膝つっぱり歩行を呈する脳卒中患者における複数筋へのボツリヌス毒素同時注射の障害・活動・参加・QOLへの効果
背景と目的−歩行は日常生活や社会参加のための必要不可欠な活動であり,脳卒中後にはしばしば制限を受ける.遊脚期の膝屈曲の欠如(膝のつっぱり)は,片麻痺の痙縮を伴う患者で歩行能力を制限するような障害の1つである.我々の目的は膝つっぱり歩行を呈する脳卒中慢性期患者において,複数の痙縮筋へのA型ボツリヌス毒素(BoNT-A)の注射の効果を研究することである.
方法−膝つっぱり歩行を呈する脳卒中慢性期患者でトレッドミルを歩行可能な20人が募集された.BoNT-Aは複数の痙縮筋に注射した:大腿直筋(200単位),半腱様筋(100単位),下腿三頭筋(200単位).患者の神経学的障害(Ashworth Scale,Duncan-Ely test,Stroke Impairment Assessment Set,instrument gait analysis(機械的歩行解析))および活動(ABILOCO,10m歩行テスト),参加(SATISPART-Strokeと36-item Short Form Health Survey)を注射前と2ヶ月後に評価した.
結果−BoNT-Aは障害を緩和した.SIASが改善し(56.5[48〜63]から56.5[52.5〜63];P<0.001),大腿直筋の緊張(2[1〜2.5]から0[0〜1];P<0.001),半腱様筋の緊張(1[1〜1.5]から0[0〜1];P<0.001)が軽減した.歩行解析では,遊脚期の膝屈曲が拡大し(22±19°から27±16°;P=0.03),外部機械的仕事が軽減し(0.66±0.38から0.59±0.25J kg-1 m-1;P=0.04),エネルギーコストが低減する(2.2±1.9から3.2±2.1 logits;P=0.03)ことが示された.参加とQOLは変化なく,そのままだった.
脳卒中片麻痺患者における膝伸筋群へのボツリヌス毒素療法の効果を運動学的評価やエネルギーコスト,社会参加・QOLなど幅広く評価した研究である.歩行の質はいくつの指標でも改善が確認できたが,社会参加やQOLには変化がなかった.
「歩行の質」という評価の難しい効果を示すことができた意義は大きい.昨今は自立度という指標がひとり歩きしがちであるが,リハの質はそれだけではない.歩行や動作の質もより良好な水準に高めてこそ,質の高いリハといえるはずである.
一方で,社会参加はともかくQOLに変化がみられなかったのは残念である.評価法の選定も含めて,今後の研究の課題であろう.
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例:Some People Feel the Rain. Others Just Get Wet. -> SPFtROJGW
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