脳障害の神経学的バイオマーカーは脳卒中後の運動回復を予測するために使用できるか?系統的レビュー
抄録
背景.脳卒中リハビリテーションや回復の促進のために,新しい治療や予測モデルを作成するために,回復のバイオマーカー,特に神経学的バイオマーカーを立証することへの関心が高まっている.しかしながら,どのバイオマーカーが運動回復のためにもっとも高い的中率があるのかについて,神経リハビリテーション団体の間でコンセンサスはない.目的.エビデンスをレビューし,運動の回復を予測する上での使用のために,高いエビデンスの質の基準を満たすのはどの神経学的バイオマーカーかを判定すること.方法.我々は,予測的神経画像/神経生理学的研究についてデータベースを検索した.各研究の方法論的質を,過去に利用された包括的な15項目の評価システムを用いて評価した.さらに,我々は,GRADEアプローチを用いて,神経学的バイオマーカーの各カテゴリーについて全体的なエビデンスの質をランク付けした.結果.71編の論文が我々の対象基準を満たした;5つのカテゴリーの神経学的バイオマーカーが見つかった:拡散テンソル画像(DTI),経頭蓋磁気刺激(TMS),機能的MRI(fMRI),従来の構造的MRI(sMRI),これらのバイオマーカーの併用である.ほとんど研究が,急性期・亜急性期の脳梗塞の患者で実施された(〜70%).方法論的質が満足できる評価(質のスコアの総合点の80%以上)だった研究は1/3未満だった(21/71).従来の構造的MRIとバイオマーカーの併用のカテゴリーは,全体的なエビデンスの質において“高”にランクされた.結論.方法論的限界として多いものは3つあった:(a)交差検証がない,(b)運動回復に関する臨床的に重要な最小変化(minimal clinically important difference, MCID)がない,(c)対象数が小さい.どの神経学的バイオマーカーが脳卒中後の運動回復の最良の予測因子であるかを確立するために,もっと質の高い研究が必要である.最後に,ここで用いた四半世紀の古い方法論的質のツールは,もっと現代的で統計学的なアプローチの採用でアップデートすべきである.脳画像や神経生理学的検査からの脳卒中の予後予測に関して,どのモダリティがエビデンスとしての質が高いかというレビューである.現時点では,構造的MRIと臨床的な情報を含む複数の予測因子の併用で作る予測モデルがエビデンスの質が高いという結論である.
拡散テンソル画像やperfusion MRIなど,MRIの撮像技術はどんどん進歩しているが,従来の構造的MRIが高く評価されている点は意外に思われるかもしれない.
この論文では,エビデンスとしての質,つまり研究デザインの質を評価した論文であって,できたモデルの予測の正確さが優れているかどうか検証しているわけではないことには注意すべきである.
また,ここでいう構造的MRIは,撮像法としては従来からあるものであっても,複雑な統計解析やコンピュータ処理を行ったものを含んでいるので,日常診療で見るMRIの断層像から予測するという意味合いではない.
個人的には,脳卒中の予後予測は,現時点ではおよそ科学的とも医学的とも言えない曖昧なものだと考える.年齢や利き手,生育歴,元々の教育歴/運動歴,病前の生活習慣や性格など,画像上,似たような所見であってもリハ経過はかなり異なる.したがって,検査所見だけでは予測には限界があるのではないかと思われる.
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日本語訳はこちら(パスワードは文献タイトルの単語の頭文字をつなげてください.大文字と小文字は区別して,記号は除いて10文字目まで).
例:Whoever Said, “It’s not Whether You Win or Lose That Counts,” Probably Lost. -> WSInWYWoLT
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