脳卒中誘発免疫抑制と嚥下障害は独立して脳卒中関連肺炎を予測する−PREDICT研究
抄録
脳卒中関連肺炎は脳卒中後の頻発する合併症で予後不良と関連する.嚥下障害は,脳卒中関連肺炎に関する既知のリスクファクターであるが,脳卒中が脳卒中関連肺炎に罹患しやすくなるような免疫抑制状態を生じさせることを示唆するエビデンスが積み重なってきている.我々は,炎症のバイオマーカー(インターロイキン-6)や感染のバイオマーカー(リポ多糖結合蛋白)とともに,単球HLA-DRの発現を免疫抑制のマーカーとして調査することによって,脳卒中誘発免疫抑制症候群が嚥下障害とは独立して脳卒中関連肺炎と関連することを確かめることを目的とした.これはドイツとスペインの11の研究施設での前方視的・多施設研究であり,脳卒中急性期患者486人が対象となった.脳卒中関連肺炎,嚥下障害,バイオマーカーの毎日のスクリーニングを行った.脳卒中関連肺炎の頻度は5.2%だった.多変量回帰分析で嚥下障害と単球HLA-DRの低下は脳卒中関連肺炎の独立した予測因子だった.肺炎の割合は単球HLA-DRが高い四分位(≧21,876mAb/cell)では0.9%,低い四分位(≦12,369mAb/cell)では8.5%の範囲だった.嚥下障害があると,肺炎の割合はそれぞれ5.9%,18.8%に上昇した.嚥下障害がなく単球HLA-DR発現が正常な患者は,脳卒中関連肺炎のリスクがなかった.我々は,嚥下障害と脳卒中誘発免疫抑制症候群が,脳卒中関連肺炎の独立した危険因子であることを示した.免疫抑制と嚥下障害のスクリーニングは,脳卒中関連肺炎のハイリスク患者を判定するのに有用かもしれない.