経鼻胃管で栄養投与されている脳卒中患者における肺炎を予防するためのメトクロプラミドの安全性と有効性の試験
背景と目的−肺炎は,経鼻胃管栄養を受けている脳卒中患者における死亡と合併症の主要原因であり,嘔吐と胃食道逆流の原因になることもある.研究の目的は,制吐作用と胃の運動促進作用のあるD2受容体拮抗薬であるメトクロプラミドが誤嚥と肺炎の発生率を低下させるかどうかを評価することである.
方法−脳卒中発症から7日以内かつ経鼻胃管チューブ挿入から48に時間以内で肺炎の兆候のない患者が,二重盲検化・ランダム化・プラセボ比較対照試験に募集された.参加者は,メトクロプラミド10mgまたはプラセボを,経鼻胃管チューブから1日3回,21日間もしくは経鼻胃管栄養を終了するまで投与された.肺炎の臨床兆候を毎日記録した.肺炎は,患者が関連する臨床症状や炎症反応高値,胸部X線写真の新規の浸潤影を呈した場合に診断とした.
結果−60人の患者(平均年齢78歳;女性378人;平均NIHSSスコア19.24)が1:1の比でランダムに割り当てられた.プラセボ群はメトクロプラミド群よりも肺炎のエピソードが有意に多かった(発生率比5.2;P<0.001).誤嚥の発生率,酸素飽和度,炎症反応の最高値,NIHSSスコアに有意差があり,メトクロプラミド群に良好だった.死亡率には群間に有意差はなかった.
結論−この研究から,経鼻胃管栄養を受けている亜急性期脳卒中患者においてメトクロプラミドが肺炎発生率を低下させ,その他の臨床的帰結を改善するかもしれないということが示唆された.このような知見は,もっと大規模のランダム化・盲検化試験で確かめなければならない.
経管栄養中の肺炎予防に対する薬物療法にはいくつかのコンセプトがあるが,メトクロプラミドの場合は,胃食道逆流の予防を主たるメカニズムとしている.さらに本研究で面白いのは3週間と限定していることである.漫然と長期投与するのが好ましくないのは自明のことであるから,これは理にかなっている.
NIHSSのスコアにも差がついたは面白いが,これがメトクロプラミドの効果なのか,たまたま回復のポテンシャルの高い患者さんが集中したために,肺炎の回数にもNIHSSにも差がついたのかは,もう少し検証が必要だろう.筆者がまとめている通り,より大規模の他施設研究での第3相試験が待たれる.
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例:Two Wrongs don’t Make a Right. -> TWdMaR
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