痙縮を軽減すると機能的効果に変換するか?探索的メタ解析
抄録
背景:脳卒中後には障害された上肢の痙縮と機能喪失がよくみられる.ボツリヌス毒素は痙縮を軽減するために用いられるけれども,その機能的効果を示すのは容易ではない.この文献では,上肢の痙縮軽減と上肢の機能改善の間の関係を調べるための探索的メタ解析を報告する.
方法:ボツリヌス毒素筋注のランダム化比較対照試験2編の脳卒中患者の個々のデータを集めた.modified Ashworth Scale(肘,手関節,手指)を用いて,"合成痙縮指数(Composite Spasticity Index)”を計算した.Barthel ADL Indexの上肢の領域(更衣,整容,食事)のデータと,3つの主観的評価(腕を袖に通す,手のひらを洗う,爪を切る)を合計して,"合成機能指数(Composite Functional Index)”とした.スコアの変化と最大変化の時間も計算した.
結果:47人の患者において合成指数は最大変化はともに同時期に生じた.26人の患者では,痙縮の改善は機能改善に先行し,18人では逆だった.痙縮の最大変化と上肢機能の最大変化の間には明らかな相関があった(ρ=-0.2822,p=0.0008,n=137).ボツリヌス毒素(Dysport)500単位と1000単位で治療された患者における痙縮の変化と上肢の変化の間には明確な相関があった(ρ=-0.5679,p=0.0090,n=22;ρ=-0.4430,p=0.0018,n=47)が,しかし,プラセボと1500単位で治療された群にはなかった.
結論:目的とされたメタ解析のアプローチを用いて,上肢の痙縮を軽減させることが,上肢機能の有意な改善を関連することを示すことが可能になった.