2017年8月24日木曜日

高齢者の誤嚥性肺炎の予防:我々に‘ノウハウ’はあるか? Hong Kong Med J 2014

 高齢者の誤嚥性肺炎の予防:我々に‘ノウハウ’はあるか?









抄録
 誤嚥性肺炎は高齢者ではよく見られる.誤嚥性肺炎のリスクを低下させるには,良好な口腔衛生の維持が重要であり,唾液の分泌に影響する薬剤や鎮静を生じさせる薬剤は,可能ならもっとも避けるべきである.H2遮断薬やプロトンポンプ阻害薬の使用は最小限にすべきである.経口摂取の際には,様々な代償法や促通手技が適用できる.介助での食事は,経管栄養を考慮する前に試してみるべきである.経管栄養は最終手段であり,主に栄養状態と水分補給を改善するためである.誤嚥性肺炎の予防と生存率改善は経管栄養の理論的根拠ではない.胃瘻や経鼻胃管チューブからの栄養投与は誤嚥性肺炎に対して同等のリスクがあり,持続的ポンプでの栄養投与は間歇的投与よりも良好だというわけではない.十二指腸栄養は,選択されたハイリスク患者では誤嚥性肺炎を減少させるかもしれない.もし高齢の患者が,耐えられないような咳を生じることなくACE阻害薬を服用できるなら,薬剤の継続は有効かもしれない.葉酸欠乏がもしあったら,速やかに補正すべきである.誤嚥性肺炎の予防のもっともよい方法を見つけるために,今後のよりよくデザインされた研究が必要である.
 誤嚥性肺炎の予防についての総説で大変よくまとまっている.要点を以下にまとめる.

原因・危険因子
 誤嚥:食物の誤嚥だけでなく,胃酸や胃から逆流の誤嚥も含まれている.
 危険因子:口腔衛生の不良を一番手とし,嚥下障害は高齢者,脳卒中患者では重要な予測因子であることを示すメタ解析が紹介されている.

薬剤以外の予防
 経管栄養:誤嚥性肺炎の予防にならない
 経鼻胃管か胃ろうか:胃ろうが経鼻胃管よりも肺炎予防や延命の観点で優れていることを明確に示すエビデンスはない.
 食事法や食形態:嚥下障害者の経口摂取に関しては有効かもしれないが,誤嚥性肺炎の予防を直接した研究は紹介されていなかった.

薬剤
 中止すべき薬剤:唾液分泌を減少させる薬剤,鎮静を生じさせる薬剤,制酸薬(H2ブロッカーやPPI)
 アマンタジン,ACE阻害薬,シロスタゾール:従来言われている通り.
 メトクロプラミド:肺炎発生を遅らせるが,発生率は減少できない
 エリスロシン:抗菌作用ではなく,胃排出能改善効果が期待されるが,誤嚥性肺炎の予防に関してはエビデンスがない.
 ※抗生剤の長期投与に関しては紹介されていない.恐らく,そのような研究自体がないと思われ,誤嚥性肺炎予防の目的での長期連用は避けるべきだろうと思われる.

 なお,香港の医学誌に掲載されていたようだが,英語も読みやすく,引用文献が豊富で孫引き用の資料としても役に立つ.ネットから入手できるので,興味のある方には一読をお勧めする.

本文はこちらから入手できます.
日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.おおっ文字と小文字を区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:Don’t wait. The time will never be just right. -> DwTtwnbjr

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