒中リハビリテーションからの退院後2年間の身体活動と心血管系の推奨へのアドヒアランス Ann Phys Rehabil Med 2021



脳卒中リハビリテーションからの退院後2年間の身体活動と心血管系の推奨へのアドヒアランス
 

抄録

背景:習慣的な身体活動を表すには客観的評価が必要不可欠である.今日のところ,脳卒中から12ヶ月後以上での身体活動を客観的に評価した研究は1篇だけである.

目的:この研究は,リハビリテーションから退院後2年間の身体活動,心血管危険因子,移動能力,気分,疲労感,認知機能を評価し,脳卒中生存者が身体活動と心血管系危険因子の推奨に合致しているかどうかを調査することを目的とした.

方法:これは経時的観察研究である.大規模な首都圏のリハビリテーション病院に入院した初回脳卒中の生存者が募集された.評価項目は,リハビリテーションからの退院時,6ヶ月後,12ヶ月後,24ヶ月後である.評価項目は,SenseWear Armband(例えば,中等度〜激しい身体活動,歩数/日)で測定した身体活動,および,心血管系危険因子(例えば,血圧,空腹時脂質データ,血漿血糖値,ウェスト周囲長,BMI),移動能力,気分,疲労感,認知機能である.経時的な変化をランダム効果モデリングで評価した.

結果:参加者(79人,女性33%)は,ベースラインで平均年齢65歳,歩行速度の中央値1.2m/秒(四分位範囲: 0.8-1.2)だった.我々は身体活動のレベルには経時的に変化をみとめなかった.歩数と中等度〜激しい身体活動の時間は低いままだった.参加者の多くが,ベースラインでは推奨されている30分の毎日の中等度〜激しい身体活動を達成していたが,2年目には低下した(72%[57/79]対65%[37/57]).心血管系の推奨へのアドヒアランスは経時的に低下し,とくにBMI,血漿血糖値,中性脂肪濃度は低下した.ウェスト周囲長とBMIは,ベースラインを比べて,それぞれの時点で増加した(それぞれ2年目に,3.2cmと1.2kg/m2, P<0.01).

結論:これは客観的に測定した脳卒中後の身体活動の最大規模の縦断的研究である.心血管系リスクの推奨へのアドヒアランスは,脳卒中後,経時的に低下し,身体活動レベルは低いままだった.脳卒中生存者は,増大したリスクを判定し,適切な介入を開始するための毎年の多職種による調査から利益があるかもしれない.

2022年12月14日水曜日

運動によって生じる免疫系の反応:末梢臓器および中枢臓器における抗炎症状態 Biochim Biophys Acta Mol Basis 2020



運動によって生じる免疫系の反応:末梢臓器および中枢臓器における抗炎症状態 Biochim Biophys Acta Mol Basis 2020


抄録

身体的運動の実践が,神経保護を促進し,伝染性・非伝染性慢性疾患を生じるリスクを減少させる機序を理解するために,この10年間,幅広い分子経路が研究されてきた.1回のセッションの身体的運動は細胞のホメオスターシスに対して負荷になるかもしれないが,身体的運動セッションの反復は,免疫監視および免疫能を改善するだろう.さらに,中枢神経系からの免疫細胞は,抗炎症性の表現型を獲得し,中枢機能を年齢による認知機能低下から保護する.このレビューでは,一般的な慢性的臨床条件・実験条件の予防や治療に対する運動による抗炎症効果を強調する.身体運動の抗炎症効果をフォローできる高感度のバイオマーカーとして,生体体液におけるプテリンの使用も示唆されている.