2015年3月24日火曜日

痙縮は脳卒中後の歩行不全に関与しているのか?

痙縮は脳卒中後の歩行不全に関与しているのか?







































抄録
目的ー臨床的に下腿の筋の痙縮は脳卒中後の歩行を阻害するとみなされている.目的は,脳卒中発症から数ヶ月後の歩行可能な脳卒中患者のグループにおける腓腹筋の痙縮の歩行障害への関与を評価して,この仮定を調べることである.
方法ー歩行が自立している脳卒中患者14人と,神経学的に健常なコントロールの被験者15人を募集した.歩行を模した条件下での安静時と動作時の腓腹筋の伸張反射を調べた.痙縮を評価するために安静時の緊張性伸張反射を測定し,一方,動作時の緊張性伸張反射は歩行障害への痙縮の潜在的な関与を評価するために測定した.
結果ー脳卒中患者の2/3に,痙縮を示唆するような安静時の緊張性伸張反射をみとめた.一方,コントロールにはまったくみとめなかった.しかしながら,脳卒中患者は動作時の緊張性伸張反射はコントロールと同程度にみとめ,このことは歩行中の反射の活動はコントロールの被験者と変わらないことを示唆する.さらに,脳卒中患者の動作時の伸張反射はコントロールの被験者よりも伸長へのより強い抵抗に関与していた.
結論ーほとんどの脳卒中患者で臨床的な評価でも病態生理学的な評価でも痙縮をみとめたが,動作時の緊張性伸張反射の増悪による背屈への抵抗増大はみとめなかった.脳卒中後の歩行において,歩ける患者では痙縮が歩行の問題にはなっていないだろうと結論づけた.それゆえ,脳卒中リハにおいて機能的改善を得るためにルーチンに反射反応を軽減したり抑制したりするのは適切ではないだろう.患者に適切な治療を提供するために脳卒中後の歩行を分析するときは痙縮以外の因子考慮すべきである.




片麻痺患者の腓腹筋の痙縮が歩行時にどのようになっているかを,模擬的な条件で検証した研究である.

結果の解釈はなかなか難しい.安静時の筋緊張は,片麻痺患者では確かに亢進しているが,動作に伴う筋緊張の変化は健常者を有意差はなく,動作に対する筋緊張の変化は保たれている,というのが著者らの結論であるが,同時にこの実験で実際に歩行時の現象を再現できているのかという疑問も提示されている.
筋緊張は姿勢によっても大きく変化するため,この指摘はもっともではあるが,実際に起立・歩行時の筋活動を測定するのは技術的に困難である.

少なくともこの研究の結果から,片麻痺患者ではあらゆる条件で緊張や反応が亢進しているわけではないということは証明されたと思う.そのような視点で歩行を分析していくことも必要だろう.

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